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偽典-英雄邪道-  作者: あしゅけーね
毒の勇者
21/54

歌いもせず

少し時間が巻き戻る

 ──アレン 


『とおちゃあーく!!!またね!!』


「いってぇ!!!」


 たいそうな壁の前に放り投げられ、尻餅をつく。幸い、地上付近に降ろしてくれただけの冷静さは残っていたがこれ時間がなかったら街が見えてきた時点で放り投げられてたんじゃないだろうか。

 文句の一つでも言ってやろうかと思ったが一瞬で地上付近から高々度まで飛翔したその風に転がされ、何も言えなくなった。


「あいつぜってえ白の勇者じゃねえ」


 少なくともあんな子供が切羽詰まってまで追い掛ける奴を勇者とは認めねえ。

 自分を見てる奴を見ないで、それで相手のためになると思ってるのだろうか。

 ……今の言葉自分にも刺さるな。あいつを置いてきちまったし。撤回しよう。


「残念ながらそうなのだ。そうであって貰わねば困る」


 先に着地したあー、なんだっけか名前。村長さんが声をかけてくる。

 やけに受け身が上手かったな。余計に怪しい。


「ついてこい。事情を説明しよう」


「いやはいそうですか、つって着いてくわけねえだろ。話は聞いてやるって言っただけだ。誰が明らかに胡散臭い奴の拠点まで着いて行くって言うんだよ。世間知らずな貴族の坊っちゃん嬢ちゃんですら警戒するぞ」


 俺の剣幕に押されたのか一歩引き下がる村長さん。

 少し言い過ぎたのだろうか。


「なぁ、───。聞いてた話と違うのだが」


 小声で呟かれたここにはいない誰かに語りかけるその言葉。おそらく、無意識に出た独り言だろう。

 問題はそこではない。呟かれたその名前。聞き馴染みのあるあの名前が目の前に現れた。


「おい、村長さん。あいつに会った事があるのか?」


「……ある」


 一呼吸置いて告げられたその言葉。この一呼吸が何を意味するのかはわからないが、その一言で独善を満たすことは出来そうだ。

 せめて良い最期を……なんて、独り善がりも良いところなこんな後悔を。


「それも含めて一度腰を据えて話したい。だが我は秘密主義なのでな」


「…ちっ、解った。着いてく。だが変な真似したらその腕一本でも持ってってやる」


「二本でも三本でもくれてやるわ。できるのならばな」


 そういって門に向かう村長さん。

 二、三歩歩き出したところで思い出したかのようにこちらを向いた。


「一つ、言い忘れていた」


「今じゃなきゃいけねえことなのかよ」


「ああ、勿論だ。……ようこそ、大図書館街ミーンへ。ここは紙と歴史の街。お主の知りたいこと、その手掛かりが眠る場所だ」


 *


 椅子が七席……話し合いでもする部屋なのだろうか。

 環状の卓に向かいあって座る。


「それで、何から聞きたい?」


「魔王って何だ」


 魔王を名乗る奴がなぜ勇者を集めている。自分を殺す人間を揃えて何をしようって言うんだ。


「……魔獣を統べる王───」


 軽く睨み付ける。


「……では不満か」


「当然だ。魔獣を統べる王なんて銘打ってんのに魔獣の脅威は消えてないみたいだしな」


「どうしてそう思う?」


「あの壁見りゃわかんだろうよ。野生動物相手にあんな壁は必要ねえ。それに、見た感じ街の人口はそろそろ限界だろうよ。それなのに外壁を拡張出来ねえってことは、何らかの脅威……それも魔獣のようないつ現れるかわからねえやつがあるってことだろう」


 入る時には他に三つあった魔王城が出るときには一つも残ってなかった。すなわち魔王は全員倒されたってことだ。

 魔獣を統べる王を全て倒して魔獣の脅威が消えてねえなら魔王なんて奴は魔獣と一切の関係がなかったってことになる。

 それに、竜にここまで連れてこられたわけだしな。


「一応外壁の拡張は出来なくはないが…まあ、確かにそろそろ限界だな。ではお主が納得する答えを述べようか。端的に言ってしまえば()だ」


「餌?」


「ああ。魔獣の王とでも言っておけば英雄願望のある者、正義感の強い者、誰かのために犠牲になろうとする者、力に自信がある者、名声が欲しい者。こういった者らが集まるだろう」


「なぜそんな者を集める?」


「来るべき厄災に備えるためだ」


「厄災?」


「ああ。五人の英雄の話は知っておるな」


 五人の英雄…。


「あれだろ?五人の英雄が四体の魔獣に挑んで一人ずつ消えてくってやつ」


「少し違うが……まあ誤差の範囲だ。六百年という年月なら歪むのは当然か」


「それで?」


「わからぬか?」


 質問に質問で返すなよ。まあだいたい察しがつくが。


「復活したその魔獣でも倒せって言うんだろ」


「ふむ、やはり察しがいいな。その通りだ。正しくは魔獣ではなく厄災だがな」


「何が違うって言うんだよ」


「全く違う。その脅威度も然ることながら、厄災には知性がある」


「普通の魔獣もあんだろ」


「いやない。奴らは機械的に動作を繰り返し、不測の事態に応じて対応を変える擬似的な知性だ」


 キカイ…?知らねえ単語出すんじゃねえよ混乱するだろ。

 顔に出ていたのか───出てたろうな。自分でもわかる───村長さんが補足を入れる。


「言い換えればそうだな、単調な行動しかせず、自分に出来ないことをやろうとしない存在だ。もっとも、構成する魔素量が多ければ出来ることも増えるし、真の知性に近付き感情なんかも表れてくるだろうがな」


