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幼馴染と彼女の物語  作者: だいちき
3/6

3話 崩壊の始まり

アクセスありがとうございます。


 放課後でも部活が終わった時間帯の校舎にいる生徒の姿は皆無で、異様な静けさに昼間と違う気持ち悪さを抱きながら、匠真は廊下を歩き通い慣れた教室へと向かう。


 日常の雑音が無く、自分だけの足音が廊下に響き渡るのが不思議と恐怖心を煽るため、いつのまにかつま先歩きとなり、足音を最小限にして歩き続ける。


「・・・・あっ開かない」


 教室に辿り着くも、2つあるドアは既に施錠されているため中に入ることができない。


「鍵は職員室だったよな・・」


 諦めて帰ろうと思うも月曜までに希望日時を書いたプリントを提出することを思い出したため、仕方なく鍵が保管されている職員室へと歩き出す。


 薄暗くなっていく廊下を1人歩く匠真は、教室棟2階から職員室がある一般棟へと繋がっている渡り廊下のまだ夕陽に照らされている校舎西側にある渡り廊下を歩く。


 眩しい夕陽を窓越しに眺め歩いた匠真は一般棟の東側1階にある職員室に続く廊下は照明が点いているため、安心しながら歩いている途中で、聞こえてはいけない誰かの声が聞こえたような気がして思わず立ち止まる。


「・・・・」


 さっきのは気のせいだと思い込もうとする意識に反して、耳は微かな音を拾おうとして敏感になっていく。たった数秒でも数分に感じていた匠真の耳は声を拾うことができず、気のせいだと決めつけ止めていた足を力一杯動かして職員室へと辿り着いた。


「しつれいしま〜す」


 明るい職員室のドアを開けるとまだ数人の教師達が仕事している姿があり、ドア近くに座っていた男教師が振り返ると野球部顧問の新垣だった。


「なんだ、おまえか? こんな遅くにどうした?」


「えっと・・教室の鍵を貸してください。月曜に提出する三者面談の紙を忘れてしまって・・」


「そうか。鍵はそこの鍵ボックスにあるから持って行きなさい。それと、照明の消し忘れはしないようにな?」


「はい、わかりました」


 匠真は再び背を向ける新垣に向けていた視線を教えてもらった鍵ボックスに向けて歩き、2ーBと標記された鍵を手に職員室を出る。


 歩いて来たまだ明るい経路で向かおうと思うも、さっきの場所で聞こえた声が聞こえたら嫌だなと思う匠真は、一般棟から教室棟の中央にある最短距離の渡り廊下の1階を歩くことにする。


 中央の渡り廊下から先は照明が点いていないため暗く点灯させようと考えるも、消し忘れて怒られるのが嫌だなと思い、スマホにあるライトを点灯させ歩いた。


 教室のドアにある鍵穴を照らしながら差し込み解錠しドアを開けて教室に入る匠真は、自身の足が誰かの席の椅子に当たり鳴らした音にビクッと驚きながらも窓際の自分の席に辿り着いた。


 自身でやらかしたか音で胸の鼓動が早まっている匠真は、無事にプリントを回収してカバンに入れて教室を出て施錠したのを確かめ小走りに歩き出す。


 あとは鍵を職員室に返すだけと思いながら向かったせいなのか、無意識に中央の渡り廊下がある暗い中央階段よりもまだ明るい西側の渡り廊下へと向かっていた。


「・・・・あっ」


 西側の渡り廊下に来たところで道を間違えてしまったと気が付いた匠真は、足を止めて振り返るも遠回りするより声は気のせいだったと決めつけそのまま西側の渡り廊下を歩き進んだ。


