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推しへ、いくつになってもパークは楽しいです

「ふぁ~~!」


 前世では推しのために何度も足繁く通ったテーマパーク。子どもにも大人にも楽しめる素敵な世界へ、がモットーでアトラクションやショーだけでなく、テーマパーク内の世界観も大事にしている。

 設定は人と妖精が共存する国でファンタジー溢れる世界。

 純粋に楽しむ者もいれば、私のようなアクターを追うアク追いやダンサーを追うダン追い、パーク内のキャラクターを追うキャラ追いなど様々な人種(オタク)もいるのだ。

 とはいえ、今はまだパーク内でデビューを果たしておらず、キャストとしてバイトをしている若かりし頃の推しが現在働いていると思うと、パークが輝いて見える。


「楽しみね、絆奈」

「沢山遊ぼうなっ」

「うんっ!」


 推しに会えるかどうかわからないが、少しの希望と初めて生で見る過去のショーを楽しみに入国した。


 エターナルランドは一つの国をテーマにしたパーク。

 入口より一番奥にはエターナルランドのシンボルであるエターナル城が聳え立つ『誇り高き城下町エリア』

 そこから時計回りに水辺のアトラクションなどが豊富の『妖精の湖海エリア』

 入口すぐにはお土産などが売っている『始まりと終わりのマーケットエリア』

 木々が怪しく生い茂っている所はホラーチックなアトラクションや絶叫系などが多い『恐怖の魔女の森エリア』

 そして中心部には公園よりも高さや面積もあり、水上ショーが行われる大型の噴水の『魔法の大噴水エリア』


 エターナルランドが出来たのは私が生まれた年であるため、パークはまだ開園して五年目。そう思うと、三十年は確実に続くのだから閉園の心配は今の所はない。


「わぁ~~!!」


 入国してすぐのエントランスにはエターナルランドのキャラクターである導き人達の姿が。所謂、案内人のキャストではあるのだが、妖精の衣装を身に纏う。

 火の妖精、水の妖精はもちろんのこと歌の妖精、舞踏の妖精、音楽の妖精といった変わり種もいるのだが、こちらは主にショーなどに出演しているため、アルバイトではなくアクターなどが担当する。

 そんな導き人の妖精達がいる所とは別の場所で、撮影出来る妖精の行列があった。

 こちらもアクターが担当する上に、妖精より上位の精霊という役割なので衣装も更に煌びやか。お姫様にも憧れる女の子もいれば妖精、精霊に憧れる子もいるのがこのエターナルランドだ。

