怒れる者には
──ガレウス
「やあ、君が魔王かな!!」
「うっせえなおっさん。服くらい着ろ」
暗い部屋で相対するは二人。片方は良く言えばありのまま、悪い言い方をすれば半裸で、もう片方は筋肉質で大柄な青年。
「私は二十五だが」
「八つも上ならおっさんだわ」
「はっはっはっ、それもそうか。君、名前は?私はガレウスという」
「バンキだ」
「そうか。よろしく、バンキ君」
「ああ、よろしくな」
瞬間、どちらからともなく殴り合う。一方は岩を削る激流を纏って、もう一方は全てを焼く業火を纏って。互いの拳が互いの頬に突き刺さる。間髪入れずに二発。左の拳が両者の脇腹に突き刺さる。
「水かぁ。相性わりいな。まあかわいい後輩の頼みだ。勝たせて貰うぜ」
「こっちこそ、不自然は排させて貰おう」
三度目の殴打。やはり、彼とは考えることが同じようだ。鏡合わせのように同じ場所を同じように殴り合う。
「はっ」
「ふっ」
ああ全く、楽しいなぁ。魔獣などという自然に逆らう異形の王だというのに心通わせ、存分に拳を打ち合える。これ以上に心地よいことがあるだろうか。鍛えた技に耐え、肉体が震えるほど重い一撃を放てる相手と始めて出会えたのだ。
それは相手の方も同じようでその顔には笑みが浮かんでいる。恐らく私の顔にも同じように笑みが浮かんでいるだろう。
*
「はぁ、はぁ……」
「かふっ」
右の拳が胸骨を貫く。長かったようで短かった戦いに決着がついた。
「ああ負けた負けた。………あいつのことよろしくな。もう一人のクソ生意気な方と違って自分の意見を言えねえから。……ああ、そうだな、あいつは強いよ……すぐ行くさ、こうき……」
最後の言葉はきっとここにはいない誰かに向けたものなのだろう。その体が光に包まれていく。その光量は次第に増し──ああ、不愉快だ。これを仕掛けたのは超自然的な者だろう。水を差されたな。
*
──???
豪奢はお城の庭で、黄色の少女と緑の少女が語り合う。
「ご存知かしら。炎の魔王が倒されたらしいわ」
「らしいね。誰が倒したんだい?」
「さぁ?知らないわ。なんでもその人は人のいない山奥にいたらしいもの。そんなところ私は見ないでしょ?」
「そうだね」
黄色の少女は納得する。たしかに、緑の少女が語るように人が一人もいないような山奥などは見ない。だが……
「だが■■に曝されてたなら過去は見れるだろう」
「見れるわ。けど封印されてしまったのよね。流石に参照元もないのに過去を見るのは不可能よ」
「そうかい。それは残念……おや、青じゃないか」
庭に現れたのは青い少女。
「仕事は終わった、終わったわ。仕事の時間よ」
「もうそんな時間でしたか。今行きますわ」
少女の茶会はもうすぐ終わり。けれど語らいは続くだろう。
「ちなみにバンキ君の兄弟子の子孫がガレウスの師匠だよ。だから攻撃する場所とか同じわけだね。あ、僕じゃないよ」
「そんなのわかってるわよ。貴女子供いないじゃない」
「この世界の人間は皆子供みたいなものだよ」
「はいはい、凄いですねお母様」




