忘れる者こそ
──???
青と赤の少女が古びた家の中でお喋りに興じる。
豪勢なお菓子も、香りの良い紅茶などなくても、話の種があれば無限に続く、お茶会とも言えない集い。
「ご存知かしら、ご存知かしら?踊る勇者様の話」
「知っていますわ、知っていますとも。先日魔王城へと旅立ったのでしょう?」
「そう、そう」
「今度の勇者様はどのような方でしょう」
「知らない、知らないね。興味ないもの。無名の歩みより有名の結末だもの」
「あの女の言いそうなことですね」
「まあ、私が一番近いもの」
「そうだったわね。それより、有名の結末と言えば扉の前で泣く赤鬼の話はどうなりましたの?」
「ええと、どうなったんだっけ……ああ、そうだ。イノリちゃんが持ってっちゃったんだ」
少女達は話続ける。いつでもどこでも、何かが見える限り。
*
──アリベル
そっと扉を開ける。この城の…それも玉座の間には似つかわしくない小さな木製の扉。玉座の間には誰も居なかったので、恐らく魔王がいるのは玉座の間から唯一続くこの扉の先。
開いた扉の向こうに居たのは……
「子供…?」
「ああ、良かった。僕を見てそう思うってことは何年たっても人は変わらないんだ。大陸も、島も。やはり僕たちはわかり合えたはずだ」
「……話が見えて来ないんだけど、何の話かしら?」
「ん、何でもないさ。僕たちは負けたってだけだよ。さて、君が勇者でいいのかな」
「まだ、だけどね」
「そうかぁ。はぁ、全くこんなことはしたくないんだけど仕方ない。あの子、自分を大事にしないからね。先輩として、初めての頼み事くらいは聞いてやらないと、ね!」
そう訳のわからない言葉と共に目の前の少年が腕を振る。
見えない何かが煌めいて……振り下ろされる。
反応できたのは奇跡と言ってもいい。咄嗟に抜いた剣がたまたま当たっただけと言われても仕方ないだろう。
この不可視の攻撃、考えられるのは……
「糸…?不思議な武器ね」
「そういうお姉さんこそ、刃のない刺突剣の二刀流なんて珍しい武器じゃん」
「いいえ、これは武器じゃないの。こうやって使うのよ」
左右の腰に前後それぞれの向きに差した計四本の細剣を、二本の刺突剣で引っ掛け、引き抜く。細剣の柄はそれぞれ私の着けている首輪から垂れる糸で結ばれ、切っ先だけを地面につけふらりふらりと揺れている。
「へえ、面白いねそれ。ああ、そうだ。まだ名乗ってなかったね。僕はマダラ。少しの間だけど、覚えてね」
「いいわ、覚えておいてあげる。私はアリベル。すぐお別れだろうけど私の名前も覚えておきなさい」
*
傷だらけになりながらも、なんとかマダラの胸元を貫く。
「負けちゃった…か。…仕方………ない。あの子を…よろしく………」
「はぁはぁ……はぁ…………あの子って」
「……優しい、子だから……」
「だから誰よあの子って」
何も答えない…いや、もう力尽きて……マダラの死体が輝き始める。ああ、なるほど。二人の扉が開かないのはこういうことだったの。じゃあもう死んでるかもね。
「五人の勇者最弱はマオちゃんだけど最強はこ…マダラだね。一応特定条件下ではコトリちゃんが最強と言えなくもないけど」
「あー、まああの能力じゃね」
「まああれはコトリちゃんが異常なだけだから」
「そういえばなんでコトリは本名なの?」
「コトリちゃんが真面目だから…というのはおいといて作者が■■■を考えてなかったから」




