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注:リアルの部活動を侮辱する意図は全くありません。スキルやステータス値はもちろん全て私の独断による捏造です。

 とりあえず、さきほど配られた部活紹介の冊子をめくってみる。

 ほうほう、この学校は部活動に力を入れているようだ。とても種類が多い。


 これだけあればぼくにあったクラブも見つかるんじゃないだろうか。そのためにはどのクラブが何にステータス補正があるのか、なんのスキルを取得できるのか知る必要がある。残念ながら冊子にはのっていない。


 そりゃあそうか、自分の手のうちをこんな不特定多数がみるような物に載せるはずがない。だがある程度は予測できる。



◇◇◇


 というわけで、まずはやって来ましたグラウンド。校舎側からみてグラウンドのだいたい真ん中から右がサッカー部で左側が野球部だ。


 さっそく体験入部した奴らが部員にまじって走り込みをしている。ひどく荒い息遣いがこちらまで聞こえてきそうだ。ひいひい言ってる奴らはおそらくまだぼくと同じビギナークラスなのだろう。低いスタミナ値であの練習についていくのは相当しんどいに違いない。


 ひととおり体を温め終わったのだろう、キャプテンの指示に従い部員たちが水を飲みにやってくる。大半の1年生は地べたに座り込んでいるなか、1人フットワーク軽くベンチに向かってくる奴がいる。


「お?こたろ?」


「立石くん!野球部入ったんだね。」


 近くに寄るとなかなか圧迫感がある。立石くんはぼくとあまり身長が変わらない。なのにガタイがいいせいか実際よりも大きくみえる。ちなみに、立石『くん』と呼んでいるけど仲に隔たりがあるわけではない。むしろかなり気がおけない関係だ。彼のことは何故だかみんな立石『くん』と呼ぶのだ。


 そして…かなり女の子にモテる。別に羨んだりなんかしていない。小学生のときってなんでだか運動神経がいいやつがモテるよな。中学生になってもそれが続くと思うなよ!別に気にしたりはしていない。


 そうそう、確か小学生のときから少年野球やってたもんな。そりゃ野球部入るか。それにしても1年生なのに1人だけ動きがいいのがいるなあと思ってたら案の定、立石くんだったのね。


「1年生はみんなビギナーかと思ってたのにー。」


「ビギナー?俺が少年野球やってたの知ってるだろ。言うならルーキーだな。」


 おおお!やはり立石くんは既にルーキーへとクラスアップしていたのか。確かにあの動きなら納得できる。ぼくも早くビギナーから脱したい。クエストが発生しないのはなんでなんだろう。


「お、キャプテンに呼ばれてら。またなー!」


 立石くんはあっという間に走っていってしまった。少々ライバル心を刺激されたぼくはグラウンドの隅っこで反復横とび(ステップ&ステップ)をしながら部の観察を続けることにした。




 ここで、いくつか分かったことをまとめてみよう。


 サッカー部はおそらく、SPスタミナポイントに大きく加点、STR・DEXにもいくらか加点されてるんじゃないか?

 

GKゴールキーパーの先輩は、何度も飛んできたボールをはじいてみせた。きっと耐久力は高い値を示しているだろう。それが先輩自身の潜在値によるものか、GKの補正値なのかは分からない。 それと、あんな鋭いボールを腰のふんばりで受け止めているさまをみると、ノックバック率を減少させる効果のあるスキルも持っているのかもしれない。


 野球部はSTRに加点はまず間違いないな。SP補正は弱そうだ。DEX(命中・回避)とLUC(運命)値にはいくらかの加点があるだろう。

 

 意外なのは、マネージャーがおそらくは付与魔術の使い手だということ。お茶をつくりに行っていたマネージャーがグラウンドに入ってきただけで、目に見えて部員たちの様子が変わった。

 スタミナが切れかけていた1年生も軽やかに走り出したし、もしかしたら回復魔術の方なのかも。なんにせよ、あれだけの人数の部員を一度に回復させるなんて、相当な使い手に違いない。


 サッカー部と野球部は特に部員数が多いそうだ。やはり戦士系のジョブが人気なのか。

 正確にはジョブといったものはない。だがパーティーを組むとおのずと役割は決まってくるものである。


(ぼくはSTRの初期値が低いからな。)


 ここには自分が入るより、そこから仲間を探すほうがよさそうだ。ぼくがルーキークラスになったら、ぜひ立石くんをパーティーに誘おう。





 それからもあっちにフラフラ、こっちにフラフラ、いろんなところを見て回った。


 AGI特化で行くなら卓球、DEXはバレー・ソフトテニス・バドミントン。SPは陸上、ちょっと変わったところで水泳が水耐性。全体的にまんべんなく、小器用になりそうなのがダンス。バスケはSP小・DEF小ってところかな。


 戦闘スキルが得られそうなのは柔道・空手といった格闘技系だろう。たいていの戦闘スキルは武器固定なので要注意だ。



 まだ文化系のクラブを見に行っていないのにクタクタである。やはり自分の方向性をある程度見極めてから考えた方がよさそうだ。



「ステータスオープン!」



湯峯幸太郎 Lv1

クラス   ビギナー

HP/MP  10/10

SP    20


STR  3

DEF  2

INT  4

AGI  4

DEX  5

LUC  3

CHA  2




 見れば分かるようにDEF(防御力)が低く、DEX(器用さ)が高い。次いでINT(知力)、AGI(素早さ)と続く。


 …ぼくが前衛として華々しく武器を振るうのは無理だろう。


 以前のぼくは常に前に立ち、敵を突き崩す急先鋒をつとめていた。STR値とDEF値が高く、ある程度の敵なら相性が悪くても、力押しでおしきれるほどその強さはずば抜けていた。もう、前と同じような戦い方はできない。スキルだって全然違うものをとらねばならないだろう。



 ふと視線を感じて振り返ると、真っ白い、まるで雪のような大福もちがこちらを向いていた。こんな時間まで学校にいるとは、白石さんもクラブ見学をしていたのだろうか。


(目が合わないけど。野球部を見てるのかな?)