 廊下よりも階段は足音が反射し響きやすいため、匠真は再び足音を立てないよう歩き、1階の廊下へ出て数歩進んだその時だった。


「んぁ!」


「しっ!」


「えっ?」


 不意に聞こえた声に匠真は足を止めて周囲を伺う。


「・・・・こえ・・」


「・・だっ・・・・はげ・・・・もん」


 周囲を意識していた匠真の耳は明らかに男女の断片的な声を拾ってしまった。


 その後も微かに聞こえる声がどちらの方向から聞こえてくるか分かってしまい、心霊的な怖さは消えて無くなった代わりに好奇心が湧き上がり、声がした方に進む。


 職員室へと行く途中にあるのは保健室と宿直室、そしてトイレだ。匠真は暗くドアが閉まっている保健室と宿直室は違うと思い、トイレへと忍び足で進む・・。


「ぅん! もっときて・・」


 トイレに視線を固定し近付いていた匠真が、ちょうど保健室の前を通り過ぎる途中で、不意に真横から聞こえた女子の甘い声にドキッとして足が止まる。


「・・キッツ・・やべ・・もっていかれそう」


「・・・・あっ・・この・・まま・・いい・・きて」


 反射的に保健室に顔を向けた匠真の視線は閉められたドアからゆっくりと上へ移動し、閉め忘れられただろう換気窓を見つけて固定される。


 途切れ途切れに聞こえる声よりもリズム良く何かと打ちつけ合う音に匠真は聞き覚えがあるため、保健室で誰かが何をしているか容易に理解できる。


「・・マジかよ。バレたら退学もんだぞ」


 このままドアを乱暴に開けて見知らぬ男女の情事を邪魔する趣味は無い匠真は、そのまま自分の存在がバレないように音を立てずに歩き出す。


「・・え?」


 背後の保健室から聞き慣れたスマホの着信音に匠真の足は石化したかのように動かなくなり、数秒後に音は止まった。


「・・まさか・・・・人気曲だから、女子なら設定するの多いよな・・・・でも」


 そう思いながら匠真の右手はズボンのポケットからスマホを取り出し、あの曲を着信音に設定している美優に電話をかけて耳に当てる・・・・人違いだと願いながら。


 耳から聞こえる無機質な呼び出し音からわずかに遅れて、あの着信音が保健室から聞こえた瞬間に石化していた足は破壊され、力が抜けると共に膝を廊下に強打するも痛みは微塵も感じない。


 繰り返しなり続ける呼び出し音と保健室から聞こえる着信音は、相手に切られたことによって互いの音は消えてしまった。


「・・・・マジかよ。大会のミーティングって言ってたじゃん・・・・美優」


 廊下にスマホを叩きつけたい衝動を耐えながら、姿は見なくても彼女が誰か知らない男と身体を重ねている現実に声を殺して涙を流す。


「・・クソッ・・誰なんだよ男は」


 すぐそこで彼女の浮気現場があるのに、無意識に美優の浮気を認めたく無い想いが邪魔して、匠真は保健室へと怒鳴り込めず震える右手でもう一度美優に電話をかけた。


 再び保健室から聞こえる美優のスマホの着信音とスピーカーから聞こえる呼び出し音が同時に止まった直後に美優の声がスピーカーから聞こえた。


「も、もしもし?」


 明らかに何かに耐えている普段とは違う美優の声質を聞く匠真は、美優にかける言葉が出てくることなく沈黙を貫いていると、美優の背後から囁くように微かに聞こえた声が誰なのかを一瞬で理解した。


 握り潰してしまうぐらい右手に力を込めてミシッと音が鳴ったのを聞いた匠真は、そのまま通話を切ってアドレス帳アプリを開き、目的の男の名前が出るまでスクロールして指が止まる。


 匠真のスマホ画面に表示された名前は、幼馴染で親友だった岩崎慎吾の名前だ。


 押し潰すように名前をタップして表示された電話番号を迷わずタップし、呼び出し音を耳で聞いていると、保健室から慎吾が持つスマホの着信音が聞こえた。


「・・・・慎吾、お前だったんだな」


 そう呟く匠真は、慎吾が出る前に赤色の終了をタップしポケットに仕舞い込んで、2人に見切りをつけたかのように職員室へと向かったのだった・・・・。



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― 新着の感想 ―
[一言] 作者好きだね、幼馴染の寝取られ孕みネタ。 音だけで直接情事を見てないから、偶には変化球で、シェークスピアの「オセロ」風の悲劇のプロットにしてみてはと思う。 浮気と思って散々ざまぁして彼女を追…
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