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「眠れる森の悪魔」 読書感想文

作者: 白猫

「眠れる森の悪魔」読書感想文


 私が眠れる森の悪魔に出会ったのは、大変幸運な事に鹿条先生が投稿を始めて下さってすぐの事でした。


 思考能力限界まで溶けきったバカのくせに活字中毒で、その反動かIQの高い主人公が出てくる話を特に好んで読んでいた私にとって、悪魔の森はこの上なく好みでこれでもかと性癖にぶっ刺さり、読み初め一行で即陥落ドハマりした。


 初期設定自体は私のような者にも入り込み易くテンプレで、それでいて常軌を逸する状況からのスタートと物語への興味を惹き付けられる。

 どこまでいっても破綻しない作り込まれた世界観。悪魔の名を冠するに相応しい各々がおぞましくも美しく際立ったキャラクター達。シリアスでもコメディとも言いがたい絶妙な空気感で進むお話。何よりも主人公シェリエルへの絶対的好感度!めちゃくちゃ賢くて可愛くて図太くて不憫でおかしくて全方面スーパークールで過去一好きな主人公。あと名前もすんごく可愛い。

 もう一瞬でベリアルドの虜で。400話近く読んでいて面白くなかった話が一話もない。正確に言えばマリア回とかライア回とかの個人的ドン引き回はあるけれど、それはそれでホラー的な背筋をぞわっとさせるとか需要がどこかにあるはずで色んな意味で面白い。人間の深部的な。でもここは一回読んだら満足する。恐いからね、うん。

 この出会いを思い返す度に鹿条先生には感謝の念が絶えません。よくぞ投稿してくださった。そしてよくぞ見つけた私。先生本当にありがとうございます!

 この話は即書籍化するだろうなとわくわくしながら回を追っていたけれど、驚く事にブックマークが予想よりも伸びない。驚愕!ランキングぶっちぎりの殿堂入りでもおかしくないのに!

 みんな知らないのかな……?内容的に女性の方が好みそうだし恋愛ジャンルの方がランキング上がりそう?とか勝手に思いつつ、とにかく知らないって本当に可哀想だ。自分がそうだったらと考えただけで辛い。全人類みんな読んで!特に業界の偉い人!

 こんな面白い話を延々読み続けられる幸運に日々感謝しています。本当にありがとうございます。


 悪魔の森は長編なので好きな回とかも出てくる。というか沢山ありすぎて簡単に言うと全部!ってなるのだけど話が進まないので少しだけ特別に好きな回を上げて見ましょう。


 まず冒頭ですよね。主人公シェリエルと養父となるセルジオの初対面。お互いそこまで思い入れのない二人の熱のないやりとりに何故かときめく。ここが好きすぎて何回も読むから、結局流れでその続きも読み進めてしまうという個人的魔回。

 この温度感で、誰が赤ちゃんのときから違法真っ黒の奴隷小屋からオークション経由で助けられた女の子と、それをえげつない金額でぽーんと買った親族の感動の対面だと思うのか。

 思うに、なかなかに酷い現状に対する悪魔達のこの悲壮感のなさが本作品の一番好きなところかもしれない。最初っから飛ばして二人とも頭おかしいよー。好き!

 読み返して改めて、よくセルジオはディオール様にあんな嘘をつこうと思ったな。考えるの面倒くさくなったのか。確かに自分の子にすることが一番簡単な解決法……ディオール様の嫉妬心を考慮しなければ!そこをスルーできるセルジオが普通に怖い。共感能力の無いベリアルド所以?それともセルジオだから?私ならヘルメスのせいにするよ……。セルジオifを読んでも全く理解出来なかったし……。

 そういうキャラクターのちょっとした選択肢に理解出来ないベリアルド味を感じてゾクゾクする。

 ディオール様に捨てられるとか思わなかったのか。もしディオール様がキレて浮気に走ったらセルジオはどうするのだろう?お相手ブッ⚪?セルジオの嫉妬ってどんなん?などなど、色々と妄想が働いて二度三度と美味しい回でした。

 あとずっと疑問なのが、シェリエルは前世のいつ実父のことを知ったのだろう?まぁセル&ディオ死亡後のどっかで、ということなのだろうけど、私が知る限り記述は無かったのでまた読み返して探して見たいと思う。誰か教えて!


 他にも読みどころはたくさんで、シェリエルとディディエ兄妹のハートフルメモリーや借金大王による商業チート、黒の悪魔の猫ちゃんごっこに灰ピンクな神官さん光化計画、きゅんな青ドラ赤ちゃんをゲットだぜな回などなど読み飛ばし不可避な面白パートを差し置いて一押しなのが、魔術開発でスカした先生&兄をびっくりさせちゃうシェリエルちゃんの回!どや!

 ここは本当にオススメですね。年齢を重ねる事にやらかしおる最凶な二人の数少ない可愛い場面!数少ない……?いや、正座回もあるね……マルゴット先生のお小言回も……結構あったわ。

 ん、まぁ、ユリディディにイラっとしてもここをもう一度読めば、あぁ、こんな可愛い時期もあったのねとあらゆる溜飲が下がること請け合いです。驚きの余りに立ち上がった馬車の天井にこっそり頭ぶつけてたって妄想とセットで大変美味しい日常回。顎クイもあるよ!

