15 トランスポートスクエア
その日の夜、街の入り口の門にたどり着いた。門に近づくと門番の人が近づいて来る。
「旅の方ですか?入国審査を…!?」
案内に来た1人がソフィアの顔を見て、驚きのあまり固まった。
「皆様、わたくしはソフィア・フォン・ノーランドです。わたくしを助けてくれた、こちらの方々共々中に入れてくださいませんか?」
ソフィアが前に出て、門番の人達にお願いをすると慌てて敬礼して通してくれる。
「っ!ソフィア王女殿下、失礼しました!どうぞお通りください。貴方様のご無事を心から嬉しく思います。」
ソフィアが囚われの身になっていたことは、恐らく国中に知らされているのだろう。
「それとここの通信魔術具を借りたいのですが、構いませんか?」
「はっ!かしこまりました。至急、ご案内いたします!」
ソフィアも急いで通信を入れたいとのことだったので、門にある通信魔術具を借りることになった。通信用の部屋に向かうと、人払いを頼んで私達だけになる。
ソフィアが魔術具を起動して、ノーランド王国の国王直通の緊急通信を入れた。繋がると王城の玉座と思われる映像が浮かび上がる。その中には、ソフィアの父…ノーランド王国の国王がいて、瞠目したのちに嬉しそうな表情をしていた。
「お久しぶりです、お父様。無事、王国に帰り着くことができました。」
「っソフィア!そなたよく無事で…魔族に捕まったと聞いたときは、もう会えないかと思っておったぞ…」
国王は、涙を流しながら笑顔を浮かべている。
「実は後ろの方々に助けていただきまして、その恩返しもかねてお父様にお願いがあるのです。」
ソフィアが国王にここまでの経緯を説明した。私も、魔術具の映写範囲に入る場所に移動する。
「おぉ、あなたが娘のソフィアを…本当にありがとうございます。私はカインド・フォン・ノーランド、ノーランド王国の国王です。できる範囲であれば、ご協力しましょう。」
カインド国王は頭を下げてお礼をする。ソフィアもそうだが、非公式な場であっても王族、それも国王が頭を下げることは、滅多にないだろう。
「私は冒険者のティアと申します…ですが、ティアというのは仮の名前でして…」
私は自己紹介しながら変装用の魔術具を解除する。
「改めまして、わたくしはラティアーナ・エスペルトと申します。元々はノスタルジア王国への使者として参りました。」
正体を伝えるとカインド国王も驚いたようで目を見開いている。
「ラティアーナ様…エスペルト王国の第3王女殿下でございましたか。してお願いというのはなんでしょうか?」
ノーランド王国とも国交はないため直接対面した覚えはないが、近隣諸国の主要な王侯貴族の名前は記憶していることが多い。とはいえ、国交もない国のただの王女の名前も憶えているのは滅多にないことだろう。
「わたくしの願いは、ノスタルジア王国への橋渡しですわ。今回、グランバルド帝国に対抗するために、ノスタルジア王国に同盟…あるいは、なにかしらの協定を結びたいと思っております。ですが、正式に国交がない以上使者をたてるしかありませんでした。帝国に気付かれずかつ、こちらの気持ちを伝えるために、わたくしがお忍びで参った次第です。」
「なるほど、ラティアーナ王女殿下の望みは理解しました。ノスタルジア王国には伝えましょう。準備があるのですぐとはいかないでしょうが、しばらくそちらでお待ちいただいても?」
「ええ、ぜひお願いします。」
話を通してくれるのであれば願ったりかなったりであった。
「ではそのように。ソフィアよ、少しの間ラティアーナ王女殿下のことを頼む。用意が整ったら、私もそちらに向かうつもりだ。」
「かしこまりました。」
一連のやりとりが終わって通信が切れる。
「さてお父様が動いている間、この街でごゆっくりください。宿と食事はこちらで用意します。わたくしが案内しますわ。ティア様。」
私は魔術具で変装した状態に戻して、ソフィアの後をついていく。この街についてはソフィアから簡単に聞いたが、王都並みにかなり広く作られているそうだ。中心部に行政関係の施設があり、その外周に商店や宿が並ぶ。また、東西北の門の近くと南の港にも商店と宿がある。今回向かっているのは、中央にある来賓用の宿らしい。
門の外に出ると、ノーランド王国の紋章入り馬車が待機していた。
「お待たせいたしました。ソフィア王女殿下。」
代表して御者が挨拶する。周りには衛兵達もいて、厳重な警備が敷かれていた。
「ありがとうございます。ここにいる4人で宿に向かいます。お願いしますね。」
4人で馬車に乗ると、宿に向かう。
宿につくと王女殿下とその王女殿下を助けた功労者ということで、丁重なもてなしを受ける。宿の雰囲気からして、おそらくこの都市のなかでも最高クラスのところだろう。部屋も最上階にある、最高級クラスの部屋を1人ずつ宛がわれた。
夜も遅いため、湯浴みをしてそのまま眠ることにする。
翌朝、ソフィアから朝食に招待された。会場へ向かうと専用の部屋に案内されて、料理が運ばれてくる。ソフィアは、ドレスを着ていて王女としての凛とした雰囲気を醸し出している。料理が運ばれたのちに、ソフィアが合図をすると人払いがされた。
「では、早速情報共有ですが…ノスタルジア王国の国王であるリーガス国王から、7日後に通信を
行うとの返事がありました。ノスタルジア王国との通信は、ノーランド王国の王城から行う手はずになっています。わたくしの父…カインド国王が5日後にこちらに迎えに来るとのことです。」
ソフィアが簡単に今後の予定を教えてくれる。
「かしこまりました。5日後の楽しみにしてますわ。」
正直なところ、いきなりノスタルジア王国に行っても、いきなり国王と対談することは難しいだろう。国によるが、国交のない国の使者は大体突き返されるし、王女であってもせいぜい外交担当の大臣と会談できるくらいだ。そう考えると、通信とはいえ国王と直接話せるのは、大きかった。




