001
木漏れ日の差し込む森を通る街道の木の下に赤ちゃんが入った籠が置かれていた。その赤ちゃんは泣くこともなく周りを見渡すように首を動かしている。そして目をきょろきょろしている。
(えっ、ここはどこだ。俺はどうして森の中に横たわっているんだ)
赤ちゃんはどうにか動こうとして手足を動かす。しかし赤ちゃんなのでその場から動くことができない。
(やばい。起き上がることができない。どうなっているんだ。昨日は残業で夜遅くなって会社に泊まったことは覚えている。寝てから森に来たような記憶はない)
赤ちゃんは自分の手を見てみた。とても大人の手には見えない。
(なんだこの手はまるで赤ん坊じゃないか。俺は赤ん坊に生まれ変わったのか? それともこれは夢なのか?)
赤ちゃんは南雲優斗と35歳として日本のブラック企業で働いていたサラリーマンだった。日本で神の手違いにより死んで異世界に転生させられていた。優斗はそんなことは知らない。神はそのことを優斗に伝えていないからだ。
(異世界ならステータスとかあるのかな? ステータス)
優斗がそう念じると半透明な板が目の前に浮かんだ。優斗はその板を眺める。
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ステータス
名 前 未 定(南雲優斗)
性 別 男
年 齢 0
種 族 ベリル(神祖)
レベル 1
H P 485,398
M P 4,586,549
スキル 鑑定 言語理解(読み・書き・話術) インベントリ
スキル魔法 なし
ユニークスキル ネットショップ
種族スキル 武術の才 魔法の才 眷属化 ステータス改竄
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ステータスを眺めて優斗は戸惑った。
(チートすぎるぞ。種族はなんだ? ベリルなんて聞いたことがないぞ。どんな種族なんだよ。種族スキルがすごすぎじゃないか。まずは鑑定だ)
優斗はベリス(神祖)を鑑定した。
鑑定結果
種族ベリル(神祖)
スピラーズに初めて生まれ落ちた種族。武術と魔法の才能がある戦闘民族。HPやMPがほかの種族よりも高い。身体能力も魔族以上に高い。スピラーズで一番の強さを誇る種族。寿命はない。20歳で不労になる。性行為で種族が増えていく種族。
(とんでもない種族に転生したようだ。でも森の中で赤ん坊としてどうやって生きていけばいいんだよ。このままだと死んじゃうぞ)
優斗がそう思ったときに足跡と動物の鳴き声が聞こえてきた。
(おいおい。誰かが近づいてきたぞ。やばくないか)
足音がどんどん土地数いてくる。複数人の足音が聞こえてきた。その足音は優斗の手前で止まった。
「こんなところに赤ん坊が置き去りにされているなんて」
そういって、男が優斗を抱き上げる。
(どう見ても人だな。俺の見た目はどう映るんだろう。俺は人間じゃないからな)
優斗は自分の見た目がこの世界スピラーズでどんな風にみられるのか心配だった。そんな優斗の不安は関係なく男は優斗を抱いて馬車のほうに進んでいく。
(この世界にも馬がいるんだな)
馬車を引いている動物は地球と同じように馬だった。ただ、少しだけ違いがある馬の頭から角が2本生えていた。優斗はやっぱり異世界だなと納得した。しかも馬車見る限り中世のヨーロッパ程の文明であることが確実となったことを知った。
優斗を抱いた男は鎧を着ている。優斗は男が馬車に乗っている者の護衛だと考えていた。男は馬車のドアをノックする。
「何事だ。このような森の中で隊列を止めるような出来事でも起きたのか?」
「公爵様。申し訳ございません。街道に赤子が捨てられていたので保護しました。馬車で預かってもらうわけにはいかないでしょうか?」
公爵はその言葉に反応して馬車のドアを開けた。
「ユルゲル。お前が抱いているのが赤子か?」
「はい、木の下に捨てられていました」
「その赤子を今後どのようにするつもりだ」
ユルゲルは優斗を見たときに天啓なようなものを感じていた。
(何だか知らないがこの子を育てなくてはいけないという思いが湧き出てくる)
ユルゲルは結婚して10年になるが子供がいなかった。そろそろ養子でも取ろうかと考えていた。ユルゲルの家はマグワイアー公爵家に仕える騎士で男爵でもある。家を継ぐ者を養子としてとることは決まっていた。そんなユルゲルの前に優斗が現れたのだ。運命を感じた。
この出会いは偶然ではない。神が仕組んだことだった。神はちゃんと優斗が生育できる環境にたどり着くように計らっていた。優斗は神とあっていないのでそんなことは知らないでいた。
「我が家には子供がいません。これも何かの縁だと思います。この子は私が育てます」
信頼する家臣であるユルゲルの頼みにマグワイアー公爵は両手を出して赤子を要求する。ユルゲルはマグワイアー公爵に優斗を預ける。
「領地に着くまではセラに世話を任せよう。ユルゲル。それでいいな」
「はっ。よろしくお願いします」
すると馬車に乗っているメイドがマグヤイアー公爵から優斗を受け取った。
「ユルゲル様。私が面倒を見ますので隊列に戻ってください。公爵様に迷惑が掛かります」
「わかりました。セラさん。赤子のことをよろしくお願いします」
「ちゃんと面倒を見ますので安心してください」
その言葉を聞いてユルゲルは隊列の先頭に戻っていく。そしてしばらくすると馬車が動くのを優斗は感じた。
(さっきの男の人が俺の義父になるのかよ。まあ孤児院とかに預けられるよりはましだな。これも運命か)
優斗はまだ現実を受け止められずにいた。夢だったら早く冷めてくれと願った。しかし夢は冷めてくれない。なれない馬車の揺れに気持ち悪くなるのを我慢してセラに抱かれている間に優斗はいつの間にか寝てしまっていた。
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