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お母様と召使い

全員が味方じゃないと不安になる

「ほらミサレイ、ハンカチの刺繍はこうやるのですよ」


お腹が大きくなってきたお母様が、ふんわり笑ってハンカチを見せてくれる。


そこには、きれいな花の刺繍。


「わぁーーっステキっ!かわいい!お母様、じょうず!」


すかさず褒める。私はいつでも全力だ。


うふふ、と幸せそうに笑うお母様の笑顔が、とてもきれい。


「お母様もきれい」


思わず口から零れた言葉に、お母様が照れる。


「まあっミサったら、ほんとにもうっ」


照れながら私の頭をなでなでしてくれる。


ついでに、甘いお菓子も口に放り込まれる。


「お庭で遊んできていいわよ」


結局、刺繍は有耶無耶になって、お庭へ出る。


お母様は、私にやたら刺繍を勧めてくる。


この世界では、女の子は刺繍が出来た方が良いらしい。


将来の結婚の為に。


空を見上げながら思う。


結婚したって、幸せになるかどうかなんて分からないのに。


もし子供が産まれたら、愛せる自信もない。


私は、死ぬまでに必要なお金を自分で頑張って稼いで、一人で死にたい。


あの空に浮かぶ雲のように、一人で気ままに生きたい。


視界に召使いのリアンナが入る。


「ミサレイお嬢様、どうされましたか?」


まだ10代後半のリアンナは、元気で活発で世話好きだ。


私のことも、小さい時からまめに世話を焼き、本当に良くかわいがってくれる。


「リアンナ!私、あの雲を見てたのよ」


にっこり笑って雲を指さす。


「ほら、あの雲、リアンナみたいに美人だと思って。ミサも、リアンナみたいに美人になれるかな」


そう上目遣いでリアンナを見ると、リアンナは胸を押さえている。


「うっっなんて純粋な瞳。お嬢様が、あまりにかわいすぎる」


しばらく聞こえる独り言を言ってから、復活する。


「お嬢様は、奥様に似て、非常に見目麗しいです。必ず、旦那様のような素敵な殿方と出会えますわ」


私の手をしっかり握り締めて、頷きながら言ってくる。


うーん、効果はあったよね?


「ほんと?リアンナがそう言ってくれるなら、きっとそうだよね。ありがとう、リアンナ!大好き!」


ぎゅっとリアンナに抱きつく。


「これからも、ミサの側にずっといてね?ミサ、リアンナがいないとダメなのっ」


そのまま、小さな声で言うと、頭を撫でられる。


そして、お菓子が口に放り込まれる。


デジャブ?


「リアンナは、いつまでもお嬢様の側におります!私も大好きです!お嬢様!」


効果あり過ぎて、涙目になってる。


今日は、このくらいにしておこう。


さり気なくなだめて、するりと抜け出しバイバイして歩き出す。


さて、お父様のところも回るか。


私には日課があるのだ。


この屋敷にいる者全てを、我が手中へ治める為。

自己肯定感の低さ

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