転生してから最悪
「先輩パトロール行きましょう」
「お前本当パトロール好きだな、分かったよ行くよ。」
警察官である大和啓介は交番で椅子にのんびり座って雑誌を読んでいる先輩にパトロールに出るのを催促した。啓介と同じ交番で努めている山田武はパトロールに出かけるのをめんどくさくって嫌がる人だった。
交番の扉を閉めて彼らは町のパトロールにでかけた。啓介に運転を任せてパトカーに乗り寝ていたかった武だった。しかし啓介は歩いて周辺の隅々までパトロールをしたかったので武をタバコで買収しパトカーには乗らないことにした。啓介がパトカーに乗りたくないのは後輩である自分が運転するのが嫌で乗らないのではなくパトカーでは入れない場所まで困ってる人がいないか確認する為だった。
いつものことだが武は啓介のパトロール好きに疑問だった。
「啓介お前は何でそんなにパトロールするのが好きなんだ?」
「私達警察が交番にいる間も誰かが悪人から被害にあってるかもしれないじゃないですか?」
「そんなの交番にいると通報がくるでしょ」
「それじゃ遅いです。市民が被害にあってから向かうと何の意味もないのです。私達警察は犯罪を犯した犯人を捕まえるためじゃなく悪人が犯罪を犯す前に市民を守ることが仕事なのです。」
昔から正義感が強くって高校を卒業したどたん警察官になった啓介とは違いただ公務員になって安定的な給料を貰いながら生活するつもりで警察官になった武には理解しきれない言動だった。
「あぁパトロールめんどくせぇぇ」
(お前みたいな奴が警察官になるから何の罪もない市民が犯罪に巻き込まれるんだよ)
啓介はいつものことだが警察官として何の責任感も持たずに仕事をしている武が気に入らなかったが同じ交番で働いてる人とトラブルは起こしたくなかったため彼への不満は言わないで我慢していた。
そんな真逆の志を持った二人は小さな交番で働きながら一度もトラブルが起きなかったのは啓介が武への不満を我慢しているからだ。
「お前本当に真面目だな、それより今週の土曜看護師達との合コンがあるんだけどお前もくるかい?」
「合コンなんていいですよ。私は自然と出会い好きになった女性と恋がしたいので。」
「お前そうだから19歳なのに童貞なんだよ。」
「ほっといてください。それよりあそこの路地裏に入って見ましょう。」
不良達がよく弱者から金を巻き上げる場所である路地裏が怪しいと思い啓介は武を連れて路地裏に入った。
武は映画でもないしこんなところに不良何かいないと言いながらめんどくさそうに啓介の後ろをついてきた。路地裏に深く入ったら啓介の直感通り4人組の不良達が一人の男の子に金を巻き上げていた。金を巻き上げられていた子は顔を殴られたのか頬が膨らんでいた。啓介と武を見て警察だと確認した不良達は素早く逃げた。捕まえそうになかった啓介と武はまずいじめられた子に事情を聞くことにした。
「君あいつらとは知り合いか?、いくら取られた?」
「し、知らない人達です。歩いていたら偶然路地裏まで連れてこられただけです。」
啓介は少年の目を見て不良達に報復されるのが怖くって嘘をついているのだと直感した。
それで少しでも力になりたくって彼に自分の連絡先が書いてある名刺をあげた。
「またこんなことが起きそうだったら俺に連絡しろ。いつどこでも俺が君を守りに行く、報復も出来ないようにしてやる。俺を信じて連絡してくれ、もし俺がこの約束を破ったらあいつらを殺してでも君に報復が出来ないようにしてやる。」
あったばかりの少年にあんな約束をする啓介をみて武は溜息を吐いた。啓介の異常な正義感と守れそうにもない約束を初対面の少年と交わしていたからだ。武の考えとは違い啓介は本当に守る気で約束を交わしたのだ。少年が無事に路地裏からでる姿を見て啓介と武も路地裏からでてパトロールの続きをした。
「前から思っていたけどお前のその正義感は異常だじょ昔何かあったの?」
「いいえ、特に何も」
「じゃ何のためにあそこまで人助けなんかやってんだ?」
「自分の為です。悪人から誰かを助けたり悪人を逮捕したりすると気分がよくなるからやってるだけです。」
啓介が自分の満足感のため正義を振るっているというのは事実だしかし武に一つ嘘をついた。
啓介のこの異常な正義感には理由があったのだ。彼にはスナックで店主として働いていた母がいた。
母は女独り身で自分を育ててくれていたが客の足が止まったくらいの遅い時間にスナックに入った客が母を殺したのだ。その事件は啓介が高校1年の時起きた。それから啓介は悪人を許せなくなり悪人を捕まえる仕事である警察官になった。そして自分のような被害者を手足が届くところだけでもいいから出させないと思ったのだ。
二人はパトロールを終え交番に戻った。武は交番に戻ってすぐ何らかの仕事をする啓介をみて啓介が仕事以外に何をするのか気になった。
「啓介、お前趣味とかあるの?」
