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王女の夢見た世界への旅路  作者: ライ
第5章 王女の学園生活

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1 入学試験

 弟のお披露目が終わってから約1年が経った。私もあと少しで13歳になる。

 最近は、たまに襲われることがあるくらいで、大きな出来事もなく時間が過ぎていた。


 今年も建国祭とお披露目はあったが、例年の如く繋がりのある貴族との社交以外は、嫌味を言われたくらいのため、いつも通りだった。


 エスペルト王国では、王侯貴族が通う学園がある。

 明日に入学試験があり、1週間後が入学になる予定だ。試験と言っても、平民以外は必ず入学できるため、クラス分けが目的となる。


 その中で私は工房に向かっていた。以前ドルマにお願いしていた刀が、ようやく完成したためである。

 学園に通いはじめると王都から離れるため、ちょうど良いタイミングだった。

 工房に着くと、ドルマが待っていたようだった。


「ティア来たか。すまんな、思ったよりも時間が掛かっちまった。」


「いえいえ。ドルマさんには満足のいくものを打って欲しいですから。」


「そう言ってもらえると助かる。話したいこともあるからこっちに来てくれ。」


 ドラマの後をついて、応接用の個室に入る。そして出来上がった刀を持ってきてくれた。


「これが新しい刀だ。俺の中でも最高の一振りだと言えるぜ。」


 ドルマは、自信満々な笑みを浮かべていた。私も刀を受け取り、鞘から抜いてみる。

 黒龍の素材をふんだんに使っているだけあって、漆黒の刀身が晒される。


「これは…魔力が弾かれる!?」


 試しに刀に魔力を纏わせようとすると、魔力が散ってしまった。


「刀身の箇所は、黒龍と同様に魔力を弾く。とはいえだ…長い時間をかけて魔力を流し続ければ、いずれティアの魔力で染めることができるだろう。そうなった時、どれだけの刀になるかは想像もつかない。」


 素振りもしてみるが、銀月と重さ自体は大して変わらないものの、刀身の強度は桁違いに感じる。

 試し切りしても、素の状態で魔力を纏わせた銀月を上回っていた。


「これは凄いですね。」


「ああ。持ち主を選ぶが、お前の魔力で染めきったとき、聖剣や魔剣にも引けを取らないだろう。名前はどうするんだ?」


「今までの流れで月を入って、龍に関係する言葉…辰月かしら。」


「辰月だな…了解した。それから、こっちは銀月を元にした短剣2振りだ。」


 短剣は、白銀の刀身が輝いている。今まで使っていた短剣には、私の元に飛んで返ってくる術式と、込めてある魔力で自爆する術式だった。

 新しい短剣には自爆はさせずに別の術式を刻む予定だ。


「ありがとうございます。それと別件なんですけど、手頃な直剣を1本欲しいんですけどありますか?」


 私の言葉にドルマは首を傾げた。


「ん?既製品でいいならあるが…何に使うんだ?」


「今年から王立学園に通うんですけど、その時に使う剣が欲しいんですよね。」


 学園では剣術の授業や実践授業もあるため、武器が必要になる。流石に普段使っている武器を使うのは躊躇われるので、無難な剣にするつもりだ。


「だったら…これをやる。」


 弟子が打った1本の剣を持ってきてくれた。鉄鋼製のため素材だけで見れば安いものになるが、丁寧に打たれていて良い剣だと思う。


 そのあと少し雑談し、代金を渡して工房を後にした。代金は合わせて金貨50枚と言う、かなり高いものだったがとても満足だ。




 次の日、ついに学園の入学試験が始まる。

 試験自体はいくつかの都市で行われて、貴族と平民それぞれ別室で行われる。

 試験内容は同じだが、貴族がクラス別けの基準に使われるのに対し、平民は合格基準に達していないと入学が認められない。

 試験会場に向かっていると、見知った顔がいたため声をかけた。


「あら、ロアとロナじゃない。」


 ロアとロナは双子の兄妹で、アリアが孤児院長を務める孤児院にいる子だ。私と同い年で、魔力がそれなりにあるため、将来魔術士になりたいらしい。


「テ…ラティアーナ様お久しぶりです。」


「おはようございます。」


 2人は挨拶をしながら頭を下げる。2人から学園に通いたいと聞いた時に、私の正体は伝えてあった。最初は驚かれたが、アリアたちの協力もあって大分慣れたようだ。一応、人のいる前では敬語を使ってもらうようにしていた。


