19 救出と意外な援軍
少し移動すると2人がこちらに来るのが見える。
「ティアちゃん!合流できてよか…って、どうしたの左肩!?凄い怪我じゃない!?」
慌ててダムが近寄ってきた。
「止血はしてるから大丈夫よ。それに2人こそボロボロじゃない?」
「司教みたいなやつが自爆してな…このありさまだ。ティアも大丈夫…そうには見えないな。」
「治療は後回しにしてるからね。命に別状はないから、痛いのと左手が動かせないだけだわ。」
3人してボロボロの状態だがなんとか合流できた。地下にある空間のことを伝えて早速向かう。
「この辺りかな?魔力弾で穴開けるから2人とも少し離れてね。」
私とデュランさんが離れるとドムの一撃で床に穴が空いた。覗いてみると下に通路らしきものが見える。
3人で飛び降りて、しばらく廊下に沿って歩いていると広い空間に出た。
「分岐だね。どっちに…あれは牢屋か?もしかして!?」
ドムの言葉に3人は、顔を見合わせて頷く。牢屋の方に向かうと皆を見つけることができた。約3日ぶりの再会だ。
「ドム!ティアちゃん!それにデュランさん会えてよかった…って3人ともすごい怪我じゃない!?今すぐ治療するからちょっと待ってて!この手枷あると魔力が使えないから壊してくれると助かるわ!」
まずアリアを助けて、私の傷を治してもらっている。その間に2人が残りの皆を解放していった。
「流石ね!もう完治してる。」
「知ってると思うけど、失った血と体力までは回復しないからね?もう、無茶しないでよ…」
「約束はできないけど、善処するわ。」
続いてドムとデュランさんも治療してもらい、3人とも完治した。
「やっとここから出れるな!捕まってから何もできなかったから…ありがとうな!」
「「お兄ちゃんとお姉ちゃんたちもありがとうね」」
皆を解放してあとは脱出するだけだ。
皆を連れて出口を探していると広くて明るい空間に出た。
「ここはっ!?」
「なんだこりゃ!?これ全部魔物か!?」
そこにあったのは檻に入れられた沢山の魔物だった。しかも奥には、魔物に何かを繋いでいるのが見える。
「これは、魔物の培養場?でも何のために?」
「培養というかこれは…邪気だ。邪気を弱い魔物に注いで、強い魔物に強制的に作り変えている!?」
「正解だよ少年。これは邪気の研究でね。君たちが戦った黒の部隊がいただろう?彼らが持ってる薬は、この研究の成果さ。」
やってきたのはこの家の当主、ノワール・アーテルその人だった。
「ノワールっ!」
「おや、誰かと思ったら兄上じゃないかい?まさか生きてるとは思わなかったよ。」
デュランさんはもともとアーテル伯爵家の長子だったらしい。学園を卒業する直前に、森の実習で襲撃され行方不明になった。デュランさんは貴族の立場に興味もなかったため怪我が治った後は冒険者として生活していたようだ。
「お前のおかげでな…で?なんだこれは?いくらお前が伯爵でも言い逃れできねえよ?」
「なにも問題ないさ。……こうなるのだからね。」
次の瞬間、辺り一帯が吹き飛んで魔物たちが全て消え去った。
「もはやここに証拠はない。そして君たちの証言など私の前では無意味なのだからね。ご丁寧にここまで破壊してくれたおかげで…君たちを反逆者とすることにしたよ。ボルテが倒されたのには驚いたけど、国軍相手にも同じことができるかな?」
「「「っ!?」」」
「……俺たちはギルドに所属している人間だ。こっちの主張関係なくそんなことすれば…王国とギルドの問題にもなるぞ!」
「たかだか5人程度でそんなことにならないさ。ギルドだって組織だ。君たちのためにわざわざ国相手にどうこうしようとはしないだろう。ほら軍のほうも到着したようだ。」
裏を見ると約100人の部隊が来ていた。
先頭にいるのは、意外な人物だった。
「私は此度の軍の指揮を執るアドリアス・グラディウスだ。父上からの命のため、未成年ではあるが全権を担っている。」
「アドリアス様、この者たちが我が伯爵領を襲いましてね。我々の軍も大打撃を受けてしまいました。何卒、厳罰を。」
「っ!?アーテル伯爵は邪気に関する研究のために子供達を誘拐していました!私達は何もしてないのに捕らえられて………友達が助けに来てくれただけなんです!」
「アドリアス様、この者は罪に問われるのを恐れて嘘をついているのです。どうか、賢明な判断を。」
アリアの主張に対して、アーテル伯爵はしらをきるらしい。アドリアスは私と目があうと笑みを浮かべた。
「ふむ。確かに伯爵の言い分は聞かねばならないだろう。かといって彼女の言い分を跳ね除けていい理由にもならない。身分が違えど公平に判断するために事実を詳らかにしなくてはいけないが…他に何か言い分はあるかな?」
私を見ながら言った言葉に肩をすくめた。
「ええ。アドリアス様に見ていただきたいものがあります。こちらをどうぞ。」
私は、懐から1つの魔術具を取り出した。貴族であればだれでも知っていて、裕福な平民でも持っている人はいる。
「っ!」
それを見て伯爵の顔色が変わり、心なしか汗をかいているようにも見える。
これは映像と音を記録する魔術具。単純に思い出の記録として使うこともあれば、証拠として用いられることもある。
「ああ。これならば正式に証拠となる。内容にもよるが先ほどの彼女の証言が事実であれば…伯爵は罪に問われ、君たちは無罪だ。君の名前は?」
「ティアと申します。」
「覚えておこう。では早速確認しようか?」
私とアドリアスの本人たちにしかわからない茶番劇によって、伯爵の罪がさらされていく。
映像の確認が終わったころには、伯爵は消沈していてそのまま連行されていった。
アドリアスが王都に戻るときにすれ違いざまに
「あとで詳しく聞かせろよ?」
「離宮に来るなら教えてあげる。」
というやり取りをして別れた。
今回のお詫びとして、グラディウス公爵家が宿と馬車を用意してくれた。
今夜は宿に泊まって、明日王都へ発つ。子供たちが寝た後、私たちは集まっていた。
「で、話ってのはなんだ?」
「デュランさんには、機会があったらって言ってたけど、私の秘密を教えておこうかと思いまして。」
「このタイミングでとか…嫌な気がする…」
私が微笑んで答えるとデュランさんが顔を顰めた。アリアやドム、ノアはきょとんとしていた。
「実は私、変装していて髪の色と瞳の色を変えてるのよね。」
そういって、変装用の魔術具を外す。すると髪が茶から金に、瞳が黒から碧眼に変化する。それを見たデュランさんは遠い目をしている。
「わあ!「「きれい!」」だな」
「ふふ。ありがとう。今まで隠していてごめんね。この格好だと外を歩けないから出かける時って変装してることが多いの。」
そんなやり取りをしていたら、デュランさんがため息をつきながら参加してきた。
「金髪碧眼とか、この国じゃ相当高位のお貴族様くらいしかいねぇよ。俺はどうすればいいんだ!?」
混乱しているところに、私は今までと同じでいいと言うことを告げて指輪を見せた。すると今度は王女とつぶやいて固まってしまう。
「私の本当の名前は、ラティアーナ・エスペルト。これからもティアとしてよろしくね!」
隠し事がなくなり、本当の意味で友達として新しい関係を気づいていくことになる。
なお、孤児院についてもアドリアスが上手いことやってくれたらしく、教会に今回の責任を問わない代わりに孤児院長にアリアを据えることを飲ませたらしい。




