4 落ちた先に広がる世界
突然崩れた地面の下に落ちた私達は、瓦礫の下に埋もれていた。地面に激突する瞬間に、魔術で大地を操作し、小さい穴を開けて簡単な蓋をしていたため、小さめの空間に3人して押し込まれている状態だ。全力の防御のおかげで、全身にぶつけたような痛みはあるものの、怪我自体はしていない。
3人で協力して瓦礫を吹き飛ばすことでようやく埋もれた中から脱出することができた。
「ようやく瓦礫とさよならできそうですね…ここはどこでしょう?」
アルキオネが最初に瓦礫の外に到達して、私とシリウスを引っ張り出した。同時に魔術によって光源を確保してくれている。
「どこを見ても真っ暗だな。天井は塞がったが…風は流れているからどこかには繋がっていそうだな。」
シリウスが周りを見渡して呟いた。風属性を得意とするルークス家では、代々伝わる技術として大気の流れを感じることで周囲の空間を把握するというものがある。こういった閉鎖空間では、外への通路を察知しやすいため特に重宝するだろう。
「元々あった空間だろうけど…洞窟に近いのかしら?」
周りを見渡しても広い空間が広がっているだけで、なにも見当たらない。加工した跡は見つからないため自然とできた空間だと思われた。
「上に戻るのは難しいから、このまま進んでみようかと思うけど…どう?」
「そつですね。私は賛成です。」
「俺も異論はないです。このまま北の方角へ向かいましょう。」
異論もなさそうなためこのまま進むことにする。魔物の気配もなく、ただ空間が広がったいるだけだった。完全な暗闇のため、魔術による光源を頼りに歩みを進める。途中、昼休憩を挟んで半日ほど歩くと今までとは違う空間に出た。
「これは…遺跡でしょうか?」
先頭を歩くアルキオネの目の前に見えてきたのは、地下空間の中にある人工的な建造物だった。所々朽ちているため、長い間使われてはいないのだろう。
「もうそろそろ夕方のはずだから、野営の準備をしたいところだけど…周囲の安全だけ確認しましょうか。」
太陽の光がないため時間がわかりづらいが、感覚を信じるのであれば日が暮れる頃だろう。
「魔物の気配はなさそうですね。」
シリウスが周りを見渡しながら確認している。近い範囲を確認しても危険はなさそうなため、ここで一夜を明けることにした。
翌日、私達は遺跡の中を探索していた。今のところ魔物には遭遇していないが、地上にいた巨人の小型版と思わしきゴーレムと頻繁に遭遇する。大きさ自体が成人した男性くらいのため、硬くても貫けないほどではなく倒すことにはそれほど苦労していない。
「ゴーレムも1体1体は問題ないですが…流石にこれだけいると面倒ですね。」
シリウスが愚痴を言いながらも魔槍で貫いていく。
「そうね。でも慣れれば一撃で決められるわよ?」
私は、素手でゴーレムを殴り飛ばしていた。ゴーレムの構造を把握できたため、刀で斬るよりも殴ると同時に内部の魔力に干渉して、内部から破壊したほうが効率が良かった。地属性魔術による大地操作の応用である。
「そのような器用なことできるのは、姫様くらいですよ…」
アルキオネは呆れたような表情をして、剣でゴーレムを斬り裂いている。
「私の魔力だと普通の身体強化では、あなたたちみたいには行かないわよ…それにしても最近遠慮がなくなってきたわよね。まぁ、嬉しいことではあるのだけど。」
シリウスとアルキオネは、元々の身体能力が高い上に騎士としての慣れから身体強化の倍率が高い。軽口を叩きながらもゴーレムを倒しつつ歩みを進めていた。
数日進むと、遺跡の様相が変化してきた。
「街みたいですね。」
「地下に誰か住んでたのは…意外ね。」
最初の頃は通ってきた場所は、よくわからない建造物があるだけだったが、この辺りから民家らしき建物や多くなってきた。基本的に生物は太陽の光を必要とすることが多いため、全く陽の光が入らない場所に街を作るのは珍しいだろう。
「これは…魔族の言葉…」
シリウスが壁を眺めながら呟いていた。詳しく見てみると魔族がよく使うと言われている言語で書かれているようだ。
この世界の言葉は、知る限りでも数種類ある。私達も使う、エスペルト王国のあるユニダリア大陸で統一されているユニダリア語。他の大陸では国ごとに若干違うため、それぞれの国の名前を冠した言葉が使われる。魔族については、魔族の中でいくつか国があるが魔族共通の言語が使われているらしい。王侯貴族であれば主流な言語は学ぶため、日常会話程度ならば使うことができた。
「ここが魔族の街だとして、このまま進んだ場合魔族領に入る可能性があります。警戒が必要ですね。」
「友好的な魔族であれば良いですが…場合によっては敵対している種族や食糧扱いする種族もいるようです…」
シリウスの言葉にアルキオネが捕捉してくれた。
「まぁ仕方ないでしょう。出たところ勝負ってことにしましょうか。」
結局、地上に上がることは難しい以上このまま進むしかないのである。




