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王女の夢見た世界への旅路  作者: ライ
第4章 無慈悲な大陸と絶望の世界

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8 魔族からの逃避行

 洞窟から出てすぐに魔族の戦士が2人接近してきた。

 アルキオネにソフィアを任せて、私とシリウスの2人で相手取る。


「さて、行きましょうか。」


 私は銀月を抜いて魔族と対峙すると同時に、魔術の構築のみ準備する。魔力を術式に最低限流すことで、事象を発生させずに待機させておくことが可能だ。離脱用の一撃として準備だけしておく。そして時間を稼ぐために、身体強化をかけて刀を振るう。刀と拳がぶつかり合うが、力では相手のほうが相当上である。そのため、相手の攻撃は、すべていなすことを前提に立ち回る。そして相手に隙ができると掌底を打ち込んだ。


「っ!?」


 相手が瞠目する。魔装によって覆われた身体は、皮膚の外側に硬い金属で覆っている状態に近い。しかし、ただ硬いということだけであれば衝撃は通る。さらに私は衝撃と同時に相手に魔力を送りこむことで、魔力的なダメージも与えていた。かつて、刃が通らない魔物相手に生み出した技の1つだ。

 相手の攻撃をいなして、打撃によって徐々にダメージを与えていく。地道だが、確実に攻撃を積み重ねていく。



 一方、シリウスも魔槍による打ち合いをしていた。


(やはり硬く攻撃が通らない上に、相手の力が強い…まともに戦っては、さっきと同じになる。姫様のように攻撃をうまくいなした上で、攻撃を通すための方法は…)


 魔槍で攻撃を受け流しながらも、魔力を魔槍に貯めていく。貯めた魔力を一点に集中させて貫くつもりだ。

 今まで以上に、いなすことに集中するシリウスと魔族は、お互いの攻撃が通らない。千日手のような状況だが、時間稼ぎさえできれば問題ない。



 長い攻防の中で十分な時間が経過した。私とシリウスは目線を合わせて合図をする。シリウスは、戦いの中で貯めた魔力を魔槍の突きに合わせて解放する。一点に収束した暴風と魔力が合わさって、強力な突きとなり相手を吹き飛ばした。

 私も相手の攻撃をいなすのではなく、当たるギリギリなところで体を逸らして躱す。そして、銀月に魔力を纏わせて横に一閃した。


「ぐっ!?」


 斬るまではいかないものの、相手を怯ませる。その隙に準備していた魔術を発動させたことにより、術式が3つ展開される。水属性の術式によって周囲の水を収束させた後、水属性と地属性、風属性の混合された術式が水を強制的に分解する。最後の術式が発火させると、分解された水素と酸素が爆発を起こした。

 魔族2人を爆発が襲ったことを確認して、私達は離脱した。




 土煙が止んだ頃、魔族の2人の前からは人影が消えていた。


「人間どもは逃げたか…」


「あぁ。まさか、戦闘形態を使わされるとは思わなかった。多少は、戦える奴もいるんだな。」


 魔族たちは、戦闘形態に変身している。魔力を常時消費する代わりに、身体能力や頑丈さを全体的に大きく向上する特性がある。爆発を受けて無傷というわけではないが、大きなダメージは受けていなかった。




 ところ変わって、私とシリウスは合流するために森の中を駆け抜けていた。アルキオネからは、すでに森を抜けて岩場に隠れていると通信を受けている。


(初めて魔族と戦ったけど、かなり厄介ね。さっきの一撃も大して効いてはないだろうし…もう一段階上もあるとは言っても策を考えないとね。)


 しばらく走ると川が見えてきた。そのまま岩場の多い場所へ向かい合流を果たす。


「待たせたわね。とりあえず魔族は撒いてきたけど…魔族領から出るまでは油断できなさそうね。」


 今のところ近くには、魔族の気配はない。とはいえ、私達のことを探しているだろうし、魔物と遭遇し戦いになればバレる可能性もある。まだまだ安心はできない状況だ。


「もうすぐ日が暮れます。ソフィア様にも休息が必要ですし、アキも魔力を回復させないとこれ以上の移動は厳しいでしょう。どこかで野営しませんか?」


 シリウスの提案に今後、どう動くか皆で考える。ソフィアも囚われてから今に至るまで、ずっと気を張っていたのだろう。食事や十分な休息も、いつから取れていないか分からないし、怪我はしてないものの顔色は悪い。

 私達も、度重なる戦闘によって魔力や体力は消費している。できる限りここを離れたい反面、焦って動いても状況が悪化する可能性の方が高かった。


「流石にここで野営するのは目立ちそうね。あまり移動しない場所で、もう少し隠れやすい場所を探しましょう。」


 岩場の地形は、身を隠すには十分だが野営のようにテントを設営すると、遠くからでも見つかってしまうだろう。


「では、俺が周りの様子を見てきます。」


「分かったわ。お願いね。」


 シリウスに周りの探索を任せて、残りはこのまま身を潜めることにした。ソフィアに無理をさせないためにも、1番妥当な案だろう。

 少し待つとシリウスが戻ってきて、近くに滝と窪みがあることを知る。私達は窪みのところにテントを設営して、一夜を明かすのだった。

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