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7月1日 6

「ここは……夢の方か。」

 真琴は意識を取り戻すと、あたりを見回した。例の少女の部屋だ。そして、その少女……尋美の姿を確認し、夢の中と結論づけた。これで尋美がいなかったら現実の方の部屋だと結論づけただろう。

「あ、おにいちゃん、またきてくれたんだ!」

 尋美は、真琴に気づいて振り向くと、ぱっと顔を輝かせて走り寄ってくる。

 尋美が、実際は姉であることを知っている真琴は妙な気持ちになった。そして、両親から事情を聞いた真琴は、尋美のことを可哀想だ、と思っていた。

「うん、来たよ、尋美ちゃん。」

 真琴は尋美の頭を左手で撫でる。手入れが全くされておらず、フケだらけではあったが、不思議と手触りが良かった。

 名前を呼んで、真琴は気づいた。尋美という名前は、両親の名前からとっているのだと。真『尋』と『美』琴で『尋美』だ。そして、真琴は自分と同じ由来なんだ、と感じて親近感を覚えた。『真』尋と美『琴』で『真琴』だ。

「じゃあおにいちゃん!おててつないで!」

 尋美は、また肘から下がない右腕を差し出してくる。

「う、うん。」

 前回の笑顔と恐怖を思いだし、わけがわからないことも相まって、真琴は緊張しながら感覚のない右腕を差し出した。

「じゃあおててつなぐね!」

 すると、尋美はまた真琴の右腕の肘の下あたりを、醜く腫れ上がった左手で掴む。

「……?何をするんだい?」

 真琴はその行為に首をかしげる。幼い子供特有の、独特の発想からくる訳の分からない行動だろうか。そう考えられれば楽だったが、その直後、尋美の顔をふと見て、その表情に戦慄を覚えた。

「ありがと、おにいちゃん!」

 少女は、どこまでも『無邪気』な笑みを浮かべると、左手をそのまま『引き戻す』。

「へ?う、あ?う、え、あ……うわあああああ!」

 真琴は、はじめは訳が分からず混乱した声を出すが、尋美の左手に握られているものと自分の腕を見比べ、状況を理解した。

 真琴の右腕は『肘の下から引きちぎられていた』。

「うーん……ちょっとあわないなぁ……なんでだろ?」

「うわあああ!うわあああああ!」

 尋美は、その真琴の腕の断面を、右腕の途切れている部分に押し当てては離し、を繰り返して『無邪気』に首をかしげる。

 真琴は、混乱と恐怖から、ただ錯乱し、悲鳴を上げている。この時、真琴は錯乱して気付かなかったが、『痛みが全く無い』のだ。悲鳴は、ただ本能的な恐怖と危機感によって喉から迸る。

「うーん、もっとじょうぶなのがいいのかな……それとも、やっぱりおんなじおんなのひとがいいのかな?」

 尋美は悲鳴を上げ続ける真琴がいないかのように首をかしげる。

「じょうぶなひと、おんなのひと……。」

 尋美はそう言いながら真琴をみた。尋美の視界に映るのは、ある2人の男女。

「おにいちゃんのおともだちにいた!」

 尋美はぱっと顔を輝かせて無邪気に笑うと、真琴の腕を放り捨てて、真琴に向かって、

「おにいちゃん、ありがと!おれいにひろみとおなじにしてあげる!」

 といって、錯乱して暴れている真琴の左腕を左腕で掴む。すると、真琴の左腕は同じように、醜く腫れ上がった。

「うわあああああ!」

 真琴は、恐怖と混乱のあまりに、意識を失った。

             __________________

「なっ……!」

「嘘……!」

 しばらくして、気絶している真琴の様子を見に、ある程度立ち直った真尋と美琴は、尋美の部屋のドアを開けるなり、驚きで硬直した。

 そこには、


 左腕が醜く腫れ上がり、右腕が肘から下がなくなっている真琴の死体があった。

 

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