波に乗った天使
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この世には小さな波大きい波、色々あるけれど、それに対してサーファーは少なくとも1人はいる。サーファーが乗らない波は、それは最早波と定義するのすら滑稽に思え、人々はそれを指差し笑った。サーフィンの上手い凡人は才能を開花させていない天才を海に引きづり込んで沈めていく。海はあまりにも強大で人間1人を飲んだくらいでは何も変わらない。夜には太陽を沈め、月を吐き出すそれに対し人々は末端の波を求め、乗った。
サーフボードを持たない私は海を歩いて渡った。頭の上を通過するサーファーはやはり私を馬鹿にした。よく見るとサーファーが乗っていたのは乾燥した昆布。本当のサーファー以外には暴露ないのかもしれない。楽しいなら私には関係のないことだ。とても似合っている。
世界が終わるまでそう時間はないだろう。あまりに美しき世界だ。晴れしかない。海しかない。そして私はいない。
私の友人は天使だった。ある時天から降りてきて世界に祝福をもたらした。ある人がもっと空を見たいと願った。天使は彼を天高くまで連れて行った。昇っていく様は雨のように自然で誰も止めることができなかった。彼はどこまでも天高く飛んでいった。
ある人は夢を追いかけたいと願った。天使は険しく深い谷の底に夢を投げた。天使は足で彼女を蹴り落とす。彼女の叫び声はその内讃美歌へと変わっていった。近似的に底がない谷である。いつまでも夢を追いかける彼女は人々の間で英雄となった。
天使は世界を作り直したいと願った。あまりに不条理で美しくない世界に嫌気がさしたのだ。天使は世界中に意見を募りどんどん実現していった。しかしこの世界に意見を述べるような人間は、きっとどんな状況になってもそうであると感じた天使は意見を出した人間を片っ端から自分の故郷に招いた。
私は世界になんの意見もなかった。だからまだ海を歩きながら空を見ていた。綺麗な夕陽を水中から眺める。そんなに悪くない。
天使はスーパーで素材を揃える。コンパスを使ってぴっちりと水平線を引いていく。上が薄い青、下が濃い青。茶漉しでゴミを取り除ける。倉庫にあった芝刈り機で森をきっちりと整備していく。私はぼやけた境界が気に入っていたので少し残念だと思った。
天使は最後に私を作ってくれた。いつも笑顔で、爽やかで、優しく、サーフィンの上手な私だった。
天使は私に新しい世界の感想を求めてきた。私は新しい世界に対してなんの感想も持ってはいなかったのだが、唯一死にたくないという感情はあったからそのように答える。
「死にたくない。」
言葉を発した瞬間に気づく。
天使はどんな願いでも叶えてくれた。私はもう死ぬことはなくなるだろう。
やはりあなたは私をナイフで突き刺した。
お読みただきありがとうございました。感想、レビューお待ちしています。
内容自体は人の受け売りですが僕は意識して生活しています。さて、僕の主張はなんでしょう。その主張に気づき、実践する。天使のような僕にそっくりですね。