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プロローグ
―――白くもなれず、黒くもなれず。
この街はモノクロだ。
古びた館の一角。
ツタの絡まった塔の小部屋、白い鳥籠の中に設置されたベッドに腰かけた少女が一人。
窓から吹き込んでくる優しい風に髪を靡かせ、膝の上に置いた絵本のページを捲った。
「ねぇ、クロ。君はどう思う?この街に色が付くなら何色が一番似合うんだろうね」
足元にすり寄ってきた白猫を抱き上げ、自分の隣にちょこんと座らせる。
少女は、にゃあと控えめに鳴いたクロを撫でながら、
窓から見えるいつもと変わらない青い空を見上げた。