「趣味ですか、そうですねマンガですかね、いろいろ読んでますがヒーローマンガとか好きですね
悪と戦い人を救ったりヒロインを守る姿がかっこ良くってあこがれるんです。」
啓介からつまんない返事が返ってくると思った武は少し意外だと思った。それで昼飯でも食べながらマンガの話でもしようと思った。いつも真面目に仕事ばかしてる啓介のことを少しでも知りたかったのだ。
「もう昼だし休憩にしよう」
「はい、休憩入りますね。」
啓介は休憩に入り昼めしを食べようとするが財布が空っぽだった。
もちろんカードもなかった。啓介の母はお金に厳しくって彼が幼いころから他人に金を借りるな、大人になってはカードを使うなと教えてきたからだ。それで金を貸してくれるという武の提案を断って空っぽの財布に何枚かの紙幣を入れるため近い銀行に金を下ろしに行った。ATMから9千円を下ろし財布に入れたあとうんこが顔を出しそうにしてたのでトイレに走って行った。
その時拳銃を装備した銀行強盗4人が入って来た。銀行強盗達は拳銃を装備して覆面を被り同じジャージを
着用していた。強盗達は自分達が映画にでも出るような悪党のように「パン」と一発を放ち銀行員と客を脅した。そして約束した展開のようにバックに金を詰めろと命令する。
そして人質として利用するために手足を縛り始めた。なんてお約束的な展開なのかしら、トイレに誰か隠れているかもしれないと思うボスは部下一人をトイレに向かわせた。もちろんトイレには警察官である啓介が銃を持って隠れて反撃体制で待機していた。
ボスの命令でトイレに来た強盗団の一人はトイレの扉を開けた瞬間、啓介の拳銃に心臓を撃ち抜かれ瞬殺された。啓介はこんなこともあろうかと射撃訓練を誰よりも頑張って来た警察だった。警察内でもいきなり入って来たカウボーイ新人とか噂になってたりしてた。今啓介が撃った銃の音に驚いた強盗団のボスが大声でトイレに行った部下に叫ぶ。
「おい、何があった」
高校を卒業してすぐ警官になったくらいの頭が切れる警察官である啓介は一瞬で覆面を自分の口にくっつけ少し変声された声で返事を返す。覆面やマスクを口に付けてしゃべると男の声は大体似たような声になる。
「男一人が隠れていたので殺しました。」
「よくやった。」
啓介は殺した強盗団の一人のズボンと覆面を血が染み込むまえに早く脱がした。そのあと自分も警官の制服を脱ぎ強盗団のズボンを履いて覆面を被り上はTシャツ一枚の格好になるよにした。何故なら倒した強盗団の上着は血が滲み疑われ予知があったからだ。いや100%疑われるでしょ。啓介は変装した格好で人質をとらえている強盗団がいるところに向かった。
しかしちょっと出てくる時間が遅かった啓介を疑いボスが問う。
「遅いよ、用でも見たのか?」
「すいません、近くで殺しちまい上着に血が付いちゃったので上着脱いで来ました。」
啓介を微塵も疑わない強盗団3にんは啓介から人質に視線をそらし背を向けた。そのチャンスを逃さない啓介ではなかった。啓介は倒した強盗団が持っていた拳銃を奪い取ったので自分の拳銃と合わせ双銃で前にいる二人を撃った。
二人は銃に撃たれ倒れたが残っていたボスは驚いて直ぐ後ろに振り向き啓介を撃った。撃たれた啓介も素早くボスを撃ちふたりとも倒れた。内臓の破損と多量出血により意識がどんどん遠くなる啓介には走馬燈が見え始めていた。
彼の走馬燈に映ったのは今まで自分の為にと思いしてきた人助けと正義のヒーローのように人を守る為、警察になれるよう頑張って勉強してきた高校時代の自分だった。そのような走馬燈を見て女の子とイチャイチャしながら一度も恋愛できなかったことに後悔した。
(好きな女の子でもいたら本当の恋がしたかったな)
死んだ啓介が目を覚ますと目の前にはふわふわしたソファーとテレビが置いてあった。啓介は自身の体は少し硬い木材で作られた椅子に座っていた。
啓介は自分が死んで今この場所があの世なのかただの夢なのか戸惑った。その時後ろからコクコクと足音が聞こえた。優秀な警察である啓介は女性のハイヒールの音だと直感した。
後ろを振り向いたら金髪で白い肌の美少女ギャルがハイヒールを履いた姿で自分の方に向かって来るのだった。彼女の美は人間のモデルをやっている人よりも遥かに綺麗でこの世のものだと思えないくらいの美しさだった。
その美少女ギャルは啓介をちらっとみて啓介の前にあるふわふわっとしたソファーに座るのだった。
啓介は自分が死んだのか、夢なのか、あの女は誰なのか、混乱した。そんな啓介を見て美少女はその綺麗な口を開け話しかけた。
「まだ自覚がないみたいだね、君は死んだのよ。」
「俺は死んだのですか、じゃあなたは女神様ですか?」
「そうよ、私が君の担当の女神、シルビアよ。」
彼女は自分を女神と名乗り死んだ魚の目をしながら啓介を見つめた。そんな目をしている女神を見て綺麗な顔が台無しだと思いながら自分の未来つまり死んだ自分の魂はどうなるのか気になった。
