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負けたら廃部

 次の日、指子の服装が気になっていた俺は授業中に隣の席を横目で見ていた。指子はいつもと同じ学校の制服を着ている。特に変わった様子はない。

それはそうだよな。なんで服装が変わると思ったんだ俺は。

 乳首当ては相手の服で的中率が変わると言われている。女子との試合だから俺はどうも神経質になっているようだ。

まさか試合前に突然着替えるなんてことは無いよな。

 俺の視線に気づいた指子はこちらを向き、何でか分からないが微笑んだ。

 廃部の危機に必死だというのに、こいつはお気楽でいいよな。


 放課後になり俺は部室に入る。後輩二人は長机の前にあるパイプ椅子に座って待っていた。

「今日は頑張って下さい部長。この部の存続は部長に掛かってますよ」

「ああ、わかってる」

 後輩は俺を先輩ではなく部長と呼ぶことにしたらしい。部長である俺の今日の頑張り次第だということだ。

 ちょっと緊張してくる。

 後輩たちの近くのパイプ椅子に座り、指子を待っていると扉をノックする音がする。

「どうぞ」と言うと指子が部室に入って来た。

 磁場流が俺に耳打ちをする。

「部長が暫く休むと伝えてくれた先輩です」

 やはりそうか。

 指子はすまし顔でこちらを見ている。俺は立ち上がり指子の元へ行く。

「この御方こそが乳狂治の娘さんの指子さんだ」

 掌で示し後輩たちに自慢げに紹介する。

「なんか仰々しいわね」

「この人があの乳狂治の娘」

 磁場流は指子をじろじろと見ている。指子の胸で視線が止まる。

「デカいっすね胸が」

「セクハラな発言は慎むようにな磁場流くん。俺が勝っても指子が部活に入ってくれなくなるぞ」

「すいませんつい。デカすぎたものですから」

「聞こえてるわよ」

 指子は磁場流を睨みつける。

「すいません先輩」

 顔が赤くなる磁場流。


 指子は持っていた大き目のスポーツバッグを床に置きジッパーを開くと電気ケトルくらいの大さの競技用の判定機械を取り出し机の上に置いた。

 俺達は思わず「おおっ」と声が出る。

 次に指子は小物入れの様な長細い箱を取り出し、それも机の上に置いて蓋を開けた。

「知っているとは思うけど、乳首に特殊なフィルムを貼り付けるの。感圧して機械が反応する仕組みになっているわ」

「俺は実物を見るのは初めてだ。競技なんか出たことないし。ちょっと感動するな」

「じゃあこの小箱の中に並んでるフィルムから自分の乳首の大きさに合ったのを選んで付けてくれる?」

 俺達男子は、箱の中に一ミリ単位で並んでいるフィルムの中から俺の乳首に合うものを一つずつ選んで確かめていく。

「部長は1センチはないっすね」

「そうだな8ミリくらいかな。うんピッタリだ」

 吸い付くようにフィルムが乳首に張り付き一体となったように感じる。

強い打撃を受けてもフィルムが外れないようにする為、メーカーはフィルム開発に苦労したという。凄いのはそれだけではない。この薄いフィルムは感圧して機械にデータを送ることが出来る。一体どんなナノテクノロジーが使われているのかと皆想像を膨らませるが、企業秘密である。この技術失くして今日の乳首当て競技の手軽さは無かったであろう。


「絶対に無くさないでね。高価なものなんだから」

 指子は俺の乳首を見ながら釘を刺す。

「わかってるよ。指子はもう付けてるのか?」

「私はとっくに装着してるわ」

 指子が何ミリのフィルムを付けるのか気になったが、流石にそれは聞けなかった。

 俺がフィルムを付けたのを近くで確認すると、指子は試合前に乳首当て競技のルール説明をしたいと言う。もう知っているので必要ないと断ったのだが、確認する意味も込めて皆の前でしておきたいとの事。

「やっぱり女子が入ると細やかでいいな。マネージャーが入ってきたみたいだ」

「えっそう?でも私はまだ入部したわけじゃないんだからね」

 まんざらでもない表情の指子。

 照れ隠しなのかコホンと咳払いをし、ルールを説明し始めた。


「乳首当て競技は先攻、後攻を決めて、お互いの乳首を突きあって、正確に当てた方が勝ちというゲームよ。

 両乳首の真中心を当てると一本。

 片乳首の真中心を当てると技あり。

 乳首に触れているだけなら有効。

 突いた後の優劣で勝負が決まる。

 先攻、後攻共に一本、技あり、有効だと次の勝負に続く。これはじゃんけんのあいこの様なものね。プロの試合は初回で終わるなんてことはほとんど無い。お互いに一本出すから勝負が長引くことの方が多い」


 それを聞いて、俺は乳狂治の名勝負を思い出す。

 伝説の世界戦、乳狂治対カンポッツ・チクルスの試合は、そのあいこが三日三晩続いた。両者とも一本を出し続けた。カンポッツの陥没乳首は誤判定が出やすいので、勝負が長引けば乳狂治が圧倒的不利と言われた。しかし乳狂治の指圧の強さ、正確な指突で、機械に誤判定させなかった。下馬評を覆し、ついにカンポッツに乳狂治は勝利した。カンポッツは敗因を聞かれ、日本に来て時差ボケだった。早く寝たかった。突く時に一瞬寝落ちしたと語った。


