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俺の名は藤田唯人、ど田舎のガマ口県に住む30歳、つい最近誕生日を迎え賢者に至った独身男性である。
職場はガマ口県庁の都市開発部、所謂広義の役人って奴だ。
まあ、都市開発部と言っても所詮はど田舎、開発する場所なんか無く道路整備の計画を建てるのが主な仕事だ。
それに良いこともある、ど田舎すぎて電車が走ってないので電車に轢かれて異世界転生とかそんなことは一切起きないのだ。
そんな俺だが、朝のルーティーンがある。
コンビニでコーヒーを飲みながら新聞で今朝にニュースを眺めることである。
もちろん立ち読み、お金は一切払わない。
都会の奴からすれば、今時新聞って思うかもしれないが、なんとガマ口県携帯の電波が入らないのである。
仕方なくコーヒー片手に新聞を読むのが日課なのである。
「なになに?三田谷区の住民税流出が止まらない、このままだと住民サービスに影響が出る可能性あり。だと?」
朝からいいニュースだ。
つい最近、三田谷区に出張に行かされた時のことである。
人口増加率No. 1日本で1番住みやすい街、三田谷区!みたいな幟を所狭しと並べられ、区長からは私の成果が実ったおかげ、地方創生の参考にして欲しいだとか煽りに煽られたのである。
「何もしなくても人口増える都市部の癖に、田舎の公僕にご高説を垂れるからバチが当たるんだよ、バカ区長が。」
とんでもなくいい気分になってる時にコンビニにど田舎特有の芋臭い女子高生が入ってきた。
「ねぇ!今日タピる?」
「どうしよう?タピってもいいかな?あれカロリー高いから太るんだよねー。」
クソみたいな会話が聞こえてきた。
何がタピるだ、お前をタピるぞボケが!都市部じゃ3年前にブームは終わったわ!
ど田舎特有の都市部のブームが過ぎてから流行り出す奴アレだ。
まあ、こんな芋臭い餓鬼はどうでもいい、次のニュースだ。
「翔んで埼玉の新作を製作だぁ?またこれか…」
深いため息を落とす、この映画が流れるとガマ口県を含む真のど田舎3県は荒れるのだ。
日本には真のど田舎が3県ほど存在することはあまり知られていない。
よく田舎は休日にワオンしか行くところが無いと言われるが、そのワオンモールが無い県が3県ほど存在する。
これをガマ口県では真のど田舎と言うのだ。
「埼玉は別に田舎じゃねえからな… 似非田舎をやられると真のど田舎県は反感を持っちまうんだよ。」
地上波で流れた時は、ガマ口県庁に文句の電話が大量に掛かってきて対応に追われたのだ。
多少憂鬱な気分になりながら、読んでいた新聞を棚に戻すと今日も1日頑張るぞいと思いながらコンビニを出た瞬間意識が途切れたのである。
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「ニュースをお伝えします、今日の午前8時ごろ、無職の86歳の男性が自動車のアクセルとブレーキを踏み間違えてコンビニに入店したとのことです、30代の男性が1人死亡、男性は踏み間違いの容疑を否認しており、詳細な現場検証がなされる様です、以上ニュースをお伝えしました。」