「じゃ俺は今から天国に行くのですか?」
啓介が自分は当たり前のように天国に行くのかと質問した。啓介は今まで自分が行ってきた行動の中に地獄に行く要素など全く皆無だと信じ込んでいたからだ。それを聞いた女神は爆笑した。あそこまで堂々と自分が天国に行けれと思う人間を始めて見たからだ。そんな啓介をみて爆笑する女神の笑い方は女神とは思えないくらいの気品のない笑い方だった。
「あんた自分が天国でも行けると思ったの、そもそも天国や地獄など存在しないわ
そんなのただ人間の妄想よ、もちろん人間が作った宗教も全部な」
女神は天国と地獄はないという。そして宗教で人間たちがまつわる神などは存在しないとのことだ。
例えるならゼウスやヘルメスなどなど、今啓介の前にいる名前を聞いたことのない女神がいるというのがその証拠だ。そして天国と地獄もない、つまり死後の世界がないと考えた啓介は絶望した。それはつまり無、自分の存在そのものがなくなると思ったからだ。自分が口から出した言葉により戸惑う啓介を見ながら女神はスカートのポケットからタバコを取り出し吸い始めた。
「私はねぇ、いい人間が人助けなどをして死んで自分が天国に行くなど思ってる人間が真実をしり不安がる顔が本当に面白いわ」
彼女は女神でありながら女神とは思えない発言をしながら啓介を嘲笑う。そんな女神をみて啓介はイライラするが自分の立場を考え、ふりでも女神を尊敬するような態度を取るのだった。何せ相手は神なのだから。
「じゃ俺はどうなるのですか?」
「そんなに不安がるな残念ながら地球で死んだ人は地球の真逆にある星、ヘルスに転生することになるから。」
女神の話を要約するとこうだ。
地球の真逆にヘルスという星が存在する。地球で寿命を終え死んだ人はそこで新しい命として生まれるらしい。
しかし啓介のように15~25歳の幼くもない若いうちに死んだ人は地球でいたころと同じ歳で転生するという。
地球とは性質も真逆らしく、例えるなら地球に存在する動物や人間が存在しない代わりに亜人とモンスターが存在するとのことだ。
「まぁ、一言でいえばキモイオタクたちが行きたがる異世界というとこかな!」
「じゃその異世界にいって魔王でも倒せってことですか?」
啓介も今まで生きてきて、かなりの数のマンガを読んできた。そして異世界物のマンガのストーリーでは異世界に転生されたら魔王を倒すのが使命となる。そのような知識で女神に聞いたのだ。
しかし女神からは啓介の知識を裏切る返事が返って来た。
「それもオタクたちが作った妄想でしょ、魔王は倒しても倒さなくっても別にいいわ、魔王により人間が殺されても私には何の関係もないもん、でも魔王を倒したら神のルールにより魔王を倒した者達(魔王を最後の一撃を下した者とそれに協力した仲間)には何でも願いを一つ叶えてあげることにしてるわ、」
「なんでもですか?」
「そうよ、でも倒さないで欲しいな。願いかなってあげるのも面倒くさいし、そのとき会議のため神全員集まらなきゃいけないから面倒くさいんだよ」
女神は自分が面倒くさいから魔王を倒すなと女神にありまじきことを言いながらタバコの火を消した。
そんな他人の被害とか気にせずめんどくさいというだけで何もしたくなさそうな女神をみて自分の先輩である武を思い浮かべた。しかし今の女神の言葉により希望も得た。
啓介は死後の世界、つまり異世界があるという話に希望を得て元の精神状態にもどった。最初の女神の言葉により自分の存在がなくなり真っ暗な世界でも閉じ込められるんじゃないかと不安がってたからだ。
異世界あるという希望を得て冷静な判断を取り戻した啓介は自分の前にいる美しい女神のギャップに今更驚くのだった。
「もう全部教えたからどんな種族の亜人に生まれるか決めて」
「それって決められるんですか?」
「そうよ、それとも私が勝手に決めてあげようか?」
「いいえ、自分が決めます。どんな種族があるんですか?」
女神の話によるとこうだ。
主に人間のように大多数の人口を補うのが妖精族と獣人族だという。妖精族は羽がある以外人間と変わらない。
獣人族は人間界の動物と人間を融合した亜人らしい、例えるならバニーガールや猫耳娘などだろう。
そのあとバンパイア族とサキュバスを説明してくれた。
サキュバスに転生すれば女になって男の精気を吸って生きていくらしいが啓介は転生しても男になりたかったのでサキュバスとして転生するのは論外だった。
バンパイアは基本能力値が他の種族よりはるかに高いし回復力が高いため平均寿命も300歳くらいの長寿のことだった。女神の一番のおすすめらしいのだ。
他の種族は面倒いから説明したくないらしい。なんて捻くれた女神何だろ。
転生してから一生が決まる大事な選択だったため啓介は迷うのだが女神が嫌そうな顔をしながら催促した。
「早く決めて、速くしてよ。」
