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王女の夢見た世界への旅路  作者: ライ
第13章 2度目の学園生活

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112 追憶の旅路-二重の罠

 メラニーに五人の敵を任せ、私は迫りくる短剣をぎりぎりで避けつつ、待機させていた魔力弾を放った。

 対して敵は身を捻り短剣で魔力弾を斬り落として、さらに距離を詰めてくる。

 頭領を務めているだけあって彼は武術にも優れているらしく、他の人と一線を画す強さをもっている。加えて彼の持つ短剣のせいで防御魔術や魔装で防ぐことが難しい。

 間合いを外すこともなく防戦一方になってしまう。


「ほう?武器も持たずによくやる」


「結構ぎりぎりですけど……ね!」


 突き出された短剣を手で弾き、敵の体勢が崩れた隙に全力の蹴りを脇腹を目掛けて繰り出す。鈍い音とともに蹴り上げた右足に衝撃と痛みが走るが無視して振りぬいて身体ごと吹き飛ばした。


「っ……防具も魔力封じですか」


 身体強化のおかげで骨が砕けることはないが、多少の傷は負ってしまうし痛いものは痛い。おまけに体内からの治癒魔術だけだと傷の治りが遅いことも厄介だ。

 しかし、痛みと痺れがあるだけで戦闘には支障がないのだから問題はない。


「これはお前たち魔術使いを殺すために編み出された戦術だ。もう諦めろ」


「お断りです」


 返事と共に魔力消費を度外視した威力と射程、弾速の全てを重視した魔力弾を一発放った。

 敵の装備は顔以外の全身を包むような形だ。他の鎧と同様に関節となる部分や守りのない顔であれば魔力による攻撃も届きやすい。

 反対に敵はそういった装備では防げない部分を重点的に守るということだ。

 私の予想通り、敵は一歩下がって顔を逸らすことで魔力弾を避けた。


「お前の狙いは分かって……!?」


「敵は全て討つだけです」


 私が放った魔力弾は予め弾道を設定した二重の罠だ。頭領を狙ったとみせかけて天井の近くに到達すると大きく弧を描いて急降下する。

 そのまま二つに分裂すると魔術具を背負っていた者と何も見えない空間に着弾し、二人分の悲鳴が聞こえてきた。まるでカーテンが捲られたみたいに壁の近くから血だらけの人が現れて崩れ落ちる。


「馬鹿な!?気配も魔力も消える外套をどうやって!?」


「全てを感じ取ればいいだけということです」


 この手の魔術具は存在を感じ取れなくするだけで物体をすり抜けるわけじゃない。反対にいえば空間内の魔力や気配、空気の流れといったあらゆるものを感じ取れば、隠れた人のところだけ何もない感覚になるということだ。

 喩えるのであれば色のつかない透明なシールを貼った紙をインクで染め上げるようなものだろう。


「ちっ……」


 敵の仕込みの一つを先んじて破ったことで頭領らしき人は追加の指示を出すべきか僅かに迷いを見せた。

 私はその隙を見逃すことなく、瞬時に距離を詰めて右手に魔力を纏わせる。

 視線を顔に向け顔を狙うと思わせてプレートの中心に全力で掌底を放った。

 いくら魔力を霧散させる頑強な装備であっても衝撃は通る。特に内部に衝撃を浸透させるこの技は、硬さを誇る相手にこそ有効なものだ。


「ぐっ……舐めるなっ!」


 敵はたたらを踏みながらも堪えると短剣を振り下ろしてきた。

 私はその腕を掴んで背負い投げの要領で空中に投げて頭から地面に落ちるように力を加える。

 敵は最後の足掻きとして短剣を投げてきた。

 私は飛来する短剣を掴み取ると、漆黒の雷撃を顔面に放った。

 これは闇属性と雷光属性の複合魔術だ。触れた相手の意識を刈り取る精神干渉系の魔術を雷撃に乗せて放つもの。

 相手は為す術もなく雷撃をまともに喰らい、勢いよく地面を転がり身体をびくんと揺らして動かなくなった。


「はぁはぁ……けほっ」


 乱れた呼吸を整えようとしていると咳き込んだ口から血が零れた。

 対魔障魔術を織り込んだ上級魔術の行使は身体への負担が桁違いに大きかったらしい。全身の痛みに加えて荒波に揺れる船に乗っているかのように視界が揺れている。


「ティア大丈夫ですか?」


 バレないように手についた血を落としていると戦いを終えたメラニーが心配そうな表情を浮かべて近づいてきた。

 所々に擦過傷や切り傷こそあるものの大きな傷は負っていなさそうだ。


「少し疲れましたけど大丈夫です。これで終わりのようですね」


 後方にいた賊たちは頭領が倒されると同時に魔術具を置いて逃亡していた。増援がくる気配もない。


「ティアはそこで休んでいてください。魔術具だけでも回収してきます」


 魔術具は国や職人によって造りが異なることが多い。しかも一般に出回っていない魔力を妨害する魔術具となれば作成できる者も限られてくる。

 解析ができれば敵の組織や支援している者たちを割り出せるかもしれない。

 けれど、敵はそこまで甘くなかったようで全滅すると発動する二重の罠を仕掛けていたらしい。

 メラニーが魔術具に近づくと魔力の乱れが消えると同時に辺り一帯の魔力が急激に高まり圧縮されていく。


「メラニー!?」


「っ……」


 私もメラニーも自身の周囲に半球状の防御魔術を展開する。加えて私は全身と地面を魔装で覆い、身体強化を最大にした。

 次の瞬間、魔術具と賊の身体から魔力が溢れだし轟音と衝撃が広い空間を埋め尽くした。

 あまりの威力に防御魔術の障壁が砕け散り、魔力の奔流と衝撃に全身を晒される。

 さらには爆発の影響で洞窟の一部が崩落し巨大な岩石の雨が降り注いだ。

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