どれだけドリーマーなんだよ
首筋にヒヤッとしたものが当たる。
「うぉっ!」
ビックリしながら体を起こして後ろを振り返ると、ケンがペットボトルを持ちながらニヤニヤ笑っていた。
「びっくりした~」
「くしゃみしてたよ?眠いならちゃんと寝れば?」
ケンはペットボトルの中身を、のどを鳴らしながら飲んだ。
「いや、明日テストだしさ。」
「化学?」
「うん。」
教科書に目を落す。そうだ、ちょっとでもいい点数を取るために頑張らないと。
「捨てれば?普段から勉強してるのに理解できないんだから、化学の才能無いんだよ。それより得意なのやって点数を伸ばした方がよくない?」
確かに。
でも、それじゃあ負けた気がする。ケンにも、自分にも。
「そういう考えもあるけどさ、苦手なものって、そのままにしておくの、よくないよね?」
「ふ~ん。そういうもんかな。」
そういって、ケンは日本史の教科書を持って二段ベッドの下にもぐりこむ。
ケンは得意教科の点数を伸ばす方針らしい。
そういえば、さっき、変な夢見てたな。夢の中で眠くなるなんて初めてだよ。
ケンが姫を泣かせたとか・・・
「ね、ケン。姫って言ったら誰を思い浮かべる?」
「は?それ、日本史的に?それとも童話?」
ケンが泣かせたっていうんだから、ケンが会える姫だよね?
「う~ん。・・・リアル?」
「皇族。日本人だし。」
「会ったことは?」
「あるわけないじゃん。」
「だよな。」
やっぱ姫なんて会えないか。
いや、そもそも俺の夢なんだから、俺がイメージする姫が夢の姫か。
せっかくだから姫の顔見たかったかも。う~ん、残念。
「なんで急に姫?」
「さっき夢でさ、ケンが姫を泣かせたって怒られてさ。」
「夢に姫!コウ、どれだけドリーマーなんだよ。」
言わなきゃよかった。
いや、それよりも今は化学に集中。
テスト勉強を再開したけど、1時間後にはケンの言うとおり、化学は捨てて、得意教科をやってた方がよかったかもしれない、そう思いながら俺は眠りについた。