「あと、長考は一試合で10分。持ち時間を使い切ると次の回から1分になる。時間内で突けなかった場合は、対戦相手の結果の如何に関わらずそこで負けて試合終了になるわ」


 俺は躊躇していたが、勝利の確率を上げる為に聞くことにした。

「それでだ指子、お前はあれを付けているのか?」

「あれって?」

「ええと。乳を覆うあれを」

「ブラジャーはつけてないわ」

「ええ?」男子一同驚く。

「あなたには難易度がより高い、固定されてない方で私に勝ってもらわなければならないと思ったの。それぐらい出来なければ全国制覇なんか無理だわ。もうここで乳首当て部を辞めてしまった方がいい」

俺が乳首当てを辞めるだって?ぐっと拳を握り締める。

「でも部長は女子と試合なんてしたことないんですよ。いきなりその大きな物の出っ張りを当てられるんですか?」

 指子は声の方を向いた。

「彼には乳首を探す天性の勘があるの。性別など特に関係ないわ」

 俺は首をかしげる。

「そんなの初耳だぞ。天性の勘があるなんて。ホントなのか指子?」

「この試合でわかるわ。じゃあ勝負よ。父首中くん」

「やるのか。やるんだな指子?」

 俺は急に緊張してきた。

「先攻はあなたでいいわ」

 俺が指子の胸を今から突くのか。あのデカいのを?俺は生唾を飲む。いやこれは競技だ。真剣勝負だ。あのふざけた先輩方と俺は違うんだ。

「俺をあいつらと一緒にするなよ指子」

「体から湯気が?いやオーラが出ている」

 少し驚いた顔をした指子が良く分からない事を言った。

「部長いいですよ。集中力が高まっていますよ」

 俺は指子に近づいてゆく。目線が胸に行く。こいつホントにでかいな。

 いやいや、集中しろ。力を抜くんだ父首中。そして乳首の事だけ考えるんだ。

 段々と視野が狭くなり、指子の服の中の乳首が微かな光を放ち始める。

 いけそうだ。

 俺は指を思い切り前に出す。

「お前の乳首はここだああああ!」

 俺の両指が指子のデカい胸にめり込む。

「いやーーん」

 指子は肩をすくめて腕を組むような感じで胸を隠してしゃがみ込んだ。

「おおー」と磁場流くんの声か出る。

 机の上にある機械から音が出る。

 ピンポン、ピンポン

「ピンポン二回だな。俺が一本取ったということだ指子。次はお前の番だ。一本を取れなければお前の負けだ」

 指子は直ぐに立ち上がり深呼吸した。

「舐めないでよね。この乳狂治の娘、指子を」

 指子の眼が鋭くなり、歯を見せたと思ったら噛みしめた。

 そして太極拳をしているおばさんみたいにゆっくり体が動き中腰になる。人差し指が両脇辺りでピタリと止まる。

 あれは乳首必中の構えだ。

 中腰で構えたまま微動だにしない。指子の体幹はしっかりとしている。

 凄い。指子はプロ選手みたいだ。

 「いくらなんでも、2メートル距離で部長の乳首に当てるなんて無理っすよ」

 磁場流が肩をすくめる。

「この指子様を舐めるんじゃないよ小僧」

 磁場流を睨みつける指子。

「えっ。急にどうしたんすか先輩?怖いっす」

 乳狂治の娘だけあって競技ヘの想い、気迫が違うようだな。

「喰らいなさい。私の必殺技を」

 指子の目線に俺の乳首がある。咄嗟に乳首を身構えた。

「乳首必中の突き」

 指子の人差し指が勢いよく前に出てくる。一瞬指が大きく見えた。

 終わりのモーション、俺の両乳首に鋭い痛みが走る。

 「いてっ」

 機械から音がする。

 ピンポン、ピンポン

「一本。これで振り出しに戻ったわね中くん」

 指子は腕を上げて、グラビアアイドルみたいなセクシーポーズをとる。

「当然ポーズを変えれば乳首の位置は変わるわ。今度は当てられるかしら?」

 くそ。奴の色香に惑わされては駄目だ。集中力が下がると俺は凡人になる。

 俺は目をつぶり指子の方に歩く。

「俺には見えてる。お前の乳首がはっきりと。心の眼でな」

「あなたは心眼が使えるのね。中くん」

「危ない部長。そっちは壁の方です」

 「ズコーー」

 コケる指子。

「すまない寸止次郎。俺はまだ未熟だな」

 目を開けると俺の目の前には壁があった。

「ホントに未知数ねあなたは中君」

 よくわからないが、茶番で場が少し和んだ。

 気を取り直して俺は

「よしこれで決めてやるぞ指子」

 集中力を高める為また目を閉じる。俺は指子の乳首を目指して歩き出す。

「危ないですよ部長」

 後ろから俺の両肩を掴む寸止次郎。

「いや。今度は大丈夫だ。気遣いありがとう寸止」

 微かに輝く光の点が2つある、俺はそこを目指して歩いて行く。

 光は徐々にはっきりと見えてくる。目を閉じても関係ない。人差し指よ。あれが乳首の灯だ。

 「くらえええええい」

 指子の胸に俺の両指が勢いよくめり込む。

「いやーーん」

 指子はまた腕を組むようにして、胸を隠してしゃがみ込んだ。

 ピンポンピンポン。

「指子。いちいち変な声出すなよ。試合してるんだぞ」

「しょうがないでしょ。乳狂の家系は乳首が敏感なんだから」

「なに。初耳だぞ。そんな秘密があったのか?てことはあの乳狂治も乳首が敏感なのか?」

「そうよ。父さんは学生時代いつも試合中に声が出てしまって、対戦相手からお前とは対戦したくないと言われていたのよ」

 あのクールで何事にも動じない乳狂治にそんな時代があったなんて。俺は少し感動している。

「俺がまた一本取ったな。次はお前の番だぞ指子」

「ついに私の奥義を出す時が来たようね」

「なに?奥義だと?」

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