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01 

「○田アウト!」


どこからともなく聞こえてくるその声を合図に全身黒タイツのエキストラがやってきて、出演している芸人の尻めがけて何やら棒状のバットのようなものを1発当てるとエキストラは去って行った。


大晦日恒例の番組であった。


そう、今年もあと数時間で終わろうとしている。


俺はコタツに入りながら特に何を考えるわけでもなくテレビを眺めていた。


コタツの上にはミカンが4つとリモコン。


背後からは母が鼻歌交じりで蕎麦を茹でていた。


ごく普通のありふれた大晦日の風景だった。


俺は上京していたが正月のあいだだけ帰省、おとといから新幹線で3時間かけて実家に戻っていた。


「おぉ……そろそろ明けるな。」


書斎にいた父がリビングにやってきた。


「はい!できたわよ~。」


ほかほかと湯気が立ち上がっていて、そのお椀の蕎麦の上には2切れのかまぼこが添えられていた。


「そばー!待って!みんなまだ食べないでよ~。」


階段から駆け下りてきたのは妹の葵だ。


今年は大学受験の歳だから年末はテレビを極力見ない!と決心したそうで2階にある自室で山籠もり修行のような精神鍛錬をなさっている最中というわけだ。


うん、がんばれ。


母はコタツのテーブルの上にお椀を4つ並べる。


「なんでこれなのよ~リモコン貸して。」


俺が承諾する前にリモコンを奪われていた。


次の瞬間チャンネルが男性アイドルの年越しライブへ切り替わる。


年越しのカウントダウンが既に始まっていたみたいだ。


20…………15…………10……9……8……7……6……5……4……3……2……1……。


「あけましておめでとうございまーす!!!」





妹のチャンネル天下はわずか10分強といったところで、蕎麦をみんなが食べ終わったのを確認すると一瞬の隙をついてリモコンを奪取し、先程のくだらない番組へチャンネルを戻したのだった。


それから少しするとみんながコタツから離れていった。


妹は例の精神修行をもう少し続けるつもりなのらしい。


よし!今年は夜通しお笑い見るか!


コタツからは出たくないという強烈な症状に見舞われたので本能がその道を選択したのだ。


先程の番組も終わって、若手芸人がショートコントを披露していく番組が始まる。


暖かいコタツの中、襲い掛かる眠気と闘う。


なぜだかはよくわからないげども元旦の夜中くらい徹夜したい。


1組のネタ披露が終わると次は昨年の某漫才グランプリで優勝したコンビがネタ披露するのだという。


ん……?なんだCMの後か……。


そう思いながらコタツの裾から空気が漏れださないようにしっかりくるまる。


なんかやけにネトゲの宣伝が多いな……。


さっきから同じタイトルのを連続で宣伝してたりしてんな……。


そんなことを考えていると次第に意識が遠のいていき……。


深い眠りへと落ちていった。





朝起きてチャンピオンのネタが見れなかったことに嘆息したことは言うまでもない。


参賀日は適当に親戚に挨拶してまわり、正月番組が一通り終わってきた頃、俺は上京してるマンションに新幹線で3時間かけて帰ったのであった。


マンションに約10日ぶりに戻ってきた俺は、実家に帰った時とまた違った安堵感を味わったのだった。


キャリーバッグからあらかた荷物を降ろし整理すると今度は暇を持て余してしまった。


現在1月5日。


ちなみに大学が始まるまであと1週間ある。


うわぁ、このあいだ何しよう。


取り敢えずTwitterを開いてみた。


同じ大学の連中はまだ帰省中らしい、まぁ帰ってきてもやることがないから俺みたいに暇を持て余してしまうだけになる。


帰ってきてるのはごく少数派か、それとも元々こっちに住んでいる奴らか、みたいな感じになっているわけだ。


いろんなやつが様々なことを呟いているなか、ネトゲの話題が多いことに気づいた。


注視して見てみる。


何やら正月にしつこいほど宣伝していたネトゲ、それがなかなか面白いらしい。


高校2年の頃まで俺はネトゲに熱中していたが、成績が急激に落ち、このままでは大学に行けないうんぬん言われ更生することができたのであった。


しかし何とか受験という荒波に打ち勝ち、こうして現代を俺は強く生きている。


合うか合わないかはは分からないけど少しやってみるかな?


はまらなかったら別にやめればいいだけのことだし。


俺は机の上のノートPCの電源ボタンに手を伸ばす……。



後になって振り返れば……それが全ての間違いだった。


あのときネトゲに復帰しようとさえしなければッ!



「ハイネグリフ・サーガ」


それがそのゲームの名前。


ハイネグリフという世界の中でプレイヤー達は生活する。


初期のジョブは大きく分かれていて3つ。


戦士、弓使い、魔法使いである。


この3つのジョブは星1のジョブと言われ、各間で移動できないので最初にジョブを決めた時点で大まかな育成方法は決まっていってしまう。


レベルを上げたり、特定の条件をクリアすることで星2のジョブ、さらにはそれ以上の星のジョブへ昇っていくことができる。


もちろん高位ジョブに上がることでステータスは強くなっていくし、逆に育成方面が定まると固有のステータスが伸びていくので修正が難しくなっていく。


このゲーム最大の面白味というのは何百も用意されているというジョブの数にある。


ジョブが他人と被ってしまうことが極端に少ない。(初期ジョブは例外として)


「みんな違ってみんないい」ということだ。


こういう作り方には少し好感がもてた。


モンスターを狩ることもあればプレイヤー同士で戦うこともできるという。


俺がハイネグリフ・サーガをインストールした時点ではオープンベータを終えたばかりでまだ上のプレイヤーとは大きく差が離れていないとのことで、それを知ったとき小さくガッツポーズを極めた。


名前を決める画面が出てくる。


ふむ何にしようか。


5分考えたがいい案が出なかったのでしょうがなく名前の一部である「リュウ」と中国の武将の「子龍」からひっぱってきて「シリュウ」とした。


これは3年前までほかのゲームで使っていた名前でもある。


さて、ここから本題。


初期ジョブを何にするかという決断をしなくてはならない。


この選択は後に俺の戦い方の大部分を決めてしまうので慎重に行わなければならないのだ。


戦士、弓使い、魔法使い。


後にどんなタイプに育てたいかまで計算できればベストではある。


ただ、いま得られる情報は限りなくないに等しかった。


ゲームバランスに寄るが遠距離型だといろいろ考えるのもめんどくさそうだった。


俺は素直に戦士にカーソルを合わせクリックする。


無難な選択ではあったと思う。


その後、適当にアバターを選択する。


何事も無難に、現実でもそうであるように黒髪のやや長身の男性を作った。


「いよっしゃぁぁぁー!それではそれではっ!夢と希望に満ちたハイネグリフの世界へGO!」


やけにテンションの高いガイドだった。


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