其の六
一年くらい更新止める
──シアト
日は沈みきり、暗闇が森を覆う。その光景を月と影を映す水面から眺めていた。
「行けるか、シャーレ」
『うん、だいじょうぶ』
なら帰ろうか。元はと言えば私の我が儘からだが少し長居し過ぎた。
『じゃあいくよ?』
「ああ、頼む」
黒々とした月夜に、白い翼が広がる。今夜は満月の少し手前といったところか。月の明かりは炎よりは弱々しくも、夜の景色を楽しむには十分だ。
『わーい!』
少し冷たい風を感じながら、静寂を進む。ゆっくりと……シャーレうるさい。
ミーンの街に向かって進んでいると次第に飽きてきたのか笑い声が小さくなっていく。
笑い声が途絶えてからしばらくして、シャーレが呟いた。
『なんでご主人はどっかいっちゃおうとするの?』
「……魔獣を倒すためだ」
『なんで?なんでまじゅー倒さないとだめなの?』
「人を襲うからだ」
『じゃあシャーレが誰か食べちゃったら倒さなきゃいけなくなる?』
シャーレが人を襲ったら……。
「………ああ。殺さねばならなくなる」
『そっか。じゃあシャーレ、いい子でいないとね』
………もし、シャーレが人を襲ったら。その時は殺さねばならなくなる。その時、私は出来るだろうか。
いや、やらねばならない。私の騎竜が私と同じような人間を生み出すことだけは阻止したい。
その後何の会話もなく街に着き、夜に飛来した竜に怯えながらもそれがシャーレだと解って胸を撫で下ろす衛兵に街に入れてもらい部屋まで戻って来た。
─── 夜、シャーレは泣いていた。私が気付けないままに。
*
「遅かったではないか」
朝。少し空腹を感じ、眠っているシャーレを起こさないよう気を付けながら部屋を出たところでマオに捕まった。位置的にずっと扉の前で待っていたらしい。
「何の用だ」
「用がなければ話しかけてはいけないのか?」
「ああ」
「寂しい奴だな。……食堂へいこう。顔合わせを済ませておきたい」
案内されるがままに食堂へ向かう。食堂の振り子時計は八時を示していた。
「おう、いらっしゃい。何が食いたい?」
「何でもいい。任せたぞ」
「……私も何でもいい」
「俺も何でもいいぜ」
案内された席。そこにはすでに昨日向かい入れた青年が座っていた。
「じゃ館長は生卵と白米で。お客さん……じゃもうわかんねえか。シアトさんはオムレツでいいか?」
「ああ、頼む」
「おい」
「アレンも同じのでいいか?」
「いいぜ」
「おい待て」
もう呼び捨て……一日でかなり親交を深めたようだ。私も見習わねば。未だイルミナさん以外の司書とろくに言葉を交わせていない。
「おい待て、我の扱いがおかしくないか!?」
先程から何か言いたげだったマオが声を荒げる。
「館長は生卵食べても大丈夫だろ?」
「いや確かに病や食中毒といったものにはならぬが……」
「じゃ、いいじゃねえか」
「いやそうはならないだろう!!」
生で卵を食べても大丈夫なのか。シャーレではないが味が気になるな。
なんて益体のないことを考えているうちにマオの抗議は加熱していく。
「確かに我も司書らも食わずとも生きていけるがなぜこの食堂があるのか今一度見直せ!食事は娯楽の一つであり我らはものを食べるという行為を楽しむことが重要である!そこに時間を短縮して手早く済ませようなどという思考は無用であり……」
「でもキヌス様が立ってるものは親でも使えと」
「………始祖様が?」
「ああ。あの子はどうせ暇だからガンガン使え。丁度親代わりみたいなものだし、と」
「……我、あの方がそういう意味で言ったんじゃないと思う。…まあよい。ならば自分で作る!卵かけご飯であろうとネギを刻んで油で炒めたら立派な料理だ!」
「それはもう炒飯だぞ館長」
「知っておる!」
「この話前半部分38℃の熱に魘されながら書いてたんだよね。だからちょっとおかしいけど」
「寝てなさいよ」
「お、優しいねぇキョウカちゃん。そのまま死ねとか言うと思ったのに」
「病人に毒吐くほど性格悪くないわよ。貴女じゃあるまいし」
「性格悪い自覚はあるんだ」




