02
さて、なんとか「ハイネグリフ・サーガ」の世界へと降り立った俺だが、ストーリーというのはまず「テラフォンド」という世界があり、約200年前ある日空間が割れ異次元に繋がる「次元の境界」というものが発見されたらしい。
「次元の境界」から「ハイネグリフ」へと繋がっており、「次元の境界」からしばらくのあいだモンスターが溢れだしていたそうな。
そこで「テラフォンド」の住人の中から有志を募りモンスター討伐のため「ハイネグリフ」の地に出向いたのが起源とされる。
それからというものあまたの冒険者が「ハイネグリフ」でモンスターを倒したり、冒険するといったようになったという。
実際のプレイは主人公の自宅の部屋の中から始まる。
「おきなさいシリュウ。今日はあなたがはじめて元服する日でしょ?」
この世界の元服は17歳という設定だ。
主人公は200年前に名乗りを上げて「ハイネグリフ」に身を投じてきた人々(探求者と呼ばれる)の子孫というわけだ。
主人公が住んでいるというこの村ローザは探求者の子孫が寄り集まって作られた村なのだ。
ここでは幼少より激しい訓練を受け、17歳の元服を迎えるとやっと1人前に認められる。
そして今日この画面上が出発の朝、というわけだ。
「じゃあ気を付けてくるのよシリュウ……うっ……ぐすん。」
泣くなよ……お母さん。
200年の間モンスターを絶やすことができなかったくらいなんだしたいていの人は死んでしまう運命なんだろうな。
「それじゃそろそろ行ってくるよ!」
そうやってシリュウは17年過ごした生家から旅立つ。
「あっシリュウじゃない!あんた今日が元服だっけ?」
新キャラ、NPCの女の子だ。
髪はきれいな金髪でちょっと主人公より生まれるのが早かったみたいで半年前からモンスターとの戦いに身を投じているらしい。
幼馴染キャラといったところかな。
「じゃあ発注所まであたしが案内してあげるよ!」
言われるがまま発注所へ。
「う~んまずはこのゴブリン討伐がいいと思う!それにしなよ!」
よくある風景、つまりチュートリアルであった。
まぁ操作には慣れる必要がある。
それから一人でマップで指示された場所に目指す。
ヤッドエーカーの森、そこに行けばいいらしい。
ローザの村から東方向にダッシュで駆けていきマップチェンジだ。
そこでフィールド選択画面。
いまはまだローザ村とヤッドエーカーの森しか選択できないようだ。
ヤッドエーカーの森をクリックして俺は3年ぶりの戦いに備える。
「ぎゃはははは!弱そうなやつが1人で挑んできたぞ!ぎゃははははは!」
相手は5体のゴブリン。
「リーダー!こいつきっと駆け出しですぜ!ぎゃははは」
完全になめられている。
「後悔しても知らねぇぞォ!? 少年よォ。もっともお前はここで死ぬんだけどな!ぎゃははは」
そういって戦闘が始まる。
チュートリアルだけあって画面上で説明はしてくれるのだが……。
なんでだ?
相手が強い……いや強すぎるだろ。
序盤キャラにしては動きが統率取れすぎている……。
しかもこっちも素人というわけではないのだ。
ゴブリン1体の強さはもちろん主人公より弱いのだが、1体目を倒すのにHPゲージの4割をもっていかれた。
相手が連携して攻撃してくるため1VS5では圧倒的に分が悪い。(1VS4までにはできたが)
2体目、画面手前のゴブリンに照準を合わせる。
主人公が最初から覚えている必殺技「つばめ切り」をゴブリンに放つ。
当たった……があともう少し相手のゲージが残った。
すかさず相手ゴブリンの反撃を食らう。
「うっ……。」画面の中の俺の分身が苦しそうな声を漏らす。
HPゲージは残り4割を切っている。
「ぎゃはは!観念しろォ!」
リーダーゴブリンが威勢よく吠える。
それが必殺技の合図だったのだろうか。
次の瞬間リーダーゴブリンが高く跳び上がり主人公の真上にとびかかってきた。
俺は必至で防御モーションを取る。
……だが……貫通された。
残りゲージ1割。
とびかかりによりシリュウは吹っ飛ばされたあと、俺がさっき必殺技をきめたゴブリンの追撃をくらってゲームオーバーとなった。
なんたる無念か。
さっきの戦いの悪い点について考えてみた。
相手の細かい攻撃をすべて防御、もしくは回避できていたら?