「じゃおすすめのバンパイア族にします。」
「分かった。ひひ」
女神は何故か分からないが悪魔のように笑みを浮かびながら魔法を使った。
その瞬間啓介の体は徐々に空中に浮かびどこかへ飛んで行った。
目が覚めたらどこをどう見ても西洋式の便器に座っていた。何で便器の上に転生させるんだあの女神とか思いつつも便器の上に座ってる場合じゃないと思い便所から出る。便所から出てバンパイアになった自分の姿を見るため洗面所に向かい鏡を見る啓介だった。
啓介の目の前には金髪の髪で赤い瞳をしたイケメン警察官が立っていた。そうそれは自分自身だったのだ。
啓介はまだ知らないがこの星でバンパイア種族は地毛が金色で瞳の色は赤なのだ。
啓介は地球にいたころはイケメンじゃなかったため今の自分の変わりさに自分自身に酔っていた。
啓介がトイレで鏡を見て夢中になっていた時、女の子の声と共に猫耳娘4人が入って来た。
そう、啓介が転生した場所は女子トイレだったのだ。女の子達は痴漢でも見たように「変態よ、誰か来て」と悲鳴をあげた。その瞬間近でにパトロールをしてた狼男である警察が走って来た。
啓介は言い訳する間もなく狼男警察に拘束され連行された。
その光景は地球の警察官が異世界の警察官に手錠をつけられ連行される姿だった。
「俺は女子トイレだと思わなかったんだよ。」
「言い訳も言い訳らしくしろ、女子トイレ入って女子トイレだと思わなかったと言って罪が許されたら
俺は女湯に毎日入るぜ!」
この世界で言葉が通じることに不思議と思う啓介、しかし話が通じるのであっても狼男警察官の言葉に返す言葉もなかった。
地球にいたころの啓介ならすぐ言い返せただろう。
この星に転生された人間は地球での能力値と真逆になるのだ。つまり高校を卒業してすぐ警察になるくらいの頭の良かった啓介は知能が低くなったのだ。知能が低くなったとしても一般人なみだけどそして努力しだいじゃ知力も上がる。
狼男に連行されてくる途中啓介がバンパイアだと気づき何やら驚いた様子だった。
狼男が自分がバンパイアだと気づいてからの反応と町の周りの大半が妖精と獣人であるところをみてバンパイアが珍しいのかと啓介は思った。
そして計介は狼男により連行され警察署の檻に入れられた。三日後には釈放されるらしい。
女神によるものだが仕方なく三日間待つことにする啓介だった。
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「ははははっはぁ」
女神は天界の自分の部屋でお菓子を食べながらテレビで今の啓介を見ていた。
彼女は今の啓介の状況を見ながら爆笑していたのだ。啓介を女子トイレに転生させたのはもちろん彼女の仕業だった。どこをどう見ても彼女は他人の不幸を笑うドSだった。
「はははは、面白すぎでしょ、警察官が命かけて人助けをして死んだあと、転生されたどたん性犯罪者扱いされ檻の中に入れられるなんて、傑作だわ」
女神が爆笑していた時啓介は檻の中で自分が何でこんな目にあっているのかを考えていた。
(何で俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ。ただ今まで正義を貫き生きて来ただけなのに
そんな俺が何で、そうだ、そうだ、これは全部あの女神のせいだ。あの女神いつか復讐してやる。)
啓介は檻の中で不味い飯を食いながら女神への復讐を決心する。そんな時気が付いた。
女神から聞いた最後の言葉、それは魔王を倒せば神達が願いを一つなんでも叶えてくれるということ
啓介は魔王を倒して女神への復讐として女神を自分の奴隷にすることを思いついたのだ。
「俺は必ず魔王を倒してやる。」と啓介は檻のなかで叫んだ。
三日がすぎ啓介は釈放された。そしてギルドまでの道を警察に聞いた。どこのギルドかと聞かれたが知ってるギルドなど一つもなかった啓介は一番近いギルドの場所を聞いた。
啓介はマンガ好きだったのでこの辺のファンタジー世界でどうすればいいかくらいは分かっていたのだ。
警察署から出た啓介は教えてもらった方向に向かい始めた。
ギルドまでの道を歩きながら観光でもする気分で周囲を見るがマンガによく出てくる異世界である中世風だった。多分魔法があるから科学が必要がないんだろう
ずっと歩いていた時遅れて気がつく啓介、周りの人達が自分に対して警戒する視線を送るのだ。
男達は敵意を抱く目で、女の子達は怯えながら女の敵だという視線を送る。目の前に性犯罪者がいるかのように。
その理由は啓介が金髪で赤い目を持つバンパイアだからだ。この世界でバンパイアは全種族を敵に回し戦争に敗れ滅ぼされたという。何故ならバンパイアの男達が自分たちのスキルを使いどんな種族でも関係なしに女の子達を虜にして女遊びをしたからだ。それで全種族を敵にまわしたバンパイア達は強い力で耐えるが数に負け殺されたのことだ。