 そのため、並んでいるのは女の子連れの家族が多いと思いきや、大人の女性や男性にも人気である。理由は精霊の容姿の高さ。

 女性精霊も男性精霊も顔が良いので老若男女この撮影グリーティングは大人気なのだ。


「おっ、あの人綺麗だなぁ~」

「あら? 私の前でそんなこと言うのかしら?」

「マ、ママの次にってことだよっ」

「それならいいのよ~」


 ナチュラルにイチャイチャする両親を横目に精霊グリを眺めながら先に進む。

 本当は並びたかったけど、精霊グリは毎日あるし、先にショーが観たいから気持ちはそちらを優先した。


 エントランスを通り過ぎると、始まりと終わりのマーケットエリアに入る。

 入退場ゲートはこのエリアにしかないので、ゲストは必ずこのマーケット街を通るのだ。そのため、始まりと終わりのマーケットという名前である。

 エリア全体に大きな屋根があり、雨が降っても大丈夫な場所なので、先程エントランスで行っていたグリーティングなどが雨に降られたときには代わりにここで行われる。


「土産もいっぱいあるんだなぁ」

「ほら、絆奈。風船があるわよ。いる?」

「んーん。いい」

「じゃあ、あれはどうだ? 猫の耳が付いてるカチューシャだぞ」

「それもいい」


 確かに子どもならばテーマパークのキャラクターがあしらった風船を欲しがるだろうが、中身は三十路の記憶を持つ大人なのだ。欲しいとは思えない。それに管理が大変である。

 マスコットキャラクターの猫型妖精をモチーフにした耳付きカチューシャも正直装着するのに羞恥心があったので前世のときから敬遠していた。


「絆奈、何もいらないの?」

「うん。はやくショーいこっ」

「ふーむ。よし、絆奈、待ってろ」


 そう告げると、父は私の手を離して、路上のワゴンで売っている耳付きカチューシャを手に取った。

 いやいや、まさか。そう思っていたら父は店員さんに声をかけてお金を渡し、そして私の方に指を差して談笑した後に戻って来た。

 にっこり笑いながら、父はしゃがみ込んで私の頭に猫の妖精であるケット・シーのケートのカチューシャを被せる。


「ほら、絆奈。せっかく来たがってたエターナルランドなんだ。こういうのも思い出として付けておきなさい」

「パパ……」

「ただでさえお前は物を欲しがったりしないんだから、たまには何か強請ったっていいんだぞ」

「あらあら、パパは優しいわね。絆奈、可愛いわよ」

「うんっ! パパありがと! だいすき!」


 我ながら聞き分けが良すぎてしまったのか、あまり子どもらしくなかったのを反省しながらカチューシャを買ってくれた父に抱きついた。

 元々甘やかすことが多い両親なので、何も強請らない私に心配をしていたのもあるかもしれない。これからはもう少し我儘などを出していくべきなのだろう。


「よしっ! じゃあ、絆奈の見たがっていたパレードに行くか」

「わっ!? うんっ! パレード!」


 突然、父に肩車をされて低い位置から見えていた世界が急に広がった。

 マーケットエリアの先に見える一番奥のエリアにはパレードが行われるお城が建っている。

 通年パレードである『フェアリー・マジカルパーティーパレード』我々の業界では通称マジパパと呼ばれるパレードのため、最奥にある誇り高き城下町エリアへと私達は向かった。


「おぉ、なんだあの人だかりは」

「おみずがびゅーってしてる!」


 真っ直ぐ進んだ先はパークの中心部である魔法の大噴水エリア。

 ギネスに載るか載らないかくらいの大きな噴水がある場所で、お城に次ぐエターナルランドのシンボルの一つ。

 一日に数回、水を使った短いショーをするのだが、夜になればカラフルなライトも灯るのでなかなかに幻想的なのである。

 どうやらちょうどそのショーの時間帯らしく、人々は大噴水の周りに集まって水上ショーを楽しんでいた。


「おみずのやつ、みたい!」

「そうね、ママも見てみたいわ」


 マジパパに備えて場所取りをしたいところではあるが、この水上ショーのアクア・リズムも私は見たかった。

 何故ならば、エターナルランドのシンボルの一つではあるものの、魔法の大噴水エリアは十年後にはなくなってしまい、地下に新しい施設の建設を始める。

 それから数年後には金銀財宝が隠されているという洞窟に通じる地下への大階段を作り、巨大迷路や難破船での宝探し、リアル脱出などが体験出来る『海賊の秘宝エリア』が誕生する。

 私が初めて訪れたときは既に海賊の秘宝エリアが出来ていたので、魔法の大噴水エリアに踏み込むのは初めてだった。

 そういうわけで、途中からではあるが、名物の水上ショーを眺めることに。

 大きな噴水は音楽に合わせて噴射したり、リズミカルに動いたりして人々を楽しませた。

 余談ではあるが、夏になるともっと派手に吹き出す仕様に変わるので、全身びっしょり濡れるアクア・リズム・スプラッシュと名を変える。オタク達の間では通称アリスだ。


『水の妖精達の華麗なショーは以上となります。次回の開催をお楽しみください』


 ショー終了のアナウンスが流れると、噴水周りにいたゲストは次の目的のためにその場から離れて行く。


「綺麗だったわね」

「キレーだった!」

「よし。じゃあ、次はパレードだなっ」

「うんっ」


 目的のマジパパに向けて、魔法の大噴水エリアの更に奥の敷地へと移動した。


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