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偽典-英雄邪道-  作者: あしゅけーね
誰そ彼の詩
54/54

其の一

プロット書いてたら遅くなりました

まあプロット書いたからってすぐ書けるわけじゃないから次回更新は未定なんだけどね

一応最終章は“黄昏の返歌”の予定

 ──シアト


「では少し遠いが、マオに倣って私が。……こほん、ようこそ帝都へ。この世を統べる最も醜悪な都市へ。私が知るのは二千と七百年ほど前の姿だが本質は変わらないだろう」


 あれから三ヶ月が経った。異常な量の魔獣が現れることを問い詰めたら魔獣を寄せ集めていたことをマオが自白したり、シャーレとは異なる竜が襲ってきたり、今まで未発見だった遺跡を探索したり。

 特筆すべきことはそれくらいであとは特に何もないか。強いて言うのなら勇者の事情を知らないはずのシャヘル女史が同行しているのが奇妙な点か。マオは何を考えているんだ。……今更か。


「醜悪?むしろ綺麗だと思うっすけど……ミーンが田舎に思える程発展してるし」


「まあミーンの街に比べて自然が全くないし、それを醜悪と言っているのかしら」


「空気が淀んでるってのはわかるな」


 恐らく帝都に来たことのないであろう三人が何か言ってるが、本質をついているのはアレンの言った空気が淀んでるという部分だろうか。

 マオや、私と同じく帝都出身であるミトンは理解してくれるはずだ。


「あー、醜悪だと言われればその通りだが、今はかつてのような泥々とした雰囲気ではなく───」


「見晴らしの悪い荒野のような感じね。用心していれば敵影は見えるけどこちらも見られる。互いに喉元を食い破ろうとする狼の巣窟よ」


 ああ、そういえば貴族の制度が変わったとかマオが言っていたな。私がいた時代の上位の者に付き添って溢れた餌を啜るような泥沼のものから互いに狙い合う荒野の景色へ。

 それがいいのか悪いのかは分からないが。


「さて、そんな大層な紹介をされた帝都であるが今は寄らん」


「えー、あたし帝都寄ってみたかったんすけど」


「残念ながらここから半日程歩く。あそこに見える偉大なるキヌス大山の麓の村が目的地だ」


 皇帝に対してだろうがいつも通りの態度を崩さなさそうなマオがキヌス大山のことを偉大なると形容するあたり賢者キヌスのことは本当に尊敬しているのだろう。それこそ、世界を統べる皇帝以上に。まあ私もあの糞野郎よりは賢者キヌスの方が圧倒的に好ましい。


「一度帝都によらない?休憩も大事だしここまで旅してきて食料も心許ないわ」


「そうっす、帝都によるべきっす!!!なんか美味しいものあるかもしれないし!!!」


 ええ、帝都には絶対に近寄りたくはないんだが。

 駄々を捏ねる子供のようではあるが、あの街に行くくらいなら一日山を駆け巡って獣を捕まえたり毒のない野草や虫を捕まえる方がいい何百倍もマシだ。


「いや、キヌス大山の麓にも村があるな。帝都に比べれば小さな村だが、かの霊山を登ろうとする登山客向けに宿や食事処が揃っておる。休憩はそこでもできるだろう。まあ食事の美味さはミーンが一番だからそこは諦めろ」


「ならそちらでいいだろう。さあ、早く行こう。あんな街見たくもない」


「どんだけ嫌いなんじゃお主。仮にも自身の生まれた土地だろうに」


 だから嫌いなんだよ。


 *


 帝都付近からでもその存在感を重厚に表していた山が、近付くほどにその威容を増していく。


「これ登ってもいいか?」


「登っても杖はないぞ」


 やはりか。賢者キヌスはこの山の頂上に突き刺してあった杖を引き抜いたとされているがさすがに二本もあるわけではないらしい。


「あれは厄災の封印の要として設置したものだからな」


「「「「なんて??」」」」


「厄災……?あっ、この旅の目的の魔獣っすか!!!」


 封印の要?賢者キヌスが引き抜いたわけだからつまり今は刺さってなくてその……


「待ってちょうだい。つまり賢者キヌスが杖を引き抜いたから封印が緩んで私達が討伐に集められたってこと?」


「いや、違う。それでは他の厄災と合わせて五本も始祖様が担ぐことになってしまうだろう」


 たしかにそうだ。このキヌス大山から賢者キヌスが杖を抜いた話は有名だが他の場所で何か道具を拾ったりするという話はない。知識を授けるか凄まじい魔法を使って問題を解決するかだ。


