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普通の前世

自分が楽しめる物語を書きたいと思って始めます。

ストレス解消です。

私の前世は、ある意味普通だったのだろうか。


よくある話。


幼少時代は、ネグレクト。


2歳から、母親は私を育てることを拒否した。


同居の祖母のおかげで、なんとか生きていた。


祖母が亡くなり17歳から、両親との3人での暮らし。


既に姉は家を出ていた。


母親からの毎日の罵詈雑言。


必死のバイトで貯めたお金で大学へ。


大学を卒業して就職すると、待っていたように金の無心。


貯金も全て取られていく。


「産んでやったのだから」


「大学まで行かせてやって」


「お前を育てるのにどれだけかかったか」


暗示のように、当然のように、お金を吸い上げられていく。


両親の家の中には着ることの無い高級な着物や食べきれなくて捨てる大量の食料。


しょっちゅう買い換える新車。


姉からも金をむしり取りながら、贅沢し続ける両親。


私の心の支えは、彼氏と親友。



ある日、珍しく親友からの手紙。


『ミサと出会えて良かった。ずっと親友だからね。でも時々、辛い時があるの。今度、話を聞いてね』


嬉しかった。


『私も、大好きよ。これからも、ずっと。辛いことがあるのね。困ったことがあったら、いつでも言って!』


そう返事を書いた数日後


私と会う予定の日の朝、親友は自殺した。


首を吊って。


周囲には、私以外、誰も自分を理解してくれないと言っていたらしい。


彼女の母親にも。


そして、彼女の家には、私からの手紙。


「ミサちゃんは、何か相談を受けていたんじゃないの?!どうして、支えてくれなかったの?あなただけが頼りだって、あの子いつも、、、」


彼女の母親の悲愴な声が頭から離れない。


彼氏に電話をすると面倒くさそうに


「そういう暗い話って、うんざりなんだよね」


遠距離になった彼には、既にかわいい女の子がいて。


「お互いの為に、別れよう」


そうして、一晩中、私は部屋の天井を見ていた。


もう、誰もいない。


仕事は、ブラックで毎日の残業は当たり前。


磨り減って行く自分と、終わらない両親からの金の無心。


私は車で、一番近い自殺の名所へ向かった。


真っ暗な道を進み、駐車場へ車を停める。


懐中電灯で足元を照らしながら、強風の吹く崖の切っ先へ到着した。


服が風をはらんで、吹き飛ばされそうだ。


今にも、足元を掬われて崖下に転落しそうな。


いや、違う。


私は、自分の意思で崖から落ちようと思って来たのだ。


高所恐怖症だから、足がすくんで、ガクガクと震える。


目を閉じる。


聞こえるのは、ビュオビュオという風と、波が岩を打ち付ける音。


ほんの数歩歩けば、楽になれる。


正しいかどうかで言えば、きっと正しくなんて無い。


私は、都合の悪い現実から逃げただけだ。


涙が滲む。


一歩、また一歩、ただ下を向かないように。


どうか、天国へ行けますように。


普段は願ったことなんて無かった神様に、その時だけ図々しくお願いしたら、ふっと笑えた。


その瞬間、足元が空を切り、私の身体は真っ暗な海に吸い込まれていった。

そして、新たな人生へリスタート。

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