家庭教師
勉強って、大切
ユング家へ一人娘の家庭教師として派遣された私、テアは戸惑っていた。
相手はまだ4歳の子供。
正直、家庭教師なんて金の無駄遣いだと思った。
だって、まともに勉強なんてするはずない。
遊び相手になるのが目に見えてる。
「お金持ちは、遊び相手がいないのかなー」
そんなことをブツブツ言いながら、御屋敷へ到着。
召使いに案内された部屋に、ちょこんと座っていた、かわいらしい女の子。
「はじめまして、ミサレイです。先生、よろしくお願いします」
そう言って、きちんとお辞儀をした。
4歳の娘が、上流階級のカーテシーでもなく、頭をしっかり下げて、お辞儀したのだ。
「えっ?あっ、家庭教師のテアです。こちらこそ、ミサレイお嬢様、よろしくお願いします」
まあ、子供なことに変わりは無い。
そのうち、走り出すか、転がり出すだろう。
うちの弟や妹たちより年下なんだから。
静かな室内で、きちんと座ったミサレイ嬢に用意された教本を読ませる。
子供らしいたどたどしさはあるが、ちゃんと文章を読めている。
絵本ならまだしも、割としっかりとしたもう少し年上の子供用の教本だ。
少し難しい表現もある。
「ここの意味は分かりますか?」
そう尋ねると、少し考えてから
「ミサは、まだ4歳なので、どれもいまいち、よく分からないのです。テア先生、教えて頂けますか?」
にっこり笑って聞いてくる。
か、かわいい、、、
気付けば、外は暗くなっていた。
どうやら時間を忘れて夢中で教えていたらしい。
夫人が、夕食を共に、と進めてくる。
私の夕食分が浮けば、弟達に回せるな。
そう考えて、有り難く頂くことにした。
「ミサレイお嬢様は、とても優秀です」
御両親にそう言うと、二人とも複雑そうな表情になった。
「あの、なにか?」
言いにくそうに、旦那様が話し始める。
「ミサレイは、とてもかわいい娘なのですが、、、3歳の頃から、勉強がしたいと一人で本を読み耽ったり、私達や召使い相手に難しい質問をしたりと、、、普通の女の子とは、、、その、少し変わっているんじゃないかと心配しているんです」
夫人も頷いている。
「ミサレイがかわいくて賢いのは嬉しいのです。家庭教師も、ミサレイが強く望むのでお願いしました。けれど、私達は、普通に女の子らしく、幸せな結婚をして欲しいのです」
それで、この場にあの子がいないのか。
私は、微笑んで両親を安心させる。
「お嬢様はひとりっ子ですから、自然と一人や御両親と遊ぶことも多くなるのではないでしょうか。いずれ、ご兄弟が産まれたら、きっと変わりますよ。特に女の子は、小さな子の世話が何より好きですから」
私の言葉に、御両親は視線を合わせて、目を伏せて頬を染めている。
こそばゆいな、ここ。
自分の未来を切り開きます。