始まりだけではなく
耳に聴こえる壮大なBGM、そして目の前にひろがっていくイベントシーン
前から近付いてくるホビット3人組、セー ジから見たら胸より下に顔がある
「今度こそあのデカブツを華麗に狩ってやる!」
真ん中の剣を背負ったリーダー風の皮鎧に身を包んだ男の子が意気込みながら狩りの獲物を提案(?)した
「えー?まだサンドトータスに拘ってるの?あれ甲羅堅くて時間かかるじゃん、サンドラットやサンドラビットをサクサク狩ろうよ」
その提案と言えない提案を跳ね除けるのは弓を背中に担ぎ短剣を腰にぶら下げたこれまた軽装の狩人風の男の子
「そだねぇラットやラビットのがやーらかくてドロップも肉で美味しいしさぁ」
狩人風の男の子の意見に賛同しつつ魅力点を付け加えたのはややふくよかな感じだが神官風の装備で揃え片手杖を装備した男の子
そしてセージの前で立ち止まった3人組
「ヤーもターもこの前カメ倒したら経験値もドロップも美味しいって喜んでたじゃないかっ!」
旗色が悪くなってきたのを感じたのか慌てて身振り手振りを交えて反論をするリーダー
「ウーはその両手剣で斬りつけてもなかなか死なないカメでレベル上げついでにスキル上げがしたいから選んでるだけだよね?」
ズビシっ!!って効果音が聞こえてきそうな指差しをウーに向けながら意見を述べるヤー
「ソ、ソンナコトハナイデスヨ。フヒー」
両手を頭の後ろで組んで口笛を吹くウー
「いや、吹けてないから。それに前倒せたのだってターの回復魔法と補助魔法がMP全快だったから出し惜しみなく使えたのと、俺のとっておきである属性矢を使ったからでとても連戦なんか出来ないよ」
確かにカメことサンドトータスは経験値は美味しいし、ドロップで甲羅が出れば実入りもデカイ。ただし倒すのに現在のウーヤーター3人組では総力戦でかつ虎の子の属性矢も使うとあっては下手すれば赤なのである。ちなみにこのゲームの経験値は自分のレベルと倒したモンスターのレベルに相対的なもので計算される。同じレベルだと100入り1レベル上下で2割が増減する。
「そだねぇ…だったら最初はヤーの言う通りラットやラビットでやって、街に帰る最後の一戦はウーの希望であるカメにすればいいんじゃないかな?そうすれば属性矢も一戦だけだしそこに至るまでにラットやラビットで経験値やドロップ稼げてるだろうしね」
ターの二人の意見をまとめた建設的な提案である。
(まぁ落とし所はここだろうなぁ)
「よしっ!ターの意見に乗った」
最後とはカメと一戦交える事が確定してるわけだから乗らない手はない
「ターもウーには甘いんだよなぁ、はぁーっ一匹だけだからね」
ため息混じりながらそれでも了承する辺り十分ヤーも甘い
「それじゃ改めてしゅっぱーつ!!」
ウーが握り拳をつくった右手を挙げると
「「オーっ!!」
ヤーとターも同じように右手を挙げた
歩き出した3人組はセージの横を通り門へと消えていく
「オマエノオカゲデタスカッタ、レイヲイウ」
先程の3人組が消えていった門からセージの方に近付いてくる2人組。1人は声の主であるドラゴニュートもう1人はフェアリー。どちらも初期から選択できる種族である。
「いえいえ私の方こそライオットさんの戦闘力がなかったらあれだけのモンスター狩れてませんよウ」
そう言いながらパタパタを羽根をはためかせライオットと呼ばれるドラゴニュートの顔の高さでホバリングをしながら頭を下げてそういった。
「エアニソウイッテモラウトコウエイダナ、ヤハリギルドデハナシカケタノハマチガイデハナカッタ」
右の口角を上げながらライオットも頭を下げた。
「それにしてもライオットさんの槍捌きは凄かったわぁ、味方ながら敵に同情するくらいヨ」
ライオットの背中にある三又の槍を見ながら感心したように肩をすくめてエアは言った。
「ソレヲイウナラエアノマホウモワレラシュゾクデハカンガエラレナイイリョクダッタ、ヨケレバコレカラモパーティヲクンデクレナイカ?」
頬をポリポリと掻きながら提案するライオット
「そんな魅力的な提案なら喜んデ、更に回復職や前衛増やせばもっと安定するでしょうしギルドで勧誘致しましょウ」
エアにとっても願ってもない提案だったらしくさらなるパーティの戦力底上げも提案していった。
「ソレデハギルドヘ」
「ええ、凱旋ヨ。私達がパーティを組むと聞いて笑ってたあのヒューマンを見返してあげましょウ」
そしてギルドに向けて歩き出す二人。
ヒューマンに幸あれと祈りたくなった。
そして雑踏を行き交うNPC、子供達も元気に走り回ってる。
「いい光景だな、俺もあんなパーティ組めるかな?」
誰に聞かせるわけでもないセージの呟きは雑踏に消えるはずだった。
「大丈夫ですよ、ここは始まりの街でもあるんですが出会いの街でもあるんですよ」
ふと隣から声がするのでそちらを見るとエルフ族の美女が立っていた。
「えっとあなたは?」
呟きを聞かれてた恥かしさもあったのかちょっと小声で尋ねた。
「うふふ秘密です。またお会いできますわセージさん」
日の光に照らされて光る金髪の髪に整った顔は悪戯っ子のような笑顔になっていた。
そしてその笑顔を最後に街の風景が先程の風景に戻った。どうやらイベントシーンが終わったようだ。
「さてと、では本当の意味での第一歩いきますか!!」
俺はそう気合を入れて街中への第一歩を踏み出した。
いつもよりちょっと長めになります。いつも見て下さってありがとうございます。本当に遅々として進んでませんが気長に見て下さいませ。