「あの杖は我らがまだ未熟で完全な封印を施せない時に要としたものだ。封印の強度が弱くすぐに復活してしまいそうなので始祖様が直々に封印を張り替えてくださってな。その時余った杖を持って下山しただけだ」


「他の封印は頼れる者と行ったから道具がないわけか」


 ………ああ、五人の英雄か。恐らくここは三番目の脅威で既に二人が散っているわけで、マオを含めた残り三人は満足な封印を施せない者だったのだろう。頼れる者から散っていったわけだ。


「じゃあ最後の封印はどうなんだよ。一人か二人でやったんだろ?」


「最後の封印は場所の影響もありかなり強固だ。桜素の根源である大桜の根本で行ったからな」


「大桜……ああ、城からぼんやりと見えていたあの大きな木は桜だったのか」


 年中枯れて氷漬けになっていたから分からなかった。誰に聞いても答えてはくれなかったし。いや、朧気ながら昔母が教えてくれた気がしなくもないな。


「なぜ知らんのだお主」


 知っていなければならないようだ。多分母が教えてくれていたのだから忘れていた私が悪いのだろう。


「そこの阿呆は放っておいて、これからのことを伝えよう。まず邪魔だから麓の村の村人を全員追い出す」


「は?いや、邪魔だからってそりゃねえだろ」


「そうっすよ館長、それはあんまりっす」


「いや、邪魔だ。というより危険過ぎる。あのキヌス大山が見えるだろう?厄災はあれの半分程の大きさだ」


 一呼吸おき、マオは衝撃的な事実を伝える。


「というより、キヌス大山の上半分は厄災の体だ。元々あった山に覆いかぶさるように厄災が封じられているのだ」


「嘘ぉ!!?」


 キヌス大山の半分の大きさだと……?


「おいおい、そんなバカでかい相手と戦えるのかよ」


「無理だろうな」


 おい。


「しかし何かしらの勝機があって我々を呼び寄せたのでしょう?であれば無理、と断言するその理由を聞かせてくれるかしら」


「普通に考えて山の半分の大きさを持つものと戦えるわけがなかろうが」


 ………何人か思い当たる節があるが、確かに普通は山程の大きさの厄災と渡り合えるわけがない。しかしそれができるとしてマオは我々を呼び集めたのだからなにかあるはずなのだ。


「今回の敵は炎の厄災。燃え盛る巨人だ。しかし炎の大きさが彼の者の体躯を膨らましているに過ぎず、本当の姿は我々とそう変わらぬ」


「ええっと、つまり炎を消してしまえばいいってわけね?」


「そうだ。消す、とまではいかずとも勢いを弱めれば竜になったシャーレ程の大きさまで縮むだろう。そのために水の勇者が必要であったわけだ。炎の魔王と炎の厄災の“炎”は同質のもの。規模の違いこそあれど、魔王の炎を呑み込んでみせたのならば厄災にも届くであろう」


「いや、無理だが……」


 同じ炎であってもその規模が異なれば無理だろう。焚き火を消すのと山火事を消すのでは大きく異なる。


「無論、お主一人でやれとは言っていない。シャーレも雨を降らせるくらい出来るだろうし、ミトンかて水の魔法を使えるだろう」


「私水の魔法は苦手なんだけど?」


 シャーレが雨を降らせるなんて初耳だが。むしろ水が苦手な地竜だぞシャーレは。いや、今は地竜かどうかだいぶ怪しいが。

「はーい張り替えましたー」

「あっそう」

「冷たいねぇ今回。いや毎回冷たいか」

「私の周りに冷たいも暖かいもないけど」

「あ、そっか。そうだね。これは一本取られた。悔しいなぁ」

「本気で悔しがってるじゃない」

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