新たな人生
赤子って、何でも分かってる顔してる時ありますよね
ふと目を開けると、赤紫色の壁と、轟々という音。
優しい歌声。
安らかな気持ちで再び目を閉じる。
次に目を開けると、そこは眩しい世界。
よく見えないが、沢山の人に囲まれている。
「〇□~~△□△〇~」
何か言っている。
優しくて、安心する声と、優しくお腹をトントンとリズミカルに叩く感触に、再び目を閉じる。
あれから、何ヶ月かは経ったのだろうか。
私は、若く優しい両親の子供として新たに産まれたようだ。
まだ、うすらぼんやりとしか見えないが、なかなか魅力的な顔立ちの両親らしい。
母親は、いわゆるかわいい系だ。
父親は、スマートでインテリな感じだけど、私の前ではデロデロだ。
何を話してるかは、さっぱり分からないが、やたらに私を抱っこしては、頬ずりしてくる。
ちょっと痛いが、現時点で、私の命運は、全てこの両親が握っている。
私を生かすも殺すも、この二人の気持ち次第。
私は、出来る限りの笑顔を作る。
「だーぁー」
声も出た。
パタパタと手を動かして、父親の顔をぺたぺたと触る。
さらに、にっこり笑うように頑張る。
「〇〇〇!!!△□△~!!!」
父親は、目を見開いて誰かを呼ぶ。
「△□△??〇〇〇□△??」
かわいい母親が来た。
前世の私くらいじゃなかろうか。
まだ、20代前半くらい。
父親もね。
こんなに若くて、結婚して子供もいるなんて羨ましいわ。
私が、その子供だけどさ。
二人は、一生懸命、あーだこーだ言い合って、私をじっと見てきた。
空気読まなきゃ。
私は、再び、全力で笑顔を作って、手を動かし、母親の顔をぺたぺた触る。
「あーあー」
なんとか声も出た。
母親が、両手で顔を覆って、それから父親に抱きついた。
赤子の前でイチャコラすんなや、コラ。
でも、私はそんな感情は出さない。
にこにこ笑顔も崩さない。
疲れてるけど、手も足も動かして大サービスし続ける。
「ぱーあーぅー」
両親は、飛び上がって喜んでいた。
私も、母親のお腹の中の記憶があるのです。