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第一章 ~ただ信心を要とすしるべし~

【私訳】

 阿弥陀如来(あみだによらい)というのは、オレら人間の常識では正しく分からないよ。

 けれども信じられるか?

 阿弥陀さんは(ちか)ってくれたんだ、オレらみたいなどうしようもないヤツも含めて、全員、全部のいのち絶対救うって。

 そんな不思議な願いに助けてもらうしかないんだよ。

 おまえが本当に欲しいものは何なんだ?

 金か? 名誉か? 地位か? 友達か? 家族にすがるか? 健康が大事か?

 それらはみんなちっともアテになりゃしねえ迷いだよ。

 もっと欲しいって執着するから苦しいんだ。

 アテにならねぇモノをアテにしようとして、必死こいてがんばって、そして「ちっとも思い通りになりゃしねぇ!」って泣き叫ぶんだよ。

 そんなことに費やすためのオレらの人生だったのか?

 そうだとしたら、悲しいな。

「違う!」って叫んでも、自力でやめられないから辛すぎる。

 そんなどうしようもないオレたちが、はるか昔から支えられていたんだよ。

「心配すんな、大丈夫だ。

 おまえのいのちは尊いよ、たった今それでいいんだよ。

 すべて任せ、我が名を称えよ。必ず救う」

 そう如来に願われていたんだよ。

 どでかい慈悲(じひ)に絶対的に肯定(こうてい)されていることに気付いたか?

大悲(だいひ)」ってんだ、覚えとけ。

 生きる道にもう迷いたくないんだろ?

 老いや病苦が問題にならない、死ですら尊いと思えてくる、そういう迷いのない真実世界が欲しいんだろ?

 それがおまえが本当に欲しいものなんだろ?

浄土(じようど)」ってんだ、覚えとけ。

 阿弥陀仏がオレらのために建立したんだ、忘れるな。

 はてしない時間修行して、苦労して建立してくれたんだ、感謝しろ。

 そういう絶対安心の世界へ往生()まれさせてもらうんだ、って、阿弥陀如来にまかせてみ?

 そしたらよ、勝手に手が合わさって頭が下がってくるんだ。

 感じるか?

 あらゆるいのちを(すく)い取って捨てないという、如来の願いを。

 振るえたか?

 こんなどうしようもないオレらが救われるんだぜ?

 気付いたか?

 おまえの口からもう出てる。「どうかたすけてくれ!」ってな。

 ──称えよ、それが「南無阿弥陀仏」の念仏だ。

 オレらはすでに、親父みたいにでっかくて、お袋みたいにあったかい、智慧(ちえ)慈悲(じひ)に無条件に抱きしめられていたんだよ。

 阿弥陀さんは誓ってくれたんだ、オレらみたいなどうしようもない、全員、全部のいのち絶対救うって。

 そんなどでかく深い、暖かい願いが、古今東西、未来永劫、オレたちのためにはたらいていることを理解したか?

本願(ほんがん)」ってんだ、覚えとけ。

 阿弥陀如来の本願だ。

 この本願にな、はみ出すヤツはいると思うか?

 いねぇだろ? まったくいねぇんだよ。

 善人だろうが悪人だろうが、アベもオバマも関係ねぇ。

 どんな人間も漏れなく救う。

 ただ信じたい、救われたい、って思う心だけが大切なんだ。

 おまえは自分のことをどう思う?

 ちょっとマシな方とでも思ってたか?

 阿弥陀さんは「おまえはそれでいい、たった今すばらしい、心配すんな、大丈夫だ」って抱きしめてくれているのに、ちっとも自分に満足できないだろ?

 だからオレらはみんな等しく如来に反抗し続ける罪人だ。

 弥陀の大悲に背く悪人だ。

 そうだと分かっても止められない、我が身を()がし続ける欲望の轟炎(ごうえん)が備わっていることに気付いたか?

煩悩(ぼんのう)」ってんだ、自覚しろ。

 わかっててもやめられない、消し止められない苦の炎だ。

 阿弥陀さんはな、そんなオレらがお目当てなんだよ。

 本願はな、そんなオレらみたいなどうしようもない、全員、全部のいのち絶対救うっていう究極の願いなんだ。

 その願いに救われたいと思ったか? その気持ちだけで十分だ。

 ──称えよ、それが「南無阿弥陀仏」の念仏だ。

 だからそれ以外の努力は必要ない。

 それ以外に、念仏以外にすげぇ方法があると思うか? もうないだろ?

 なあ、もう何も心配すんな。

 何があっても大丈夫だ。如来が必ず救ってくれるから。

 なあ、もう何も泣くな。

 こんな愚かで罪深いオレを阿弥陀さんが抱きしめてくれているんだから。

 なあ、もう何も恐れるな。

 阿弥陀如来の本願を妨げることのできるものは、何もないんだから。


 このことを、親鸞聖人が教えてくれたんだ。




原文

【第一章】

弥陀(みだ)誓願(せいがん)不思議(ふしぎ)にたすけられまいらせて、往生(おうじよう)をばとぐるなりと信じて念仏もうさんとおもいたつたこころのおこるとき、すなわち摂取不捨(せつしゆふしや)利益(りやく)にあずけしめたまうなり。弥陀の本願(ほんがん)には老少善悪(ろうしようぜんあく)のひとをえらばれず。ただ信心(しんじん)(よう)とすしるべし。

そのゆえは、罪悪(ざいあく)深重(じんじゆう)煩悩(ぼんのう)熾盛(しじよう)衆生(しゆじよう)をたすけんがための(がん)にてまします。

しかれば本願を信ぜんには、()(ぜん)も要にあらず、念仏にまさるべき善なきゆえに。悪をもおそるべからず。弥陀の本願をさまたぐるほどの悪なきがゆえにと云々(うんぬん)


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