20 帰還と新しい試み
もうそろそろ前世の知識も活用させていこうと思います。あまり詳しくないため、間違っていたらごめんなさい!
王都に戻って数日、表向きの要件は護身術を習いたいということにして離宮でアドリアスに会っていた。
「元孤児院長が見つからなかった?」
「あぁ、教会についても調査したが逃げられた可能性がある。伯爵が捕まったことをあの時点で知るはずもないから、最初から逃亡していたかもな。」
今回の件で、伯爵も含めて何人かの関係者は捕縛されている。ただ元孤児院長と黒服たちは発見できなかったらしい。
「私たちが倒した時に逃げたのかもね。それにしても目的が読めないわね。」
邪気の研究と魔物や人の強化…目的や全体が見えないため、警戒するに越したことはないだろう。
その後は、ティアとして活動していることについても話す。もちろん周りには内緒にしていて貰う。
「軍属兼冒険者も悪くなさそうだな。」
「隠さないつもり?」
「王族と違って貴族には護衛をつけることは多くないからな。ばれたところで問題ない。」
アドリアスが悪巧みする顔をしているが、気になっていたことを確認しておく。
「今回の件って元々どれくらい把握していたのよ?一領地への軍派遣は、1部隊送るだけだから部隊長が指揮するはず…あなたが指揮官になってたということは…そういう事よね?」
「父上も正確にはわかっていなかったと思うけど、怪しんではいたんじゃないか?まあなにかしら進展があればいいなくらいだろうけど。」
「公爵は流石ね。王の剣として国で1番の武力を持っているけど、情報収集能力も高いしこの安定しない力関係の中でうまく中立を貫いているだけのことはあるわね。」
アドリアスの父であるドミニク公爵は、かなり鍛えてある見た目とその戦い方から肉体派だと思われやすいが、海千山千の貴族で知略も長けている。元々公爵家は建国する時に王と共にいた始まりの貴族だから当然かもしれないが。
「父上の考えは俺もわからないが、何か見えてるんだろうな。…さて、情報の共有はここまでにして護身術の手解きといこうか?」
私とアドリアスは修練場に移動する。表向きは教えて貰うことになってるが、実際には模擬戦を行う予定だ。
「ルールは武器と魔力なしでの純粋な体術のみで良いのよね?」
「それでいい。体術だけで勝負してみたいからな。それに全力でぶつかった場合どうなるか予想できない。」
何度目かの勝負が終わり、結果はほぼ互角だった。有効打こそ受けないものの、地面に投げられて勝敗が決している。
そして最後の勝負、私とアドリアスは共に構えて同時に動き出した。
お互いに拳や蹴り主体のやり取りをしていると、アドリアスが仕掛けてきた。私の拳をあえて身体で受け止めて、手首を捕らえられる。そのまま私のことを投げようとするが、私も秘策を使う。掴まれた状態から逆に相手の体制を崩して手を掴み、アドリアスを仰向けに倒した。これは、転換と入り見投げと呼ばれる技術で合気道の技術だ。
「鮮やかな返しだな!というか、初めて見る技だぞ!?」
「私も自信なかったけどね。ちょっと試してみたくて。」
また勝負することを約束してアドリアスと別れる。
後日、私はリーナを連れて王都にある役所に向かっていた。
リーナを連れているのは、久しぶりに2人で歩きたかったからだ。
「住民登録ですか?」
「そうよ。私も冒険者の稼ぎが多くなったから都市の中に拠点が欲しくてね。家を買うには登録が必要だから。」
住民登録は、最初に申請をして以降は毎年税金を払うことで維持できる。住民登録がないと家が買えなかったり商売ができなかったりする。
住民登録も魔力による登録をして名前と年齢を記載して終了だ。冒険者プレートを持っていると確認も早く終わるため登録が簡単だ。しばらく待って登録証が渡されて完了となる。
なお、魔力による登録自体は、貴族のお披露目でも行うが、登録先自体が違うので両方に登録していても問題はない。
登録が完了するとそのまま建築ギルドに向かう。
建築ギルドは、国内だけにある冒険者ギルドを参考に作られた組織だ。大工をはじめとする建築に関わる人たちが登録していて相互扶助を目的としている。
建築ギルドを通して、建物の購入を大工の手配を行う予定だ。ギルドに付くと受付に用件を伝える。
「すいません。相談にきたんですけど…」
「はい…相談はお姉さんのほうですか?」
「いえ私はただの友達です。相談したいのは、こっちのティアです。」
受付のお姉さんは驚きながらも対応してくれた。
「私は喫茶店が欲しいと思っています。場所については、中心街に近いとありがたいです。予算については気にしなくてかまいません。」
「その辺りだといくつか使われていない建物ものがありますね。そこから改修する形でどうでしょう?」
「それでお願いします。」
その後は部屋を変えて細かい事に関する打ち合わせだ。
「1階をお店、2階を倉庫、3階を居住区にしたいです。」
「だったらこっちの建物を使うってのはどうだ?元から3階だし、広さもそれなりにある。」
建物の内側も含めて細かいところを決めていく。
今回、喫茶店をやりたい理由としてはいくつかあった。
この国の食事事情は、砂糖や香辛料のようにこの国で採れないものが希少だったりするため、食材次第だが基本的に高い方だ。少なくとも私の知識にあって、作り方を知っている料理やお菓子がある。
その中で意外となかったのがスポンジケーキだ。この国のケーキはバターケーキとチーズケーキ、カルトカールが主流、高級嗜好としてはタルトやチョコレートだ。
私が食べたいのもあって、せっかくなので売り出したいと思っていた。
また、情報収集も兼ねようと思っている。貴族の情報は私でも集めやすいが、平民たちの間の情報は集まりづらい。お客さんが入ることが前提だが、目的の一つだ。うまくいけば各街の状況や他国の内情など住民にしかわからないものも手に入るかもしれない。
最後に街の中に拠点が欲しかったのもある。王城は警備が厳重で結界も多重にかかっているため、転移系の魔術が使えない。ただ、街の中であれば1人を転移するくらいならなんとかなる。拠点の中に転移用の魔術具を置いておいて、遠出している時でも行き来できるようにするつもりだ。1度の転移で使用する魔力はおよそ私の全魔力だが、運用が可能なのだ。(ただし、ほぼ全ての魔力を一瞬で消費すると体がついていけず、しばらく動けなくなるが…)
今決めることは全て決めたため、打ち合わせを終える。
工事代金を支払い、改修工事は終わるまで待つだけとなった。




