おいもぶ! 一食目~茅場町の惣菜パン
「美味しいもの食べたら文章化してみたいよねっ!」
そのなんとも幸せな空間は、東京都中央区の茅場町駅から、ほんの二分か三分ほど歩いた距離にあった。
お店の名前は、ベニy――んんっ、ごほんごほん! なぜかいまいちハッキリとは思い出せないが、まぁ後でネット上のググール先生にでもお伺いすれば教えてくれるだろう。
もう数年も前か、たまさかに友人から教えてもらった、パン屋さんだった。
お店の外観は、こぢんまりとした、いかにも町のパン屋さん。
しかし、場所柄もあろうが、お昼時にはご近所周辺からの勤め人さん方が老若男女問わずに行列! である。
しかもOLさんが多い。賢明な方には、この意味がお分かりであることだろう。
このお店は、創意溢れる惣菜パンが人気なのだが、中でも一番は「トマトボール」という。
両手拳を合わせたほどの大きさの、丸型パンの内部に、トマトとチーズとマヨネーズソースが仕込まれている。
パン皮は、しっとり、かつ、もちもちとしていて、それがどこまでも抜かりなく徹底している。内部に汁気を抱えていながら、びちゃついたり、ふやけて損なわれたりといった感がないのだ! むっちりと噛み千切る際の歯応えは、いっそ官能的とすら言える。
そして、一口かぶりついたなら、内から溢れ出てくる温かな汁気が口中を満たす。トマトの旨味と酸味が、チーズとマヨネーズの油脂分と塩気によってほどよく混濁された、ジューシー汁である。それが口から喉、喉から胃へと走り、そして脳髄を充溢させていく、この幸福パワーの絶頂感ときたら!
思わず雄叫びを上げたくなるほどである。わずか二百円としない値でこれほどの満足をもたらすとは、たかがパン一つといえどそこに込められた匠の技と心意気に、敬服の念を覚える。
またこのマヨネーズソースがたまらない。おそらくは卵黄タイプの手製だろう。コクがしっかりある上で、味わいまろやか、口溶け軽やか。市販品のそれとは明らかに異なる。
他の惣菜パンにもよく使われているが、このお店のマヨネーズ系は安定して美味しい。そこにトマトの酸味と旨味たっぷりの汁気が加わるのだ。想像してみて欲しい。もはや無敵ではないだろうか?
この日は他にも二番人気のチキンタッタサンドや、魅惑のツナオニオンフランス、ふざけたほどに贅沢トマトなオムライスパックに、さらにトドメのはちみつバターパンなどなど頂いたのだが……その全てを一度に語ろうとすると、味の魅力が分散し、かえって損なわれてしまうかもしれない。
いつか改めて語る機会もあるだろう。その日を信じて、今日は一番推しの「トマトボール」さん一本語りのみにて、短く締めておきたいと思う。
ではまた、どこかで。あなたの食の日々にも、幸いありますよう。
ごちそうさまでした!