つまりバンパイアの男は女遊びが大好きな者だと認識されている。
あのドs女神がバンパイア族として転生をおすすめしたのはそれが狙いだったからだ。
その戦争は100年前に起きたらしい。女性のバンパイアも戦争に巻き込まれ死に今となってはバンパイア族は啓介一人だということだ。
しかし法律による啓介の身の安全は大丈夫なハズだ。戦争が終わって男のバンパイアは滅ぼされたと思いバンパイア男の退治や死刑などの法律は作ってなかったからだ。つまりバンパイアである啓介を殺したら殺人罪になるのだ。無事に檻から釈放できたのがその証明である。
何も知らず啓介は敵意丸出しの視線を浴びながらギルドまで無事に着いた。アルカナと看板に書いてあった。このギルドの名前のようだ。早くも冒険者になり魔法を使ってみたり仲間と楽しく冒険をしたかった啓介は何の躊躇もなくそのままギルドの扉を開き入っていく。
ギルドの中には冒険者手続きの窓口と隣にはクエスト板があった。その横ではテーブル席が並んでおり
そこで冒険者達が酒を飲んでいた。しかし啓介が入ってきた瞬間冒険者達は飲むのをやめて啓介に視線を集めた。
訳の分かんない視線を無視して冒険者手続きの窓口に向かう。そこで働いていたのは兎人族であるウサギの耳と尻尾をした女の子がいた。兎人族の女の子は白い肌で巨乳を強調したような胸の谷間が見える服と下はミニスカートと黒いストッキングを履いていた。その女の子の服装は高校の時から真面目に勉強だけしてきた女と縁のない童貞の啓介には刺激が強かった。
それで興奮した啓介はテレながら兎人族女に「あの、すいません、冒険者の手続きをしたいのですが、」
と声をかけながら彼女の胸元を見つめた。兎人族の女の子は涙目になって一歩一歩後ろに下がった。
啓介は自分が彼女の胸元を見ているから嫌がってるのかと思い胸元から彼女の顔に視線を変えた。
しかし彼女が怖がっているのはバンパイアである啓介の存在そのものだった。
「もしかしてバンパイアですか?」
「そうですけど」
「そんな馬鹿な、バンパイア族はすべて絶滅したんじゃ」
怯えてる兎人族の女の子に何の話か聞いたら2メートルくらい離れた場所から説明してくれた。
その説明により啓介はやっと自分が置かれている状況に気が付き戸惑い始めた。
その時4人の男達が扉を開け入って来た。その4人が入って来るととたんギルド内の雰囲気が変わった。兎女も含めギルド内の全員が救世主でも見たように目をキラキラしていた。その4人の中で一人が啓介に近づきいきなり顔面を殴るのであった。
何故殴られたのかも知らず啓介はバランスを保てずに転ぶ。その光景を見ていたギルドにいた全員は英雄により悪が倒された瞬間のように喜んでいた。
「おい、お前、何で俺の女泣かせてんだ。死にてぇのか?」
「誤解だ、俺はただこのギルドに冒険者登録をしにきただけだ。」
啓介を殴った男は起き上がる啓介の髪と目を見て一瞬驚く。そんな彼に隣の兎人族の女の子が
啓介がバンパイアだと告げる。彼に告げるその兎人族女の口調は啓介がバンパイアだから早く殺してという意味が込められていたように啓介は感じた。
「こいつマジでバンパイアだわ。でも昔の話とは違って弱いな、それとも俺が強すぎたのか、ははははは」
4人の男達は啓介の言い訳など聞かずにギルドから出て路地裏に連れて行った。
そして啓介を殴って倒して踏みにじった。
その光景はチンピラが警察官を暴行しているようにしか見えないだろう。
「誰か助けてください。」
「しゃべるな、警察が来るだろう」
ギルドの中で啓介の顔面を殴った男が助けを求める啓介の口を蹴った。その男の足が啓介の口の中に入った、そして上の歯が三つ、下の歯が三つ、合わせ六個の歯が抜け落ちた。
しかし口の中に足が入って悲鳴すら上げられなかった。
「こいつ歯が抜けちゃったぜ、バンパイアなのに前歯なしでどう血を吸うんだ。」
「「「「ははははははっはあっは、面白れぇ」」」」
(なんだよこれ、俺が何をしたというんだ、ただ死んで転生されただけじゃないか、それなのに
何でこんな目にあってるんだ。あそうか、あの女神か、そうだな、おのふざけた女神が仕組んだことか
復讐してやる。復讐してやる。復讐してやる、こいつらも全員殺してやる、殺してやる。)
啓介は今自分をいじめながら遊んでいるこいつらとこんな状況を生み出した原因でもある女神に対する復讐心が芽生えてきた。その感情はもう警察官じゃなく犯罪者だと思えるくらいの邪悪な感情だった。
「そこまでよ」
「誰だ」
啓介がリンチされてる時路地裏の入り口から男の声が聞こえた。男達4人は啓介から声の主の方に目を向けた。倒れていた啓介は力を踏み絞りチラリとその声の主を見る。
入り口の前には全身に黒いマントを纏い顔も体も見えない怪しい男が立っていた。
その姿はまるで路地裏にいる自分達を殺しにきた死神のようだった。
