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王女の夢見た世界への旅路  作者: ライ
第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界

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25 新しい刀を求めて

 その日、私は工房を訪れていた。


「ドルマさんいますか?」


 工房長を呼んできてもらう。少し待っていると、奥から人影が見えてきた。


「ん?ティアか。すまねえな、鉱石の管理をしていたから気づかなかった。今日はどうした?」


「実は銀月が折れまして。いくつか相談があってきました。」


 私はそう言いながら折れた銀月を見せる。


「こりゃあ…奇麗に真っ二つだな。刀だけじゃなく武器全般に言えることだが、折れた武器は直せねえぞ?」


「それはもちろん。今回相談したいことの1つ目は、折れた銀月から短剣を作れませんか?」


 1度折れた武器は直せない。けれど、武器を1度金属に戻してから、再加工することは可能だと聞いたことがある。


「そういうことなら大丈夫だ。ティアの魔力を多分に含んだこの金属なら、銀月と同等の短剣を作れるはずだ。今まで短剣以上の魔術を込めることもできると思うぞ。」


 ドルマは、銀月を観察しながら教えてくれた。それから、ふと思いついたようで


「そういや、短剣には魔術を刻んでいるけどよ、刀には刻んでないよな。なにか理由でもあるのか?」


 と聞いてきたため


「魔装の時に属性変換を使うことがあるのと、無属性魔術で刻みたいものがないですから。」


 と答えた。


 例えばシリウスの魔槍は、風魔術が刻まれている。術式に魔力を流すことで風を纏えるし、風系統の魔力と相性はいいが、他の属性の魔力を纏わせようとすると弾かれる。

 かといって無属性の魔術も特に必要性を感じないため刻んでいない。


「なるほどな…で、1つ目ってことは、他にもあるんだろ?」


「もう1つといいますか、こっちの方が本題ですけど、新しい刀を打って欲しいです。それで、この素材を使いたいんですけど、どうですか?」


 私が取り出したのは、黒龍の素材だ。鱗をはじめとするいろいろな種類のものを、それなりの量を受け取っていた。また、火山や他の場所で得た貴重な鉱石も見せる。


「こいつは…黒龍の素材か!?それにこの鉱石もこの大陸じゃ取れねえものばかりだぞ。」


「少し野暮用で東の大陸と北の大陸に行きまして、その時に…まぁいろいろと。」


 説明すると長くなる上に複雑なため、細かいところはぼかして伝える。それでもある程度は、察してくれたようだった。


「刀を打つのはわかった。ただすまねえが、俺も知識としてはあっても、使ったことがない素材だらけでな。定期的に連絡するが、長くて1年かかると思う。費用も現時点じゃ分からない。」


 ドルマが申し訳なさそうに言うが、こうなることはなんとなくわかっていた。それでも、刀を打ってもらうのは、ドルマがいいと思ったからこそ持ち込んだわけだ。


「予算に糸目をつけるつもりはないですし、いくらかかってもいいですから。ドルマさんのことは信頼していますので、最高の一振りをお願いします。」


「わかった。俺も全力を込めて作ろう。」


 私は感謝を告げて、工房を後にした。その後は薬品や宝石といった、今までの戦いで消耗した分の補充を行っていく。王都であれば、行きつけのお店があるため買い物をすんなりとこなすことができた。

 この時点でちょうどお昼時になっていたため、私のお店に向かう。報告等は聞いているが、昼食も兼ねてたまには直接見たいと思ったからだ。


 半刻ほど並んでいると席に案内される。

 店員たちは私に気付いたようだが、お客として来ているときは特別対応しないように伝えているため、軽く目礼いてくる程度だ。

 昼食をとった後は、従業員用の部屋に向かい、店長のルカから話を聞くことにした。


「最近はどんな感じかしら?」


「そうですね。売り上げは順調に伸びています。店内も常に満席になるほどですし、お持ち帰りも以前より好調です。」


 私は、ルカから直近の現金出納帳を受け取って確認していく。


「帳簿を見る限り問題なさそうね。売上もしっかりと出ていて安心だわ。ん?売上に対して仕入が多くなってない?」


 ルカも思い当たることがあるようで、仕入帳を渡された。


「最近、食料品の金額が上がってるようでその影響ですね。」


 仕入帳を見ると食料品の単価が上がっているのが、見て取れる。


「なるほど。確かに徐々にだけど上がってるわ。…もう少し仕入れ値が上がるようであれば、値段の調整も考えないとね。」


「かしこまりました。」


 確認も終わったため、お店を後にする。

 王国内での農業地帯で、天候に恵まれない等の収穫量が減ったという話は聞いたことがなかった。


(おそらく税金のせいかしら。地方領主の負担が大きくなったことで、関税をかけた。もしくは、商会の税が増えたことで、売価をあげたか、その両方。)


 細かい部分は諜報員による結果待ちになるだろうが、水面下では変化がおきつつある予感がした。



 最後に王都にある冒険者ギルド支部に向かう。

 昇格したことについて伝わっているはずだが、お世話になっているデュランには挨拶しておきたかった。ギルド支部に入ると、ちょうど受付にいるのが見えたため、向かうことにした。

「デュランさん、お久しぶりですね。」


「ティアか!少しこっちに来てくれ。」


 ヂュランはそう言って、応接用の部屋に案内される。恐らく私が目立つことを嫌っているのを知っているから、気を使ってくれたのだろう。

「話は聞いたぞ。Sランクへの昇格おめでとう。」


 デュランは笑いながらも、昇格を祝ってくれる。


「ありがとうございます。思ったよりも早く昇格できました。」


 私がそう言うと、呆れた顔をされた。


「そりゃそうだろう…邪龍に落ちたとはいえ、黒龍を単独討伐するなんてSランクでも、できるやつはそうそういねえよ。2ランク昇格なんて滅多にないしな。」


 冒険者として旅をしていたときの功績は、それなりに貯まっていた。とはいえ、特別強い魔物を討伐したわけでもないので、昇格するほではなかった。冒険者としての年数の問題もあっただろう。


「そういえば…AランクとSランクってどう違うんですか?受けることができる依頼とか、あまり差はないですよね。」


 私は疑問に思ったことを聞いてみる。Sランクについては、あまり詳しいことは公開されていないし、昇格時も詳しい説明がなかった。


「実際のところ差はあまりないな。強いてあげるのであれば、周りへの影響力が高くなるくらいだ。まぁ影響力とかティアには関係ないか。」


 ヂュランは私が王女だということを知っているためこういう反応だった。実際のところSランク冒険者が騎士団に入ろうとすれば、騎士爵を授爵されるくらいの影響はあるそうだ。


「まぁなにはともあれ、これからもよろしくお願いしますね。」


「こちらこそ。よろしく頼む。」


 こうしてデュランへの挨拶も済ませて、1日が終了した。

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