「2人とも試験頑張ってね。」


「「はい!」」


 2人と別れて、試験部屋に向かう。貴族側の試験が午前が筆記、午後が実技となる。

 時間になると監督役の教員が来て筆記試験が始まった。

 試験内容自体は、特別難しいものではなく、四則計算をはじめとする日常生活で必要なものと、それらの応用がほとんどだ。

 鐘が鳴ると同時に試験が終わり、答案が回収されていく。

 その後は、食堂で昼食を挟んで午後の実技となる。


「ラティアーナ。昼食を一緒に行かないか?」


「ええ、行くわ。」


 アドリアスが誘ってくれっため一緒に向かう。食堂に入ると一斉に注目されるが、そのまま席についた。


「意外と注目されるものだな。」


「入学する公爵家子息のなかで、今日ここにいるのはアドリアスだけでしょうからね。」


「王女のほうが目立つだろう。」


「わたくしは落ちこぼれの王女よ?そこまで興味ないでしょう。」


 私がそう言うとアドリアスに呆れた目を向けられた。


「他の貴族から見れば、落ちこぼれであろうと王族だからな。ラティアーナは普通にしていれば、深層のご令嬢感を醸し出しているのだし、大方婚約相手になれないか考えているんじゃないか?」


 私はアドリアスの言葉を聞いて怪訝な顔をして、ため息をついた。


「そんなの、こっちからお断りよ。」


 アドリアスも、それはそうだろうなと言った感じで、納得した表情になった。





 昼食が終わって実技試験が始まる。実技は武術、魔術、総合戦闘の3種類だ。3種類のうち上位2種の合計点が試験の点数になるらしい。

 試験会場は安全と公正さのために、周りからは見えないようになっていて、試験に関係ない人は会場に入れない。

 また学園の試験場には、反応型の防御結界が張られていて、内部の人に一定以上の衝撃が襲い掛かると、魔術障壁が自動で展開される仕組みになっている。そのため怪我をすることは滅多にない。


 まずは武術の試験。ルールは魔力を使わず、武器と体術のみで戦うこと。私の相手は剣術を指南する教員が相手だ。


 試験官に合わせて直剣を抜いて、合図があるのを待つ。


「いつでもいいですよ。」


 試験官の言葉と同時に、走り出して剣を振り下ろす。

 受け止められるが、一撃の重さよりも速度を重視して、連続で仕掛けた。


(剣術の指南教員なだけあるわね。でもエスペルト王国流の剣術は、私もよく知っている。)


 王国流の剣術は基本に忠実で、力で叩き斬ることを主としている。

 だからこそ、打ち合いの中で一瞬だけ隙を作った。

 試験官は私に生まれた隙に合わせて、剣を振り下ろそうとする。

 私は振り下ろされた剣を、左手で横から殴って逸らすと、右手に持つ剣を教官の前に突き出した。


「参りました…」


「こちらこそ、ありがとうございました。」


 お互い挨拶をして、魔術の試験会場に向かう。

 魔術の試験では、それぞれ別距離にある3つ的を攻撃することが内容となる。

 私の番になると、右手を突き出して魔力を集めていく。


(的を破壊さえすればいい。的は木製だから過剰な威力は要らない。であれば…)


 周囲の魔力を集めつつ、雷系統の魔術を構築した。1層からなる下級クラスの魔術を、3つ同時に展開して発動させた。

 同時に雷撃が的に向かい、直撃すると的は砕けて吹き飛んだ。


「はい。試験は終了です。」


「ありがとうございました。」


 終了の合図を聞いて、最後の試験に向かった。

 総合戦闘は実戦形式…つまり、なんでもありの戦いとなる。


「でははじめ!」


 合図と同時に私も抜剣する。

 そして、身体強化を少しかけて突進し、同時に背中で隠すようにして、雷魔術による弾丸を生成する。

 剣を振り下ろす瞬間に左へ跳躍し、私を追随していた雷の弾丸が相手に当たった。

 不意を付かれた試験官はたたらを踏んで、その隙に私は剣を突き出す。


「…これで試験は全ては終了です。」


「ありがとうございました。」


 私は剣を納めて試験場を後にする。

 入学試験は無事終了した。

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