 少し横にずれてみる。と大福もちも動いた。


(あれ?)


 肩幅に足を開き腰を低く落とす。

 膝を軽くまげ、横の動きを意識しながらそろりと左足を動かす。


 素早く反復横とび。

 困惑気な表情をしながら大福もちも動く。


 さらに激しく反復横とび。

 右の到達地点に右足が届く頃にはもう重心は中央に向かいつつ、左の到達地点に左足が届く頃には既にそこにある身体は残像だ。


 長年修練を続けてきた幸太郎の反復横とびの速度は驚くべきものであった。だが、彼女が動かすのは首だけである。なにぶん振り幅の差が大きい。大福もちは容易にそのスピードについてきた。


(そうか、そのつもりなら)


 右、左、右と動いて次は左だとばかりに左端へとその左足先をのばすかのように見せかけて、幸太郎は前へ重心を傾けた。向かうは前方、白石の正面である。


(今度は逃がさない!)


 幸太郎のあまりの速さに恐慌状態に陥ったのであろう。身動きひとつとれないでいる白石を、ついに、幸太郎は捕まえた。


「こんにちは!ぼく湯峯幸太郎っていいます。よかったらお友達になりましょう!」


 挨拶、そして名前。最後に友好を願う言葉を控えめに添える。文句のつけようもないほど美しい自己紹介の基本型である。


 ヘタなナンパにも聞こえなくはないが、彼らは小学生を脱皮したてほやほやの中学生である。彼の持つ純真な心を信じたい。


「あ、え、はい。こんにちは、白石ゆきです。」


 ちゃんと返事がかえってきたことに少し安堵する。表情も明るく、どこにも無理をしている様子はない。大福もちもち。何故あんなに避けられていたのか。確かにそれも気になるが今はそれよりもさきほど体感した自身の速さに興奮していた。


「ぼくの動きどうだった?」


「…すごく、速かったです。」


 今朝おねえに隠れてステップしたときより速くなっている気がする。さっき校庭の隅でした反復横とびで熟練度がたまったのだろうか。熟練度とは繰り返し繰り返し修練を積むことによってあがっていくものだ。そうしてある一点をこえたところで、やっと身になるのである。


「ありがとうっ!実はさっき熟練度がたまったばっかりなんだ。」


「ウヒ。おめでとう。」


「?ところで白石さんはどこのクラブに入るか決まった?」


 彼女の声はまるで粉雪のように軽く、涼やかだ。もしイメージ通り魔術を操るのなら、この声から呪文が紡ぎだされるのだろうか。


「ウヒヒ。うっんっううん。えーとまだだよ。湯峯くんは?」


「いまウヒヒって言わなかった?」


 喉の調子があまりよくないのだろうか。両手で懸命に喉元を抑えている。


「ッヒ。言ってない。それより野球とかサッカーとか見てたみたいだけど、何か面白いことあった?」


 …結構前から観察されていたらしい。空間把握スキルの熟練度はまだまだなようだ。全然気付かなかった。


「それがね!立石って友達がいるんだけど、彼もうルーキーらしいよ!」


「……へえ!ちなみに湯峯くんは?」


「ぼくはまだビギナーだよ。中学生になるまでクラスアップは許してもらえなかったんだ。白石さんは?」


 小さい頃からよく、父と海や山へ行きスキルを磨いてきた。行動範囲が広がり、いざレベルを上げに行きたい!と告げると、母の大反対にあってしまった。 「そういうのは大人になってからしなさい。そして大人になってもしたかったらにしなさい。」 と、さすがにそこまで出遅れるわけには行かなかったので交渉の末(父の援護もあり)、なんとか中学生から活動をはじめられるようになったわけである。


「わた、わたしも湯峯くんと同じだよ!そうそう、親が許してくれなくてさ、仲間だね!」


「仲間!?ぼくと白石さん仲間!?」


 なんと。


「えっえっ?うん。仲間だよね…?」


「やったああ!ありがとう。これからよろしく!」


 いつ切りだそうか悩んでいたのに彼女も仲間パーティーを探していたのか!しかももうすでにぼくと彼女は仲間パーティー!さっそく彼女に仲間パーティー申請を送る。



『湯峯幸太郎があなたをパーティーに招待しています。パーティーに参加しますか?』



「こちらこそよろしくね……???」



『受諾されました。』





 クラブはまだ決まってないし、スキル構成もどうすればいいのか全然分からない。だが記念すべき1人目のパーティーメンバー白石さんをゲットした!入学初日から仲間ができるとは、なんて幸先のいいスタートだろう。





「え?え、なにいま。湯峯くんいま、なんか…?」


「明日は一緒に見学まわろうよ!スキル構成についても相談したいしね!」






『ビギナーズクエストを開始します。

 ビギナーズクエスト(1/4) 仲間をつくろう クリア!』






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