その見た目とは裏腹に「警察よんだから直ぐくるわ」と啓介をリンチしていた男達を脅した。
「ちくしょう、おい、お前ら逃げるぞ」
啓介をリンチした男4人が野良猫のように逃げていった。黒いマントを纏い死神のような者は啓介の方に
歩いてきた。まるで魂を奪いにきたように。しかし啓介はそうは思わなかった。何故なら自分の命を助けてくれた命の恩人だからだ。啓介は女神に捨てられ死神男に助けられる自分の状況をみてこの世界はどうなってるのかと思った。
「君立てそう?」
「はぁぁぁいい」
啓介は立ち上がろうとするが力が抜けちゃって地面に膝をつく、立ち上がる力も残ってないくらいひどくやられたのだ。死神男はポケットから手帳を取り出し「マントアピーア」と詠唱した。その瞬間手帳から黒いマントが出てきた。そのマントを啓介に被せ啓介の腕を自分の肩に寄せて歩き始めた。
啓介は死神男が見た目は怖く頼もしいけど体は細く身長も小っちゃいなと思った。そして少し前まで思っていた復讐心や殺意などの感情が清らかに浄化されていった。知り合いでもない自分をこんなに必死に助けてくれる人もいるんだなと思えたからだ。もしあそこで誰の助けも無かったら啓介は死んだか、生き延びたとしても人間性が邪悪に変わったかもしれない。そんな自分を助けてくれた彼に歯が抜け落ちて喋りずらくってもお礼を言いたかった。
「たそけってぐくれれてあぁりかととうございみゃっす」
「しゃべらなくっていい、黙ってて」
死神男は歯が抜けてまともにしゃべれない啓介を黙らせ路地裏から出てどこかへ向かっていった。
途中で啓介は意識をなくし眠ってしまった。
20分くらい歩き少しぼろい建物に入った。どうやらそこは死神男が泊っている宿だった。
その宿は2階建てで浴室とトイレ付きのワンルームだった。
死神男は意識を失った啓介を背負い2階の自分の部屋に入り啓介をベットに横たえた。
しかし死神男の肩からベットに落ちた衝撃で啓介は目を覚めた。
(ここは、どこだ。)
「目が覚めたか?」
「はぁあぃ、いてぇえぇぇ」
「ちょっと待ってろ。」
死神男は机に置いてある針を掴み自分の左手の人差し指に刺した。彼の人差し指からは血が出始めた。
そのまま彼はベットで横になってる啓介に近づいた。
「舐めろ。」
「はぁぁ」
死神男は血が出てる自分の一刺し指を舐めろと啓介の目の前に近づける。啓介は最初(このひと何言ってんの)と思ったのだが血を見た啓介は頭では理解できなかったがバンパイアの本能で血が出る彼の指を舐め始めた。まるで赤ん坊がママの母乳を吸うように無邪気に吸う啓介だった。
「もうちょっと優しく吸って、そんなに激しく吸ったら、、あぁ、、」
夢中に血を吸ってた啓介は一瞬女の子の声音を聞いた気がして血を吸うのを止め周りを見た。
しかし周りを見ても死神男以外誰もいなかった。殴られ過ぎて幻聴でも聞こえてきたと思う啓介だった。
(幻聴か、まぁこの部屋には死神男と俺しかいないもんな)
血を十分吸い終えた啓介は体が激痛と共に体が熱くなっていった。その激痛と共に傷口も治り折れた歯も再生した。死神男の話だとバンパイアの固有スキルである超高速再生という。相手の血を飲んだら体の回復と共に再生するらしいのだ。啓介は初めてバンパイアに転生して良かったと思った。そもそもバンパイアに転生しなかったらこんな目にもあわなかったのだが。
「もう話せるでしょ、君に聞きたいことがあるの。」
「はい、何でしょ。」
「君のその服は日本の警察官の制服ではないのか?」
「何でそれをもしかしてあなたも」
「そうだ。私も日本からこの世界に転生した者だ。」
啓介と同じ日本から転生したという死神男は啓介の死ぬ前までの過去を聞いた。
そんな彼に自分と同じ境遇の人だと思い相談相手として啓介は今までの生き方や何で死んだのか、
そして女神に会って転生してからどんなことが起きたのか全てを話した。
啓介の話を聞いた死神男は自分もシルビアという女神に大変だったと教えてくれた。
「大変だったね、私も最初そのシルビアという女神からこの世界に送られて大変だったよ。」
「あなたもその女神の手でこの世界に、」
啓介の今までの真面目な人生の話を聞いた死神男は啓介に対する警戒を解け自分の過去を話し始めた。
彼は死ぬ前には17歳のJKだったらしい。しかし地下鉄で路線に落ちた幼い女の子を身を投げ助けて死んだらしいのだ。それからその女神のところに行って、エルフとしてこの世界に3か月前に転生したというのだ。
彼女自身は女神から聞かされてないがエルフに転生するには10回ほど転生しても綺麗な心を保って死んだ人にしかなれない。何故なら神と同じ永遠の若さと寿命、そして綺麗な容姿を持つため神達が作ったルールだという。
「じゃあなたは男性じゃなく女性ですか?」
「そうよ。」
死神男は被っていた黒いマントを脱ぎ捨てマントの中に隠していた本当の姿を現した。