その前に相手に攻撃を与える隙が極端にないのだ。
やはり防戦一方だとやられてしまうので攻めに転じた方がいいだろう。
チュートリアルなんだし防御しなくても普通勝てるだろ、と思ってた俺は普通正しいはずなんだが。
イライラしながらもローザに強制的に帰還される。
仕方なく村をブラブラしようと考えたのだが1分もしないうちに先程の戦いがなぜ失敗したか気づくことができた。
それは……。
仲間。
パーティ。
さらに言うとギルド。
発注所の掲示板の前には「チュートリアル 誰でも」という文字を見かけたからだ。
チュートリアルまで複数プレイ推奨かよ。
先程まで1VS5で挑んでいた俺が恥ずかしいみたいじゃないか。
そりゃあ勝てないわけだ。
「チュートリアル 誰でも」と書かれた吹き出しで募集しているのは俺と同じ戦士を選択したプレイヤーだった。
バーティ参加申請をすると同時にチャット画面を開き、「チュートリアル同行お願いします(顔文字略)」と打つ。
10秒も経たずにパーティー申請が受理される。
「参加ありがとう!さっきソロで行ったんですがコテンパンにやられてねw」
俺とまったく同じ境遇だったようだ、男戦士選択の彼の名前を見てみるとカインズと書いてあった。
全体的に軽装備みたいなアバターで爽やかそうな顔だ。
「よろしくお願いします、何人くらいで挑むのがちょうどいいんですかね?」
「相手の数に合わせるなら5人かな、パーティーは別に何人で行ってもいいんだけどあまり人数が多いと報酬がその分減ってしまうみたいなんだ。」
なるほど適度な人数がベスト、というわけか。
「最低でも4人で弓使い、魔法使いがもう1人ずつ欲しいとこだな。」
カインズはそう言った。
「フロントは2人か3人までですね。うーん誰か来ませんかね。」
そうこうしながら待っているとカインズがパーティ申請に気づき承認ボタンを押す。
【アカネがパーティーに加入しました。】
「よろしく。」
アカネの第一声はぶっきらぼうなものだった。
赤髪ツインテール、アバターは軽そうなゴスロリファッション、ピンクの傘を持っていた。
「よろしくな、あんたも最初にソロで挑んだのかい?」
カインズは積極的にコミュニケーションを取りたがるタイプに見えた。
「……いや私は挑戦がはじめてよ。」
「ほほーう、そうなのかぁ。」
アカネは弓使いを選択していた。
残るは最低でも魔法使い1人といわけか。
「アカネさんよろしくお願いします(顔文字略)」とだけ俺は言っておいた。
最後の1人が来るまでがけっこう長かった。
俺が「ハイネグリフ・サーガ」に登録した時点で登録ユーザー数は15万。
開始当初なのにこの数字はというととても人口が多いと思う。
正月にひっきりなしにCMを流しただけのことはある。
ただ、なぜこの発注所にこんなに人が少ないかといえばそれはサーバーの量に起因していた。
ユーザーを仕分けるサーバー。
本来ユーザーの増加に伴い、順次増やしていくのがサーバーというものではあるがこのゲームはというと108ものサーバーにランダムに振り分けられるという無駄に意味の分からない仕様になっていた。
サーバーひとつあたりどれだけの人数を収容できるか分からないがいくらなんでもゲームを課題評価しすぎだろう、と俺は思った。
そんなわけで108のサーバーの中のひとつ、「トランジスサーバー」に登録している人も単純計算で1500人くらいだろうか。
リアルタイムでログインしている人はもっと少ないはずではある。
そんなことを考えていると最後の1人がパーティーに加入した。
【雪月花がパーティーに加入しました。】
魔法使いの中性的なアバター、男か女かは判別できない、少し黒っぽいような紺色のローブを身にまとっていた。
雪月花「よろしくお願いします(顔文字略)」
シリュウ「よろしくお願いします(顔文字略)」
カインズ「おう!よろしくな!4人で行こうと思うがみんな大丈夫か?」
アカネ「よろしく。」
シリュウ「大丈夫だと思いますよ~。もし行ってだめならパーティー崩さず5人目募集すればいいですし。」
カインズ「よっしゃ!じゃあ行くぜ!」
こうして俺のチュートリアルリベンジが始まった。




