ショーのチラシ(2)
学校が終わり生徒が帰っていく中、校庭の隅っこに固まって何やらひそひそと話し合っている四人の生徒がいる。
僕とハリー・イルチェンコ、ジョッシュ・アルマン、ヘンリーク・デルインのいつもの四人組で、例のチラシを読んだ四人だ。放課後になって、ハリーを中心にショーについて話すために集まっていたのだ。
「―――それで、どうするよ」
ヘンリークが話を切りだす。
「どうするって、もちろん行くに決まってるだろう?」
ジョッシュが、さも当然かというように返す。
「いや、テヌーク通り沿いなんだろ?公演時間も遅いし、ここから行くとなると日帰りじゃ無理だぞ」
ヘンリークは、冷静に疑問点を提示する。
「確かに。となると、どこかに泊まることになるのか」
僕は泊まるならハリーの家かな、なんて想像をしながら答える。
「仮に泊まることに関して解決しても、チケット代だってあるんだ。俺の貯金がスッカラカンになるっていう問題がある―――」
そう言ってヘンリークは、何やら不満そうにしている。
「おいおい、使うためにある金だろ?
その上、今回みたいな機会はそうそうねえだろうに、これ以上ねえ使いどころだと俺は思うぜ?」
ハリーが手をあげてヘンリークの言葉を遮って話す。僕もそれには同感だ。それにまだ十五歳である男子の貯金の使い道なんてたかが知れている。今回使わない手はないだろう。
「うーん。でもチケットを買えたとしても、まだそのチラシのショーが本当の話なのか分かってないじゃないか、無駄金は使いたくないし・・・」
そう、それが重要だ。まだそこが分かっていないから僕もすぐに行くとは言えなかった。
「まあ、嘘かもな。だが、本当かもしれねえ。俺は行くぜ、こんなもん行くっきゃねえだろ」
「僕も行く」
「行くしかないよね」
「・・・はあ、分かったよ。俺も行く」
内心、凄く行きたかったのだろう、ジョッシュはすんなりと折れてくれた。
「ようし、改めて全員からの行くって言葉も聞けたし、次はどの日程に行くかだな」
ハリーが話を進める。
「公演日は土、日、月、火曜か。平日は学校だし、いくなら休日だよね」
僕はチラシを見ながら、書かれている日程を読み上げる。
「俺は土日どっちでも大丈夫」と、ヘンリーク。
「あ、ごめん日曜は塾があるから、土曜がいい」
ジョッシュが思い出したかのように声をあげる。
「俺は土曜で大丈夫だけど、ハベルはいいのか?」
ハリーが聞いてくる。
「うん、問題ないよ。」
「なら土曜でいいな。それじゃ、今日チケットを買いに行かねえとならねえな。かなりギリギリだが、まあ大丈夫だろ。買えなきゃ買えないで、それで終わり。このチラシのことは、きれいさっぱり忘れるしかない」
「うわあ、それは嫌だな。絶対に買えますように」とジョッシュが答える。
「みんなで買いに行く?」
チケットを買うのに、何人もいらない気もするけど一応問いかけてみる。
「ごめん、今日は親戚とディナーなんだ」と、ジョッシュが言う。
「悪い、俺も今日だけは無理だ」
ヘンリークも少し気まずそうに答える。
「お、そんなら俺が買ってきてやるよ。俺なら夜中に窓から抜け出せる」
こういう時のハリーは、いつも率先して動いてくれるから助かる。
その後も、あれやこれやと話していたけれど、結局そのままハリーが買いに行くことになった。そして僕らは明日の昼休みにもう一度集まることを約束し、その日は解散となった。