身長は160㎝程でエルフの耳と長い銀髪の綺麗な髪、その銀髪と不思議と似合う白い肌と整った顔、正真正銘の美少女エルフだった。そんな彼女の姿をみて啓介は一瞬脳が停止したように見惚れちゃった。
それと同時に彼女の声が何で男の声なのか疑問が生じた。それもそのはずだ。マントの中にいる彼女を男だと認識していたのは彼女が出していた男の声のせいだったからだ。
「あの何で声が男の声だったの、もしかしてあのシルビアという女神の仕業?」
「違うわよ、声を変える魔法薬を飲んだからよ、ちょっと待てて元の声に戻すから。」
彼女はポケットから手帳を取り出し注文を唱えた。そしたら薬が入った瓶が現れた。彼女はそのポーションを飲み終え元の声に戻り啓介を見つめた。
「自己紹介がまだだったね、私は白石エリ、君は」
17歳だと啓介より2歳年下だ。そんな彼女が自分を弟のように見下す言い方をするのが納得がいかなかったがしかし転生してからは彼女の方がここでは先輩だからと啓介は別にいいかと考えた。
「俺は大和啓介、よろしく、エ、エ、白石さん」
「呼び捨てでいいわよ、転生したのが私が先輩だけど、生きてた頃は啓介の方が年上だったし
お互い呼び捨てでいいじゃない?」
「分かった、エ、エ、エリ」
マントを外してから彼女の性格の変わりさと見た目に頭が追い付いてない啓介、しかし正直な自分を見せてくれたことと自分への警戒を解いてくれたことがとても嬉しかった。何よりも自分と同じ境遇の人が隣にいるのが嬉しかった。同じ境遇の人、それは同時に彼女にも転生してから辛い生活を送ったのだろう心配にもなった。
啓介が読んでた異世界物語のマンガなどにはエルフは嫌われ者だという設定が多かったためだ。
この世界でもエルフという存在は邪悪な魔女などと呼ばれているのだ。
その理由は昔強い魔力を持った一人のエルフが堕落しダークエルフになりテロを起こしたのがきっかけだった。
「失礼じゃないと聞きたいのだが」
「なんでも聞いていいよ」
「君がその黒いマントで姿を隠していたのはエルフに転生したからなのか?」
エリは啓介の質問とともに転生してからの今日までの生活を語り始めた。
啓介の予想通りエリがマントで姿を隠していたのはエルフの自分を隠す為だった。
エリは転生してから町の住民から変な視線を浴びたという、そしてそれは自分がエルフだということに
直ぐ気づいて他の亜人とは違う耳を隠して暮らしていた。それに女だから舐められないように声も変えて
黒いマントを被り男装をしていたという。そしてそんな自分をギルドなどで仲間として迎えてくれるはずもないと判断しギルドには入らず一人でダンジョンに入り弱いモンスターを倒しながら金を稼ぎ貧乏生活をしていたとのことだ。
暇な時はこの世界の知識を勉強するため図書館で本を借りて読んでいたという。その時本で見かけたバンパイアの知識があって啓介に血を吸わせたのだ。
啓介は自分よりも年下なのにそこまで判断して3か月間を送ったのことに感嘆した。何故なら自分は転生したどたん何も考えず死にそうになっていたからだ。
「エリは頭がいいんだね、その判断力と対応力をみると」
「私、死ぬ前は頭悪かったからね、だからこの世界に転生しては知能が高くなったみたいなんだ。」
「俺はその逆だけどな、あ、いいこと思い出した。」
エリの声を変える魔法薬を見て何か思いつく啓介、それなら髪を染める薬やコンタクトのように目の色を変える物も存在しないかということだ。それは知能が低くなった啓介が考え出したほどの今の自分の状況を打破する当たり前のような選択肢である。
しかし科学が発達してないためコンタクトは存在しないのだがサングラスはあるらしい。髪の色を変える魔法薬はあるが他の亜人達も好みの髪の色に染めてるので髪を染める必要はないという。だからエリも銀髪を染めなかったのだ。
「これからサングラスかけて暮らすしかないのか、人種差別なくす方法何て存在しないだろうな?」
「いや、一つだけの方法がある」
「方法?」
「私が強くなり強い仲間を集めギルドを設立するの、そして魔王を倒し差別がない世界になるよう願うの」
啓介はこんな状況に陥っても希望を失わずに目の前の美しい未来を見るエリの姿がとても眩しかった。
それに比べ自分は女神への復讐だけのため生きようとしたのが情けないと思った。しかし考えを切り替えることはできなかった。何故なら自分はともかく、こんなにも優しい女の子にすら自分の楽しみの為イタズラをしたことに我慢ならなかった。しかしそんな本音を真っすぐな目をしているエリに言ったら信用を無くすと思った啓介。
そして命の恩人である彼女の為何かしたいと思った。
「俺も協力するよ。君は俺の命の恩人だ。俺を君のギルドの最初の仲間として入れてくれないか?」
「ありがとう、啓介がいてくれると私たち強くなれるよ、バンパイアは戦闘力が強いし、エルフである私は魔法能力が強いから最高のコンビに成れるよ。」
