チュートリアルには意味がある
パーティを組んで平坦な道をキーオさんの足を気遣いつつゆっくりとした足取りで話しながら歩く。
「手伝いが欲しかったのはわかるんですが何故私が街に向うところだとわかったのですか?」
疑問に思ってたことを尋ねてみると、
「あぁ確かに何故わかったか言われた方には謎ですね。実はですね」
と、いろいろ種明かしをしてくれた。
キーオさん曰く最近俺みたいに街と海岸を結ぶ道の真ん中に現れてはお上りさんよろしく状態の 人間が増えてるらしい。そうやって現れた人間はまずは街に立ち寄る事になるのだから街の中の住民達が居合わせた場合はなるべくクエストを発注して街までの道のりを同行するらしい。
「何故住民の方々は私達みたいな人間に同行して下さるんですか?街は目の前に見えてるし道も一本道なのに?」
話を聞いて新たな疑問がわいたので尋ねると
「確かに話だけ聞くと理解し辛いでしょうね、ほらあれを見て下さい」
そう言って指差した方には街の門が見えてきた。石造りの門で外壁と一体型になっておりその高さは現代日本で言うところの10メートル程の高さ(だいたい3階くらい)で街の周囲を覆っている。その端は見えず始まりの街と聞いてた割になかなかの規模を誇る街に思える。そして高さ5メートル幅10程の門扉の両サイドには街の規模に見合った衛兵がいた。
「これはまたしっかりとした外壁に囲まれた上に屈強そうな佇まいの衛兵さん達が居ますね」
顔は見えずとも身体から発するオーラというか迫力が滲み出てるように感じた。
そんな素直な感想を述べると
「まぁ彼等はこの街を護る最初の要でもありますし、何よりセージさんのご同輩である冒険者の方々や我々のような戦闘力を持たない住民がモンスターの処理を誤ったり襲われたりして街の近くに連れてきてしまった場合は彼等が処理を行う事になりますのでかなりの戦闘力を持ってないとゲートキーパーにはなれません」
どうやら冒険者がピンチに陥って"help"コマンドを使用した場合、ある一定の距離以内であれば救援して貰えるみたいだ。勿論ゲートキーパーの挙動はNPC毎で違う為毎回同じタイミングとも限らないらしい。
「いつもお勤めご苦労様です」
まだ肝心の答えを聞いていないなって事を考えてるうちにキーオさんがゲートキーパーに話しかけてた
「おお、これはキーオさ…「ごほん」ん外に出てたんですね。おやそちらの方は?」
一言で言えば声を発した彼の外見は厳つい、だがやはり研鑽を積んでゲートキーパーになってるだけはあるのだろう外見からは想像もつかない丁寧な受け答えを目の前にいるワータイガーのゲートキーパーはしてくれた。銀毛でかつ巨大な体軀背丈は2mを超え幅もガッシリした体型をプレートアーマーで包んでいる。腰にはセージが扱うとしたら両手剣扱いになりそうな大きさの剣を腰に身に付けていた。
「初めまして冒険者…見習(まだ成れてもいないなそう言えば)のセージと言います、キーオさんにクエストを依頼されてここまで一緒に来ました」
しっかりと要点をまとめて挨拶はしたつもりだが
「ええ私が困ってた所に通りがかってくれたセージさんにクエストを依頼して一緒に来た訳なんです」
キーオさんからも同様の内容を述べると
「なるほど〜本来なら初訪問で身分があやふやな者ならいろいろ話を聞くところなんですけどね〜、この街の住民のクエストで同行してる者なら一緒に入って頂くのが道理ですね〜」
語尾に特徴があるワータイガーさんの相方はヒューマンタイプの女の子(?)。栗毛色の長髪に美人と言って差し支えないフェイスとワガママボディをブレストプレートで抑え込んだゲートキーパーさんがウンウン頷いている。
(ああ、これが住民がクエストを依頼してくれてる理由か)
得心がいってキーオさんの方を見るとウインクしてからにこやかに笑ってくれた。どうやら正解だったようだ。
「それでですね、私がこんな状態ですので少し詰所で休ませて頂きたいと思ってます。その間にセージさんに引き続きクエストをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」
改めてのキーオさんからのクエスト依頼を断る理由もなく
「喜んで!」
また元気よく右手を差し出した。
ちなみにクエストを受けずに街に着いても中には入れない仕様になっております。困っている住民を見捨てるようじゃっ…一つの人間性テストも兼ねてる感じですかね。