表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/12

章前

 藁葺わらぶき屋根の門の内側から、彼女は外の世界を眺めていた。

 門とは言えど、其処そこに扉は存在していない。永き歳月を経るうちに腐り落ち、枠だけが残されているのである。

 何者をも留め置くことの出来ぬはずの、名ばかりの境界。

 だが彼女だけは例外だった。戯れに一歩外へ足を踏み出そうとするだけで、抗いようのない力により引き戻されてしまうのだ。

 それは、彼女が彼女である限り逃れられぬ定め。

 10年の歳月で雛は鳥となったが、いまだ彼女が籠から出ること叶わぬ身であることに変わりはない。


 今頃、自分の良き人は何をしているのだろうか。

 彼女はそれを思い、小さく嘆息する。

 寄り添えぬ我が身の不自由を嘆き、伝えきれぬ我が心の不器用に呆れる。

 ──いつか。

 いつか、気づいてくれるのだろうか。

 彼女は門柱に肩を預けて外を見遣りながら、切なげに小指の爪を噛んだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