1 王女として
お父様から呼び出しがあったため王城へ赴いている。
今回は、正式な呼び出しのため玉座の間に向かうことになる。おそらく王族以外にも呼ばれている人がいるのだろう。玉座の間の目の前に着くと声をかける。
「ラティアーナ、参りました。」
「入ってくれ。」
部屋に入ると、お父様を中心にレティシア様とガイアスお兄様がいた。また他にもドミニク公爵とアドリアスも呼ばれていたようだ。
「急に呼び出してすまないな。今回呼び出したのは、グランバルド帝国の件だ。どうも我が国との国境付近で、帝国軍に大規模な動きがあることがわかった。どこまでが目的かはわからないが、こちらも国境沿いに国軍を派遣する。本来はドミニク元帥に直接指揮してもらいたいところだが、元帥までそちらに送ると王都の防御力の低下と帝国以外の動きが読めなくなる。そこため今回派遣する国軍3000の実質的な指揮は、国軍の師団長に任せるが…ラティアーナには王族として軍を率いてその場に居てもらいたい。王女がいれば軍の士気も上がるであろう。」
どうやら今回の対帝国の防衛での旗印にしたいようだった。私としてもこの国は護りたいため願ったり叶ったりだ。
「それから、同い年で親交のあるアドリアスにラティアーナの護衛をしてもらいたい。ラティアーナも離宮付きの近衛は自由にして構わない。」
近衛軍は、国軍とは別扱いで王族を守るための部隊だ。基本的には城や離宮を守っているが部隊の指揮権は、守っている場所の責任者となる。大規模な部隊の移動となると国王の許可は必要となるが、離宮付きの部隊自体は私の直属だ。
「国軍の動きについては元帥、説明を頼む。」
「かしこまりました。国軍については、王都の部隊と各地に展開している部隊からは再編を行い7日後までに国境付近の都市内部に展開します。帝国が国境内部へ侵入した場合は、こちらも応戦する次第です。都市自体の防衛や領民の避難等については原則、領主の判断になります。アドリアスには、王女殿下と国軍の橋渡しも担ってもらう予定のため、王女殿下より先に現地へ派遣する予定です。王女殿下、なにかございますか?」
「問題ないですわ。わたくしも、7日後に間に合うように移動します。道中の護衛として近衛1小隊を動かします。」
「ラティアーナ。あなたは今回王族として参加するのですから、くれぐれも失態を犯さないようにね?」
「ええ、存じております。王族として頑張りますわ。」
「ではそれぞれ準備をしてくれ。それでは解散とする!」
私は玉座の間を出て、離宮に戻る。
離宮に戻ると早速リーナを呼んで、要件を伝えた。
「リーナ。お父様からの要請で、わたくしが帝国との防衛戦の旗頭になること決まったわ。近衛1小隊を連れて行くから伝えておいてくれる?それから専属侍女としてリーナにも付いてきてもらいたいからよろしくね。」
「承知しました。」
リーナに指示を出して準備をお願いして私も準備を行う。
今回の派遣の内容を見ると戦いになる可能性が高い。お父様かレティシア様のどちらの意見かは、わからないけど安全であれば次期国王の最有力候補である第1王子のガイアスお兄様が選ばれる。こういった場合功績になるからだ。けれど私ということは危険性がそれなりにあるということ。いざというときのために、戦う準備もしておかなければならない。
(それに帝国がもし将軍を出してきた場合、こちらの軍の中で相手できるのは、元帥か師団長クラスのみ。もしもの場合は私も前に出るしかない。この前は遅れをとったけど…2度目はないわ。)
移動に5日かかるため明日までに準備を完了させて2日後の早朝に出立することになる。今回は、食糧は基本現地調達のため、非常用に準備をする。他に王女として必要なものは服くらいだろう。
「この服を作っておいて助かったわ。」
「まさか、着る機会があるとは思いませんでしたね。」
リーナと眺めているこの服は、王族らしさを残しつつも戦いやすいような造りをしているドレスだ。緊急時は、もう一つの王族らしくも戦闘特化を構想とした衣服も作ってあるため、そちらを使う。どちらも魔力で強化された糸で編んでいるため、軽くて丈夫というものだ。
なお防具については、普通は軍人であろうと冒険者であろうとつけることが多い。私は機動力と消費魔力の関係からつけていないけれども。
衣服の用意が終わると私自身の準備だ。最近の旅で、消耗したものも多いのでポーション類は補充しておく。魔力入りの宝石は残り少ないが、魔力を液体化した便はいくつか余剰があるので代用可能だ。また、魔術を刻印したナイフやいくつかの魔術具についても準備をしておく。
全ての準備が完了した今日は、出立する予定日だ。
「では、ラティアーナ様。お気をつけて。ご武運を。」
「ええ。イリスも留守の間、ここを任せるわ。」
イリスをはじめとする侍女、執事、使用人たちに見送りを受ける。私はリーナと近衛兵を連れて、馬車へ向かった。