「その知識、めっちゃ勉強したようだね。」
「ひひひ。」
エリは自慢げな笑みを浮かび何か楽しそうに見えた。啓介はそんな彼女をみて自分がバンパイアに転生して2回目(1回目は自己再生の時)でよかったと思った。それはずっと寂しげに正体を隠して一人で生活をしていた彼女の仲間になれることが出来たからだ。そんな彼女が楽しそうに笑ってる姿を見て啓介も微笑んだ。
「何で私のことみて笑うのよ」
「何でもないよ、ただ仲間ができて嬉しくって。」
「私も、これから魔王を倒すため頑張ろう。」
「あ、もう一度よろしくな」ぐるる~~~~~
「ふぅ腹減ってるみたいだね、何か作るから待ってて。」
エリは啓介の腹から鳴る音を聞き台所に向かった。そして冷蔵庫のような箱から食材を取り出した。箱の中には冷気を出してる透明な原石が一つ入っていた。エリの言葉によるとその原石は氷属性の魔物から出てくる氷の原石らしい。その氷の原石の効力は1か月は持つとのことだ。魔石と呼べるものだ。
エリが料理してる間、啓介はベットに座り後ろから料理をする彼女を眺めていた。そして彼女の美しさに見惚れながら料理が終わるまで待っていた。
料理を作り終えた彼女が料理が入った皿をもって振り向いた。その瞬間目があった啓介はテレて視線をそらした。
そんな啓介が可愛かったのか彼女は微笑む。
二人は食卓を囲んで食事をしながら話をした。
「エリ」
「うん、何」
「俺がやられていた時、君があそこにいたのは偶然だったの?」
「違うよ。町で絶滅したはずのバンパイアが現れたと大騒ぎだったんだよね。それでもしかして私と同じ転生した人じゃないかなと思って探してたんだよ。その時啓介君の助け声を聞いて行ったわけ」
「そうだったんだな。ありがとう、君が来なかったら俺は転生したどたん死ぬとこだったよ」
「困ったときはお互い様さ、私も啓介の噂を聞いて仲間が現れたようで嬉しかったよ。」
食事をしていたエリはずっと笑顔だった。その笑顔を見るたび啓介は彼女からの寂しさを感じて心が少し痛かった。そしてこの子には二度と寂しい思いはさせないと決心する。啓介は自分も分からない内にエリに恋心を抱いてしまったのだ。命を助けてくれた優しい美少女に童貞の男が惚れちまうのも無理はないだろう。
二人は食事を終えお礼として啓介が洗い物をした。その間エリは風呂に入る為押し入れから下着と寝間着を取り出し浴室に向かった。
「覗かないでよね」
「誰が覗くか俺は年下の子供には興味ないんだよ、お前自意識過剰だろう」
女の子に慣れてない啓介は何て言えばいいか分からなくって口にもないことを言ってしまった。
啓介に子供扱いされ少し怒った顔をしながら風呂に入るエリ、啓介は浴室から聞こえてくる音でエリが体を洗う姿を想像しながら興奮して勃起してしまう。
時間が少し経ってお風呂上がりの彼女が浴室から出てくる。啓介はお風呂上りの寝間着姿のエリを見て恥ずかしくって目をそらす。女の子と手も繋いだこともないのにいきなりお風呂上がりの女の子の寝間着姿をみたら目の置き場所が分からなかったのだ。自分を子供扱いした啓介のそのような反応が面白かったのかエリは揶揄うことにした。
「啓介照れてる、可愛い」
「テ、照れてないし」
「さっき年下の子供に興味ないとか言ってたくせに、」
「俺お風呂に入るから」
啓介は揶揄うエリから逃げてお風呂に入った。裸になって自分の体を見て自分の再生能力の凄さを思い知る
風呂に入り悪くなった頭でこれからどうするかを考えていた。結論は自分の命の恩人であり、最初の仲間であるエリと魔王を倒して彼女の願いを叶えることと自分の願いであるふざけた女神への復讐をすることだ。
「そのためでも早く強くならないと」
何時の間にか長風呂してたなと思い着替えて浴室から出てくる。
「お風呂、ありがとうな」
部屋の光が消えエリからは何の返事もなかった。ベットの上で寝ていたのだ。ベットの横の床には布団が敷いてあった。エリが寝る前に啓介のため用意しといたのだろう。啓介は幸せそうに眠ってる彼女の布団を掛けなおしてあげた。
「ありがとうな、君に救われた命君は俺が必ず守ってみせる」
寝てるふりをしていたエリは彼の気持ちがこもった正直な感謝の言葉を聞いて揶揄うことも出来ず寝てるふりを続けた。エリが寝てるふりをしていた目的は啓介が本当に信用できる人かどうか確認するためだった。もし寝ている自分に変な事をしたら魔法で攻撃して啓介を宿から追い出す気だったのだ。つまり完全には啓介を信じてなかったのだ。しかし今の啓介の言動によりエリは信用できる仲間に会えることが出来て嬉しかった。そんなエリの目的と気持ちも知らず、啓介は暗闇の中で目が見えることに気づいて本当にバンパイアになったんだなと思いながら床で寝た。
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