3 世界が変わっても
この物語はフィクションです。実際の団体、国、宗教、その他諸々が似通っていても、それは完全に気のせいです。実際のそれとは一切合切関係ありません。あと含むところもありません。
なので「これちょっとおかしくね?(ワラワラ)」とか「いやこれは違うだろ(プークスクス)」とか「ここは実際はこうだろう(ドヤァ)」等々のご意見、ご感想、文句、誹謗中傷にはお答え致し兼ねますので、悪しからず。
四年前のあの日、地球は神を名乗る謎の存在によって異世界と統合され、その日を境に科学とファンタジーが綯い交ぜになった。
それにより人々の生活は激変した――ワケはなく、そりゃあ最初の二年は国交とか文化の違いとかで苦労はしたけれど、異世界側の人々が驚異的に柔軟な思考と発想と寛容性があったために、予想を遥かに超えて混乱なく事態は収束した。
中でも驚異的だったのが、アメリカから一方的に宣戦された魔法国家マルスギアが、多額の賠償金を受け取っただけで後腐れなくそれを許したことだ。
魔法国家の代表であるリクハルド・ヴァン・マルスギアは、これほどあっさり受け入れるとは思っていなかったために訝しむ大統領代理に、
「そういうこともある」
とだけ言い、その後大宴会へと突入したらしい。
その宴会中にリクハルドと大統領代理――ミッチェル・アディントンは乗せられるまま軽いノリで飲み比べをしたようで、実はどちらも酒豪であるため物凄く意気投合したそうな。
それが縁で、現在アメリカとマルスギアは互いに技術協力をし合っているらしい。
宴会が縁でそうなるとは。地球の拗らせている国際情勢を異世界人が見れば、きっと鼻で笑うに違いない。
そんな感じで国交が拓かれたからといって異世界人の全ての判断が大らかなわけではなく、例えば窃盗などの犯罪行為で死罪とか、そういう残酷な一面もある。
異世界の大陸に軽い気持ちで渡り、そしてちょっとしたことでトラブルを起こした旅行者が即殺されるという事件もあり、例によって国際法や人道的におかしいと抗議したところで受け入れられる筈もなく、逆に「戦争するか?」とマジレスされるだけであった。
こういう事件が頻発し、異世界の人々はおおらかではあるが血の気が有り得ないほど多いと、全ての地球人が知ることとなるが、実はその程度ではないのだが、それは後述しよう。
ちなみに性犯罪者は局部を切り落として河原に晒し者にするそうだ。
地球でもそうして欲しいと強く願う者は、全世界で多数いるであろう。
もっとも当人たちはそれが残酷だとかは全く思っているわけではなく、むしろ回りくどい裁判やら懲役刑、執行猶予などは理解出来ないようだ。
それに手間を掛けるくらいなら首を撥ねたほうが早いとばかりに、竜王国ラーヴァは戦争で捕らえた将校や議員、主席を皆殺しにした。
これに関して地球の常識で「非人道的だ」と、国全土の各主要都市で抗議デモが行われたようなのだが、された即日に「喧しい」とばかりに竜騎兵一千騎が再び飛来し、それら全てを都市諸共焼き尽くしたらしい。
そして一四億いた総人口がなんと半減してやっと、異世界人に地球の常識は一切通用しないと全世界が理解することとなった。
竜王国による戦時中の無差別大虐殺とか魔法国家との戦争終結の経緯とかを鑑みれば、その程度のことは誰でも判ると思う。
あ、でももしかして、言葉が通じるなら話せば判るとでも考えていたのかも知れない。
生憎、言葉は通じても話しが通じなければ意味がないのに。
テロリストに平和と正義と暴力の無意味さを説いているようなもんだ。
テロとは関係なく、話しは出来るのに言葉が通じないヤツは、地球でもいっぱいいるのに。
バカなのかな?