 そして真横で交わされる子ども達の驚愕まみれの会話を一切聞いていないセルジオよ……。爆笑。ほんと笑う。セルジオずっと出てて欲しい。


 次!絶対に外せないのは、ディディエ(自分の)策謀に死す……の回。

 ここは思わず泣いてしまいました。シェリエルの混乱と油断と覚悟と場面転換の描写にドキドキが止まらない。何回も何回も読んでしまう。仕込んでた闇医者ヨハンもきっちり回収してポヤポヤユリウス使い倒してディディエの治療に当たるシェリエルの格好よさよ!もう本当に堪らない一幕。敵死にまくってるけど。

 実は最初の投稿ではここでディルクがシェリエルに怒鳴ってた場面があった気がするのですが、いつの間にか削られていた。夢?ディルクスキーには少しだけ悲しかったけど、シェリエルの格好よさが増したので鹿条先生は凄い天才だなと思いました。

 その後のユリウスの膝だっこに分厚いユリシェリフィルター装着して愛を感じて、セルジオの謝罪と自供にはい、ベリアルドーとほっこりしてやっとほのぼの終わる。あ、策謀セルジオだったわ。


 ところでここの最後、セルジオさんのセリフもずっと気になっているところ。

 〉「治癒魔法は、万能ではありません。多少の傷なら問題ありませんが、自然治癒の難しい傷などは生命力を前借りして、無理やり治すんです。……ユリウスの受け売りなんですけど」


 ……え?どこかの誰かさん睡眠の代わり治癒魔法ぶっ込んでませんでした?それとはまた別か……な?ここ何かの伏線……じゃないですよね?

 ここじゃなかったとしてもライアとの不穏な関係とかまだまだ出てくる。い、一蓮托生とかしてない……っすよね?もー、思わせ振り!好きなだけ深読みさせてもらいますありがとうございます。


 好きな物語の展開を予想するのは誰もがすると思うのだけど、悪魔の森は全然予想がつかない。私だけかも知れないけど毎回びっくりするぐらい外れる。(たまーに合うと死ぬほど嬉しい)

 そしてその外れ方がもう、ただただ格好いい。溜め息が出る。うそん、ってなってなにこの展開!って鳥肌が立って、その思考に溺れる。先生の掌の上で転がされる幸せ。読み進める目が全然止まらないし、邪魔されたときは苛立つ。まさに悪魔。 


 その読めないモノ不動のトップ、深淵大魔王ユリウスさん。

 もうこの人語りだすとマジ終わらないので大人しくシェリエルのものになってて欲しい、世界平和と読者の安寧のために。

 こんなキャラクターいる?ってくらい深淵。ディディエとかリヒトとかアロンとかルイスとか、格好いいキャラクターが格好いい事すると素直にきゅんとなるが、ユリウスさんはもう深みが凄すぎて無理。手に負えない感が凄い。シェリエル以外誰がこの人の相手出来るの?

 ユリウスが怪しくなるたび思わずオウェンス視点で幸せを祈ってしまうけど、幸せとは?とか定義聞かれそうでもうなんも言えねぇってなるのですよ。そりゃオウェンスも「シェリエル様、頼みます!」ってなるわ。でもシェリエルも、ユリウス以外誰が相手出来るの?って感じだった……。


 まだまだまだ挙げるべきポイントはあるけど本当に終わらないので、最後にちょろっとヘイトヒロインマリアちゃんに触れて話を締めようと思う。

 マリアは本当にめちゃくちゃムカつきます!でもまぁ14歳の中二か、と思えばまだいける。一生関わりたくないと思わせるタイプ。

 恐ろしいのが、これが「善性キャラクター」なこと。本当にむかついて嫌悪感しかないのに善性として扱わないといけないこの理不尽。冷静になれば確かに悪い子ではないのです……。こっわ。この矛盾にゾッとする。自分の醜さを認識しながら読み進めということですね先生、Sが過ぎますよ!とか最初は思った。そのSに耐えていると一周回ってマリアの怖さにはまってくる。

 マリアが出てくるとホラーパート始まったな、と思いながら読むと面白いですよ!

 ついでにユリウスにはマリア=台所のGくらいに思ってる(意訳)らしいので、ユリウスが絡むあんな場面やこんな場面でソレが頑張ってると思うとまぁ凄絶……ホラー、こっわ!


 物語もめちゃくちゃ面白くなってきた今、どんな展開が繰り広げられるのか本当に楽しみです。とりあえず心臓はぐちゃぐちゃにされる覚悟は出来ています!大丈夫、最後はシェリエルがすぱーんと格好よく美味しいとこ浚っていってくれるので。信じてる。

 一読者としてこれからもずっと「眠れる森の悪魔」を応援しております。ありがとうございました。

 


 






ディディエは死にません。

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