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4回目。俺は惰眠をむさぼった。

最後の部分を変更しました。

「長文読解でのポイントは動詞に注目することです」


 来年定年のじぃさま先生、永沢先生は電子黒板をつつきながら説明を始めた。

 文科省のなんとかっていう事業で支給された巨大液晶モニターは、かすかに不穏な音を立てながら動き始める。


「ここね、ここ」


 永沢先生は電子黒板に直接チョークで書き込んだ。

 絶対に使い方間違っている。

 仕組みは分かってないけど新しいものを使うのは好きなんだろうな。


「長文を読む時はスラッシュをいれてね。区切っていくのです」


 電子黒板に写された英文の区切りのいいところにチョークで線を入れていく。


 永沢先生の声はどこまでも穏やかで、緩やかで、優しい。

 エアコンの吹き出し音と永沢先生の間延びした声は最高に相性が良いのか――二つが合わさるとなんとなく音楽で聴いたショパンのノクターンに似ていた。

 ものすごく心地良い。


 冷房の効いた教室にクラッシックは毒だ。

 ドラクエのラリホー並みに効いていく。


 周りをみると男子は坊主頭の野球部が全落ち、バスケ部もやばい。

 女子は何とか堪えてる感じだった。

 俺の上瞼ももう重力に勝てなかった。

 しょぼしょぼと目が霞む。


 前日遅くまで動画みまくったのがまずかったかな。

 もうだめだ……。


 今日は誕生日。

 朝からいいことありまくった。

 学校の補習、居眠りしても許されるはず。




 ◆◆◆◆


 俺は目を開けた。

 見覚えのある天井とベッド。

 自分の部屋の天井だ。寝ているのも自分の部屋ベッド。


 昨日は誕生日だった。

 今までの人生で二番目くらいにはいい日だった。

 ずっと好きだった美羽に告白して、前向きな返事をもらった。


 その後は?


 教室に戻り補習を受けた。

 英語と数学が2時間ずつ。

 永山先生のラリホーがやばかった。

 補習があって、午後からは塾だった()()だ。

 晩御飯は母さんが前の日から仕込んでいた鶏の唐揚げと誕生日のケーキ。


 俺は体を起こし、目覚まし時計を見た。

 七時ちょうど。

 起きる時間だった。


「ハルト、ほら起きないと。今日学校でしょう?」


 母親の声がする。

 予定通りに事が進まずイライラしているのか、声に険がある。


「母さん仕事だから。ちょっと起きてくれない?」

「……起きてるよ」

「起きてるなら部屋から出て、支度しなさいよ」


 俺は返事をして部屋を出た。

 リビングの……というより二部屋しかないアパートの居間兼母親の寝室で母親は化粧の真っ最中だった。

 瞼を持ち上げてアイラインを引いている。


「今日母さん仕事早く帰れそうなの。晩御飯は一緒に食べよう」

「分かった。待ってる」


 つけっぱなしのテレビでは天気予報が午後からの雷雨を告げていた。

 国営放送のお天気キャスターが天気図を指差し説明している。永山先生よりも電子黒板を流暢に使いこなせそうだ。


『……地方は大気が不安定になっています。午後から天気が崩れそうです。雷雨にご注意ください』


「ええ!? やだ、昼から雨が降るかもだって。学校から帰ったら洗濯物入れておいてよ」

「はいはい、了解」


 雨が降ると湿気がひどくなる。

 湿度百パーセントと炎天下。

 どっちがましだろう?

 俺は朝食のコーンフレークを口に流し込みながら、ぼんやりと考えた。


『本日の予想最高気温は三十六度です。猛暑日ですので、不要不急の外出は控えてくださいね。室内でも水分をこまめに取り熱中症の予防をしましょう』


 お天気キャスターが計算しつくされた笑顔で言う。


『……以上、今日、八月四日のお天気をお伝えしました』


 思わずスプーンを取り落とした。

 大きな音を立てながらスプーンはコーンフレーク入りの皿に落ち、牛乳が派手に飛び散った。

読んでいただきありがとうございます。

4回目の更新になります。


ブックマーク・評価ありがとうございます。

本当に感謝です。

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