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幼馴染と彼女の物語  作者: だいちき
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2話 忘れ物

アクセスありがとうございます。



 教室の片隅で落ち込む匠真にニヤつきながら歩み寄るクラスメイトに周囲で見ていた他のクラスメイトはいつもの光景だったため気にせず帰り支度やスマホに視線を向ける。


「美優からの返事無しか・・」


 彼女の美優から返事がないことに落ち込む匠真が大きくため息をついたところで、誰かが右肩に手を置いた感触に顔をあげるといつもの顔だった。


「たく? なんかテンション低くないか? 話聞くから、練習行こうぜ?」


「慎吾か・・昼休みにさ、美優にメッセージ送ったんだけど返事来ねぇんだよな〜」


「またなんか、やらかしたか?」


「いや、何も・・」


「美優ちゃんも昼休みは女子トークで忙しくて、たくばっかりかまっていられねーんじゃね?」


「そうかな・・メッセージぐらい送れると思うんだけどな」


 幼馴染でクラスメイトの岩崎慎吾は、同じ野球部で次期キャプテン候補らしく、投球練習を帰宅部女子が見学するほど人気者・・だが、ゼロ試合のため実力は不明だが容姿で全てを補完するイケメン生徒だ。


「今日ぐらいだろ?」


「うん・・倦怠期かな?」


「たく・・考え過ぎだし、このままだと将来は束縛野郎になって嫌われるぞ?」


「それは・・無理。でも、まぁ部活終わったら伝えればいいんだった」


「はいはい・・羨ましいね幼馴染の彼女持ちのたくは。俺なんか、むさ苦しい先輩達と今日も帰らなきゃなんねーし」


 慎吾は匠真の机に両手を付いて項垂れる。そんなイケメン幼馴染の姿に苦笑いしながら匠真はフォローする。


「期待のエース様だから、我慢しろよ?」


「はぁ・・なんか俺が練習行くの憂鬱になってきた・・」


「はいはい。スポーツイケメン野郎がそんなことで憂鬱になる程、青春してない訳じゃないだろ? 今日も見学に来た女子に絡むんだろ?」


「・・バレてた? 睡眠時間が減って大変なんだよ俺は」


「遊ばず寝ろよ? 成績も落ちてるの知ってんだぞ?」


「ふっ・・まだ慌てる時間じゃない」


「意味わかんねーし。さっさと行くぞ練習・・」


 ニヤつく慎吾の肩を押し上げ席を立つ匠真は、幼馴染のモテ期なんて崩壊すれば良いのにと思いながら教室を出て部室へと歩き出す。


「ちょっ・・たく! 待てって!」


 匠真に置いて行かれる慎吾は、少し離れた自分の席に戻りカバンを手に取ってから廊下を歩く匠真の背を見ながら口元を緩ませ追いかけた。



『今日もいつもの場所で』


 部室で練習着に着替えた匠真はシューズを履く前に美優にいつものようにメッセージを送り、グラウンドへと駆け出し練習に意識を集中する。


 顧問が外野へと金属音を鳴らして白いボールを高く打ち上げている間に、匠真の視線は隅でピッチング練習をする慎吾を眺める女子生徒の数を数えて、幼馴染に舌打ちをしていると不意にボールが視界に飛び込んだため反射的にキャッチしファーストへ送球する。


 よそ見するなと顧問に怒られた匠真は適当に返事をして守備練習時間が終わり、2名しかいない新入部員の打撃練習を手伝いながら休憩し、再び自身の守備練習を再開して終わりの時間を迎えた。


 練習終わりの挨拶時に顧問の新垣が珍しくグラウンドにいる匠真達を呼び集め何を言うかと見つめていると、新入部員が2人だと廃部になる可能性があると職員会議で言われたと笑いながら告げて去って行った。


 新垣からの衝撃的な言葉に匠真達の空気はお通夜状態となり、誰も言葉を発しないまま俯きながらグラウンド整備を終わらせ部室へと静か歩き出す。


「・・・・はぁ、廃部ってマジかよ・・なぁ慎吾・・・・慎吾?」


 いつも近くにいる慎吾から反応が無く、部室を見渡す匠真の視界に彼の姿はなかった


「・・あの、先輩」


 ポツンと取り残された感覚になっていた匠真は、背後から声を掛けられた驚きで我に返り振り返る。


「・・こ、後輩くん?」


「その、岩崎先輩なら、途中で帰ってしまいました」


「慎吾が帰った? まさか、怪我でもしたのか?」


「い、いえ・・理由は知りませんが、グラウンドに方を気にしながら校舎へと制服で向かう姿を見ましたから」


「そうなんだ・・ありがとう後輩くん」


「い、いえ・・すいません先輩」


 匠真は慎吾が練習を休む理由がわからないため、とりあえず怪我が原因ではないことに安堵し止めていた足を動かし部室に入った。


 汗だくで不快指数マックスの匠真だったが、着替える前にカバンにあるスマホを取り出し画面を見ると美優からメッセージが届いていたため笑顔を取り戻し開封する。


『たくちゃん、今日は来月の大会に向けたミーティングを練習後に急にするって監督に言われたから先に帰ってて。ゴメンね〜。デート楽しみにしてるよ』


 回復し始めていた気分は一緒に帰れないことがわかり再び降下し、崩れ落ちるかのようにパイプ椅子に座る。


「はぁ・・ミーティング・・・・ミーティングなら仕方ないよな」


『今日は先に帰るよ。試合、観に行くからね』


 返信してから練習着を脱いで汗臭い身体を美優と帰れないため雑に手入れし制服に着替え、重い足取りで部室を出る。


 二階建ての部室棟前を歩き正門へと向かっている途中で母親から三者面談についてのメッセージが来たことで、そのプリントを教室の机の引き出しに忘れていることを思い出し行き先を教室へと向けたのだった・・・・。



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― 新着の感想 ―
[一言] 教室に行ったら美優と慎吾の励みに遭遇する流れかな。
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