4
彩名はそっと立ち上がりドアの鍵をゆっくり閉めた。
「はい」
トントンっとまたドアが叩かれた。
「誰?」
微妙に喉の乾きを覚える。なんか変だ。ドアの向こうからは何かが動く気配が伝わってくる。そうだ携帯。机にほっぽりだした携帯に飛び付き悠真にコール。でない。何度も繰り返す。やっぱりでない。ドアの向こうからは振動も着信音もしなかった。つまりすくなくとも悠真ではないということだ。じゃあ一体誰だ。親はまだ帰って来てない筈だ。
じりじりと、背中に冷や汗が流れる。
とっ、今までにない勢いでドアが揺れた。どんどんどんっ、続けて何度もドアが揺れる。
まったくもう。鍵閉め忘れたかな。ごちりつつも窓をあけて下を確認、どうやら待ち伏せなどはされてないらしい。
てか、私、なんでこんなに冷静なんだろ。そういや鈍いってよくいわれるなあ。
窓から外に出て、慎重に屋根の端へ移動。うん、飛び降りられない高さじゃない。
問題は制服きたままだからスカートが気になるくらいか。誰が見てるわけでもないけどちょっと気になる。背後を振り向くと、ドアノブがガチャガチャ動くのが見える。今更部屋に戻る分けにもいかない。
「とことんついてないよね」
覚悟を決め飛び降りる。浮遊感が数秒、衝撃は一瞬。
「いっつ」
尻餅をついてお尻をうってしまった。くそう、お嫁にいけなくなるじゃないか。
悪態を尽きつつ立ち上がるとそれと目があった。それは私の部屋の窓から下を見下ろしている。人間だと思ったが絶対に違うと気づいた。なぜならそれの首筋には人間にはあり得ない器官がついていたから。咄嗟に走りだす。庭をぬけだし道路をひたすら走る。なんだ今のは。見かけは普通のサラリーマンなのに首筋に魚のようなエラがついていた。家から離れた所にある公園まで逃げて息が続かなくなった。仕方なくベンチに座って自分がみたものを整理する。
あれは明らかに人間ではなかった。ではあれは一体なんなのか。
「かえせ」
びくっと震えて声がしたほうを恐る恐るみやる。そこには私がさっきみたのと同じようなものが立っていた。
さっきのより若く比較的イケメンな青年だが首筋にはエラがついていた。
「なんだってのよ」
咄嗟にかけだす。が、すぐに止まった。逃げようとした方にもう一人エラをもつものがあらわれたのだ。
見回すと、あちこちから集まってきて私の周りを取り囲む。
「やっばいなあ」