2 セプテンリオでの誓い
早朝、国の紋章が入った王族専用馬車に乗り込む。
向かう先は、グランバルド帝国との国境に一番近い国境都市、セプテンリオ伯爵領の領都。所要日数は約5日となる。
道中は、馬車の中に私とリーナ、周囲を馬に乗った近衛隊が囲んでいる。途中いくつかの街を経由し休憩や睡眠を街で取ることになる。
何度か繰り返して5日目の朝、予定通りであれば今日の夕方には到着予定だ。
「ついに今日着くわね、時間がとれたときにでもセプテンリオ領都を見て回りましょうか。」
「長かったですね。都市を歩くときはお供します。」
リーナと話していると水場の近くに来たため、一度休憩となる。私たちも馬車から降りてゆっくりする。
しばらくして走り出す時間になったため馬車に戻ろうとすると、急に周囲が慌ただしくなった。
「この感じは…襲撃かしら?護衛つきの王族を狙うなんて大胆よね。」
「本来王族の護衛はこの数倍いますから…この人数しか付けなかったのはラティアーナ様くらいですよ。でも態々狙うのはおかしいですよね。」
仮にこの襲撃が成功して、私を捕らえたり殺せたりしたとしても、犯人は無事ですまないだろう。
すると後ろから近づいてくる気配がしたので、リーナを引っ張って下がる。
「っ!?今の気付かれるとは、思わなかったぜ。」
「王女殿下!?今助けに…」
「あなたたちは、周囲の敵を捕らえなさい!こちらは問題ありません。」
近衛兵には、周囲から襲ってきている賊を対処してもらい、私は、今襲ってきた人に相対する。
「リーナはわたくしの後ろに…あなたの狙いはなんですか?正直に言えば、多少罪が軽くなるかも知れませんよ?」
「さてな!」
リーナが下がると同時に、相手はナイフを向けて襲ってきた。私はナイフを持った手を捕まえて、そのまま地面に相手を倒して抑えつける。相手を無力化する逮捕術だ。
「っ!?」
「その動き…不意打ちを専門にする暗殺者であれば頷けますね。けれど失敗した時点であなたの戦う場所ではなくなった。違いますか?」
暗殺者は悔しそうな顔をしたまま黙秘する。すると近衛兵たちが駆け寄ってきた。
「申し訳ございません。賊どもの捕縛に手間取りました。」
「丁度いいところね。この方たちは、おそらく雇われの暗殺者と思われます。わたくし個人で後ほど丁重にもてなしたいので、離宮にある牢へ捕らえます。近衛兵5名ほどで離宮まで連行できますか?」
「十分ですが、護衛がかなり薄くなります!危険が…。」
「目的地のすぐ近くまで来てますから大丈夫でしょう。お願いしますね。」
「はっ!」
護衛の半分をこの場に残して、馬車に乗り先に進む。
「彼等をどうするつもりなのですか?」
リーナの問いに私は答える。
「背後関係の確認が1つ、私的な諜報員が欲しいのが1つと言ったところね。気配を消すのは上手だったから。情報収集の要員が欲しいのよ。」
途中、襲撃があったものの無事に目的地であるセプテンリオに到着した。まずは、ここの領主に挨拶をする。
「これはラティアーナ王女殿下。ご機嫌うるわしゅうございます。」
「建国祭以来ですね、セプテンリオ伯爵。国軍に対する支援、感謝しますわ。」
「いえいえとんでもございません。殿下を始め国軍の皆様がいなければ、我が伯爵領に危険が及びますから。できる限りの支援はさせていただきます。」
その後も少しだけ言葉を交わしてから軍の方へ向かう。
セプテンリオ伯爵は、長年帝国との面しているだけのことはあり、軍事にも明るいようだった。そして、国境都市であるからこその、この土地の重要性を知っている。それだけでも信用に値するだろう。
「では、ご機嫌よう。」
伯爵に別れを告げて、軍の方に顔を出す。
名目上は私が頭になるため、集まった国軍に挨拶をするのが最初の仕事だ。
その場につくと、既に3000人が整列している。向かい合うようにして師団長とアドリアスが立っていた。
「ラティアーナ王女殿下。号令をお願いします。」
師団長の言葉を受けて、私は前に出た。
「わたくしは、ラティアーナ・エスペルト!此度のグランバルド帝国の動きを受け、皆には集まってもらいました。もしも帝国軍が国境を超えた場合は、ここにいる3000人で迎撃することになります。ここセプテンリオは、我がエスペルト王国にとって大事な場所であり、必ず護らなければなりません。各隊員たちよ!必ず護り抜きなさい!その上で必ず帰りなさい!以上!」
私の言葉に全員が敬礼で返した。
(今言ったのは、私にとっても言えることであり、誓いでもある。この王国を護るのは絶対、それだけじゃなくて国軍の隊員も失わせない。そのためにも私も全力を尽くす!)
私は新たな誓いを心に秘める。
セプテンリオ伯爵領、国境付近で対グランバルド帝国の防衛戦の準備が整った。