だけどそんな苛烈な竜王国の人々は根っからそうなわけではなく、いい意味でも悪い意味でもやられたら徹底的にやり返すのを信条としているらしい。
中国がそんな有様になって、隣国になっちゃったため次に何をされるか判らないと判断した日本と台湾は、相当怯えながらも外交に踏み切った。
結果、外交は大成功となり、現在竜王国では点心が大流行し、更に着物が最先端のファッションになって、他の異世界大陸の話題になっているという。
両国は竜王国と友好国となり、日本を訪れた際に新幹線を見て感動した国王ジークベルト・ドラッヘレイターが是非導入したいと言い出し、現在竜王国縦断新幹線開発に着手している。
ついでに、台湾を訪れた際にクリムヒルデ妃が小籠包と水餃子にどハマりしてしまい、自国産の小麦をはじめとする農産物と食肉の輸出を優先的に行うと言い出し、更に料理人を数百名ほど修業に出させるという、突飛な行動に出た。
美味しい食事は世界を超えるらしい。
余談だけど、その食肉は限りなく豚肉に近いそうだが、それが一体なにの肉なのかは笑顔を浮かべるだけで答えてくれなかったそうで、でも人が口にしてはいけない類のものだったり、地球の常識に照らし合わせた上でも人道的に問題があるモノではないと言っていたそうだ。
ただそれは家畜ではなく、野生動物の食肉であるという情報だけが開示されたらしい。
まぁ、ファンタジーに馴染みのある方々なら、きっと言わずともなんとなーく理解出来るであろう。いわゆる「お約束」というヤツだし。
そんな点心沼にいる王妃様は、料理人の修行が終わるのを待ち切れず、台湾に住むと言い出し王と近衛を大いに困らせたそうだ。
よって現在、日本の冷凍食品点心セットを爆買いしている。
日本の冷凍食品は世界一だからね。
でもそれを買ったところで的確に解凍調理が出来なければ本末転倒なわけで、それに伴い日本から、もちろん有料となるが王都周辺に十基の風力発電機建設と、城の外壁を隙間なく囲うように太陽光パネルを取り付けて、それを充電するべく大容量で産業用のリチウムイオン蓄電池数百台を、王城にある地下大空洞に設置した。
電子レンジで冷凍食品を解凍調理するためだけに。
そのようにして太陽光パネルを設置した結果、やや燻んだ灰色だった城の外観は見事な艶消し黒になり、常々それに不満を感じていたクリムヒルデ妃が大いに感動し、技術者と作業員全員に高位の魔力結晶である〝竜紅玉〟を贈り、総理には最高位の魔力結晶の〝竜泪〟を贈り、異世界大陸の羨望を一身に集めてしまった。
だけどそれらを贈られたとしても、地球人にとっては価値が判らない上に、どうやって使えば良いのかすら判らないため、ぶっちゃけ宝の持ち腐れだったりする。
リチウムイオン蓄電池を設置したその地下大空洞は、白色の竜――ホワイトドラゴンの塒であり、彼らは寝ると無意識に冷気を出してしまうため、中は常に気温が零下であるそうで、よって熱暴走の可能性があるその蓄電ユニットの保管にはもってこいであった。
それを設置したのはもちろん日本の技術者だ。
彼、彼女らは蓄電池設置で初めて竜を目の当たりにして滅茶苦茶怯えていたのだけど、実は気さくな竜たちと仲良くなったそうだ。
そして電波が届かないためスマホなんてなんの意味もないため、余暇の楽しみで持ち込んだボードゲームにその竜達が興味を持ち、それが元で竜王国では様々なボードゲームが流行り始めた。
特に将棋は「竜王戦トーナメント」が竜王国の人々や竜たちの心に綺麗に刺さったらしく、己の知力と智略、発想力で争うそれは、元々物理的能力のみが重要視されていたドラゴン達の序列に一石を投じる結果となったそうである。
ちなみに人の姿に成れるのは一部の上位竜だけであるため、それが叶わないものは爪の先で器用に摘んで指すらしい。
あと知力を鍛えればそれだけ変態能力への近道になると実証されたらしく、今では将棋がドラゴンの嗜みとなっちゃったそうだ。
そんなドラゴン達の暑苦しい熱望で、日本の技術者と王国の魔法使いが全面協力して、竜王戦トーナメントが衛星回線を経由し竜王国の上空に、プロジェクションマッピングでパブリックビューイングされるという、ちょっとした色々と新技術を使って公開された。
この技術は、アメリカと色々技術協力関係にあり、身一つで競り合う種々様々なスポーツを取り入れ始めた魔法国家も興味津々であったそうだ。
それ以降、なにをどう間違えたのかは知らないけれど、同じ技術を利用して日本のサブカルチャーまでもが竜王国で流行り出してしまったそうな。
原因は、それのテストのために色々なサブカルPVを、どーせ興味なんか持たないだろうと軽い気持ちでちょっとだけ流しちゃったことにある。