 余計にわからねえ。こいつあれだ、補足説明詰め込み過ぎて結果として説明下手になる奴だ。


「あーうん。あの時計みたいなものだ。ただ時を刻むという仕事のみで自分では動けない」


 解ったような解らないような……まあいいや。本筋とは関係なさそうだしな。


「そんで、厄災の方は」


「厄災はな、()()()()()。魔獣のような単調な思考ではなく、人間のような流体の思考を持ち、出来ずとも率先して挑戦する厄介さがある」


「確かに下手な魔獣より深く思考してくる獣の方がこええや。それよりも人間の方が、な」


「全くだ」


「んで?結局何?」


「それは勇者が五人揃ってから詳しく説明しよう。正直五回も説明を繰り返すのは面倒だ。今は世界の危機と思っておいてくれ」


 こいつこれだけ長話しておいてはぐらかすのか。何一つとして核心をついたことは言ってないし。いやまあ俺が信用してないから向こうも信用していないだけなのだろうが。


「それで?他に質問はないか?」


「ねえよ。聞いてもはぐらかされるのが落ちだろうしな」


「ほう?あやつのことは?」


 ───のこと……か。


「いいや」


「なぜ」


「なんか話してたら冷静になったっていうか…怖気付いたんだ。だから聞けねえ」


 誰かと幸せに暮らしたのか、俺に罵詈雑言を残して死んだのか。あるいはそれ以外の生き方をしたのか。

 知るのが怖い。知らないこと以上に知ってしまうのが怖い。

 後悔も独善も、満ちてしまうのが怖い。満たしてしまうのが怖い。

 情けねえが余計なこと考えてるうちに冷めてしまった。


「ああいや、一つ。今のアンベル村の村長の名前を教えてくれ」


 それが俺の抵抗。少しでも格好着けて逃げたい、ささやかな抵抗。


「アルベール・コーラルだ」


 ……コーラル。あいつの家。祖先はあいつか、その弟か。どちらにせよ、この情報に他に意味はない。


「終わりか?なら司書に部屋まで案内させよう」


「いや、こんなところで寝泊まりできるかよ。どっか適当なところに泊まるわ」


「金はあるのか?お主の持っている金は価値を失っているぞ」


 ああ……五十年も経てば貨幣が一新されるらしいからな。ウン千年立ってりゃそら使えねえか。


「じゃあ野宿でも…」


「衛兵に見つかれば補導されるぞ?我がそこら辺を徹底したのでな。お陰で治安はそこそこ良い」


 余計なことを…。


「それに信用せよとは言わぬが……わざわざ呼んだのに消えられると少し困る」


「目の届くところに居ろってか」


「有り体に言えばな。そろそろ昼だし食堂にでも行って何か食べてくるがよい。我らにお主を害する意思はない。何か食べてゆっくり考えてみてくれ」


 *


 あのあと来た栗毛の少女に案内され、食堂にたどり着く。そこにはすでに町人らしき人々が集まっている。


「人が多いんだな」


「そうっすね。ここの食堂はお昼だけ一般解放されてて、結構人気なんすよ?まああたし達は少し時間ずらして食べてるんでこんなに賑わってるのを見ることはそうそうないっすがね」


「そうかい」


 どいつもこいつも美味そうに飯食ってやがる。案外、館長が胡散臭いだけでその他は良い奴らなのかもしれない。

 席について何を頼もうかと献立表を眺めていると、目の前に座った少女が急に立ち上がった。


「あ、じゃああたしそろそろ……」


「おいシャヘル。お前暇そうだな」


 背後からかけられた声にしまった、という顔で答える少女。


「い、いやあたしお客人の案内を頼まれまして……」


「今帰ろうとしていたじゃねえか」


「うぐっ!……そ、それは…」


「いいから手伝え。人手が足りねえんだ。あ、お客様注文はお決まりで?」


「いやまだだが…」


「じゃあお決まりになったら声かけてください。……おーいレーク!シャヘルが入ったから一旦休んで飯食ってろ!俺とこいつだけでも回せるから!!」


 レーク、と呼ばれた黒髪の少年給仕がこちらを振り向く。その頭頂部には獣の耳がついていた。……猫の魔人だろうか。

 魔人……噂には聞いていたが()()()()()()

 迫害されていると聞くがそんな様子は微塵もない。

 やはりあいつは根は良いやつなのだろうか。胡散臭過ぎるが。……いや、ないか。だってこれから協力して貰おうって奴に真実を話さない奴だし。

「ちなみにシアトは魔王と魔獣が関係ないって言うのは気付いてたよ。その上で魔獣皆殺しにすれば解決という脳筋思考かましたからスルーしてたけど」

「気付かなかったのは作者の方だからね。本当に、あんな記憶力も読解力も文章力も何をとっても穴だらけでむしろ凹み一つない球体の脳みそでなんで書こうと思ったの?」

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