シュルシュルと入っていきます
動揺していた小人だったけど、ようやく我に返ったようで、尻餅小人は逃げようと、もう一方は深々と頭を下げた。
「人違いであった申し訳ない。我らは影ながら姫に仕える者。弟殿が姫を悲しませるようなことをしたため、罰を与えに参った。」
「そうだよ。てめーの弟が姫を泣かせたんだ。」
「罰ってどうするの?刑務所に連れて行かれちゃうの?呪われるんじゃなくて?」
俺はまだケンが呪われるんじゃないかと思っていた。
「けいむしょ?のろい?」
「訳分かんねーこと言ってんじゃねーよ。」
なんだ、呪われるんじゃないのか。刑務所でもないらしい。
こんなちびっ子に囚われたらガリバーの世界だ。
「われわれはただ、弟殿をわれわれの世界に呼び、奴隷の身分に貶めて、姫を泣かせたことを後悔させてやろうとしただけだ。」
「奴隷?」
「そうだ。姫を泣かせたんだからな!」
「相応の処分だと、我々は判断する。」
ケンが奴隷・・・ダメだ。
っていうか奴隷制度自体がダメだけど。
「ケンには奴隷なんてひどいよ!」
「仕方あるまい。姫を泣かせたのだから。」
「そうだそうだ。」
「大体、姫って誰?ケンは何をして泣かせたの?僕がケンの代わりに謝るよ。だから奴隷なんてダメだ。」
「なんという素晴らしき方、弟の罪を代わりに雪ぐと?まさに、兄君の鑑!」
「おんなじ顔だしな。言ったろ。こいつでいいって。」
「で、どうやったら姫に会えるの?」
「このコードを目に挿すんだよ。簡単だろ?」
「いや、鼻だ。何度言ったら分かるんだ。」
尻餅小人が得意げにコードを見せた。
「乱暴にあつかうなよ。」
俺がそのコードを奪って顔の前に持っていくと、シュルシュルっと鼻の穴に吸い込まれていく。
「あっ。分裂しちまったじゃねーか。」
「何と!では弟殿もわれわれの世界に連れて行くしかないではないか。」
え?結局ケンも奴隷になるの?意味無くない?
「兄君の心意気に感服させられましたので、兄君は奴隷にはならないように配慮させていただこう。」
「こいつなら俺らの世界を救えるんじゃね?」
「おお。そうかもしれぬ。最初の一発目はサービスしておきましたぞ。よろしくお願い申し上げる。」
え?
奴隷になるんじゃなかったの?
世界を救うってなに?
そう聞こうと思ったのに、シュルシュルと入っていくコード。
そして、体から力が抜けて、なんだかとても眠い。
なんだか・・・
とても・・・
・・・くしゃみがしたい。