13 それぞれの想い
次の日、私は孤児院に向かっていた。
出発する前、今朝戻ってきたイリスとリーナに、所用で数日離宮に戻らないことは伝えてある。魔術の授業と同じく、一般的な学問や所作についても習い終わっているため、私の王族としての仕事は次のお披露目までない。心配はかけているが数日離れていても問題はない。
教会に着くと、入り口にある衛兵にアリア達の誰かを呼んでもらう。面会約束もない部外者では、礼拝堂までしか入れないためだ。
しばらく待つとノアがやってきた。
「今日はどうしたんだ?」
「昨日のことが気になっちゃって...一体何がおこってるの?」
とりあえず孤児院に案内してもらい、昨日のことを訪ねる。最初は言葉を濁していたけど、近くで馬車を見たことを伝えると渋々教えてくれた。
「俺も詳しく知ってるわけじゃないけど、あの子達を引き取りたいっていう貴族がいるみたいなんだ。だけど...アリアが孤児院長たちになにかを掛け合ってるんだけど教えてくれないし、この話をしてくるおじさんも胡散臭いし。俺はまだ成人してないから孤児院に所属していることになってる。俺やドムは稼ぎがあるから孤児院を出ても生活できるけど...あいつらにはきつい。」
来客用の部屋でノアと話しながら、アリアとドムを待つ。
(教会は独立しているから組織の中の問題に介入は難しい。貴族も絡んでるとなると...伯爵令息ならやりようはあるけど、当主相手の場合、中途半端な方法だとかえって悪い結果になりかねないわね。最終手段に考えていたけど、私も孤児院に住んで囮になろうかしら?)
伯爵本人が関わっている場合、下手をすれば特権を使われる可能性がある。今回のことの全貌が見えてない状態では、間違った行動1つでも命取りだろう。王女の特権も貴族相手に使う場合は影響が大きい。その場はなんとかできても、状況が悪化する可能性が高い。
考え事をしていると2人がやってきた。
「ティアちゃんどうしたの!?」
「昨日のことが気になってさ...アリアは何を知ってるの?一体...なにを焦ってるの?」
私の言葉にアリアは目を逸らす。
「ノアから少し聞いたけど...貴族に引き取りたいって人がいるのよね?本人の意思がなければ普通は引き取ることができないから、何か事情があるのよね?私も力になりたいから!だから、教えて!お願い!」
「どうして...どうしてティアちゃんは、そこまでしようとするの?友達だけど...だからこそ危ない目には、あわせたくない!相手は貴族なのよ!!もしかしたら逮捕されるかもしれないっ、命の危険だってあるかもしれないのよ!私はもう大人だし、皆のお姉さんだからっ!私がなんとかしないと!」
「前にも言ったでしょ。後悔しないために私は戦うって。私も友達は大切...困ってるなら助けたいし支えたい。それに昨日、あの子達と触れ合ったわ。全く知らない他人ではないし...友達の大切にしている子は友達みたいなものよ?それにアリアの気持ちもわかるわ。私も歳の離れた弟がいるから...姉として弟を守りたいって思ってる。アリアが姉としてなら、私は姉の友達として協力する。」
「僕もアリアさんに今まで助けてきてもらってたから...今度は力になりたい。まだ頼りないかもしれないけど、同じ孤児院で一緒に育ってきた家族みたいなものなんだから。」
「そうだな。俺もノアも、家族で仲間だ。それに危険って言うなら、冒険者としての仕事だって同じだろ?今まで一緒にやってきたことと同じだ。」
私たちの言葉を聞いて、アリアが泣きながら全てを話してくれた。
きっかけは約10日前。
アリアが偶然、孤児院長が貴族の使いと話してたのを聞いたことにはじまる。