最近の流行語は、
「撃って良いのは、撃たれる覚悟のある奴だけだ」
とか、
「私だけかね? まだ勝てると思っているのは」
とか、
「諦める? 諦めたら、そこで死合終了ですよ」
とか、
「諦めるのは最後までいっぱい頑張ってからにして下さい!」
とか、
「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
とか、
「『覚悟』とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開くことだッ!」
などなど、どれも何処かで聞いたことが有るような無いような「名言」ばかりだ。
それに関しては、責任者出て来い! と言いたい。
そんな技術提供をした日本への謝礼はというと、竜の鱗5千トンであった。
そう、単位が「枚」ではなく「トン」で。
最初日本側は戸惑っていたのだが、詳しく調べてみるとレアメタルよりも遥かに使い易く、更に性能面でもそれを上回るのが判明し、逆に買い取ると働き掛けたのだが、そんな物は捨てるほど有って困っているから、こっちが処理代を払いたいくらいだと返答があったそうだ。
そうはいっても、元々レアメタルに乏しい日本がそれに変わる物資を過剰に提供してくれる国相手になにもしない筈はなく、だが現時点で提供出来るのは技術と娯楽だけであるため、それの輸出に力を入れて、更に諸外国には高水準高性能の技術製品を輸出し始めた。
そんな他国では高級品、自国ではただのゴミである竜の鱗を欲しがって様々な国家が外交を始めたが、竜王国では頑なに日本と台湾にしか提供しないと明言しちゃったのである。
副音声が気になるところだけど。
だけどそれで面白くない近隣の国――特にことある毎に日本に色々言ってくる韓国はそれでもしつこく外交を重――る前に堪忍袋の尾があっさりと切れた竜王国側が竜騎兵一千騎を出動させ、その全土に三日三晩ほど打ち上げ花火を打ち下ろして黙らせた。
上空に打ち上げるならいざ知らず、上空から打ち下されればそれはほぼ兵器と変わらず、おまけに中国の惨状を知っているために、黙るしかない。
ちなみにその花火は日本製で、職人手ずから作った逸品である。よって遠くから眺める分には大変美しかったそうだ。ちょっと地面が近過ぎたけれど。
もっとも花火を提供した職人達も、まさか娯楽である花火が兵器利用されるとは思ってもいなかったであろう。
まぁそんな感じで、一定のトラブルは四年経った今でも変わらず続いている。
中東のテロ組織がインクラヴァーナ王国から来た勇者パーティに殲滅されたとか、アフリカを視察したファエラス神聖公国に居を構える魔王が紛争地帯の難民に心を痛めて、単独で乗り込み数日で平定したとかはあったけれど、異世界人との交流は概ね良好だ。
関係ないけど、そのどちらも何故かネット回線を通じて全世界に生中継されたのである。
銃弾や砲撃が飛び交い、だがそれをものともせずに物理で封殺し、有無を言わさず大量虐殺した上で拠点を地形ごと消し飛ばした勇者パーティの所業に全世界がドン引き、単騎で軍団すら超える物量を誇る総軍相手に無双し、それでも誰一人として死者を出さない魔王が全世界に賞賛されるという事態が起きたりした。
世界中で勇者の評判が駄々下がり、魔王の人気が爆上がりしたのは、当たり前であろう。
そんな中、サブカル大好き日本人が魔王様グッズを発売するとか、ちょっとした社会現象となっていたりする。
あと一番の変化は、地球人が異世界の何かに影響されたのか、僅かながらも魔法を使えるようになったことであろう。
ちなみに異世界人は、その魔法で大抵の言語を翻訳出来るらしい。
便利だ。羨ましい。
二十二世紀にならないと作られないであろう、食べるだけで言語を理解出来るという蒟蒻なみに欲しい技術だ。
実現出来るのかは怪しいところだし、そもそもそんな時代になったら蒟蒻如きにそんな機能を持たせるまでもなく、何らかの記憶媒体が出来ていて然るべきであろうが。
そんな夢のないことを言っちゃうと、そんな何かが大好きな人たちに怒られそうだけど。
でも私は敢えて言う。
そんな度を越えた我侭を言うヤツの怠惰な願いを聞いちゃう未来メカなど要らない。壊してしまえ――と。
「夢」と同じく、「願い」は叶えて貰うものではない。叶えるものだ。なのにそれへの努力もしないで叶えて貰おうという惰弱で幼稚な精神性しか持ち合わせていないヤツは殴っていいと思う。
そんな余談は他所へと置いておいて、そのようにして世界は変わったのである。




