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推しへ、色々予定が詰まってきました

 その日、シャワー上がりにSNSを見ていたら、水泥くんのお仕事情報が流れた。

 そういえば年明けに舞台出演が決まったって言ってたけど、まだ情報公開されてないからいつ発表するか楽しみにしていたんだよね。


『お仕事情報が解禁されましたのでご報告します。この度、天上生活の日々にてリヒト役をさせていただくことになりましたので観に来てくださると嬉しいです。こちらの作品、原作の漫画は学生時代に読んでいましたので携わることが出来て嬉しいですし、今から楽しみです』


 その内容を見て呟きを読み進める指が止まる。いや、だって……舞台に出るとは聞いていたけどなんの舞台までかは知らなかった。それがまさか天日々だったとは!

 天上生活の日々……略して天日々はニーナの好きな作品である。

 前世でも舞台化していたことはよく覚えてるし、ニーナも凄く興奮していた。通称天ステ。


「しかし、天ステか……」


 ううん……。と唸る私は新しい呟きが更新されたことに気づき、ふとそちらに目を向ける。どうやら白樺の呟きだ。


『天上生活の日々で拓真役させてもらうことになりましたー。よろしくお願いしまーす!』


 はいっ!? 白樺も!?

 驚きのあまりスマホを落としてしまった。だって白樺はこの作品に出ていなかったのだから。

 なぜ? どういうこと? なんの変化があってこの作品に出たの!? あと相変わらず宣伝雑なんだけど! もっと意気込みとか言わないと新しいファンの子ゲット出来ないでしょ!? しかも、拓真ってニーナの推しキャラじゃないか!


 それにしても、二人ともよりによって天ステに出演とは……。

 だって前の時代はさ、天ステってそれなりに注目された割には大コケだったんだよね……。まぁ、ほとんどの面子が顔だけで選んだような新人若手俳優で、天ステがデビューの子も沢山いた。

 だからなのか、演技がとてつもないほど酷くてSNSでも批判が殺到したっけ。

 中には最終日には良くなってると言ってる子もいたが、全くの成長もなく擁護も出来なくなった天ステはその一度きりで終わってしまった。


 わざわざ和歌山から飛んで来たニーナ曰く……。


『私、舞台は初めてやけどあんなの学生のお遊戯会や。台詞は突っかえるし、キャラに感情なさすぎやし、好きキャラまで酷すぎたわ。くっそ大したことない演技のくせしていっちょ前にアドリブしよるけど、全然キャラに合わんし、自己満足でしかなくてめっちゃシラけるわ。しかも演出も最悪。最後なんて原作に逆らうようなエンディングにしたんやで。ほんま無理。好きな漫画を汚されて気分悪いわ!』


 と、かなりのご立腹だった様子。めちゃくちゃ怒ってたなぁ……。

 せっかくの2.5次元舞台だというのに水泥くん達は天ステで大丈夫だろうか。いや、水泥くんの演技は心配ないんだよ。白樺は……ギリなんとかなると思うけど、どうなるかな……。

 大コケ舞台に出て欲しくないけど、出るなとは言えないし。


 ううむ、と唸っているとスマホに着信が入る。相手はニーナからだった。これは天ステについての電話では?

 そう思って電話に出ると凄く興奮したニーナの声が聞こえてきた。


『絆奈! 水泥くんの投稿見た!?』

「あぁ、うん。見た見た。天日々の舞台化だよね」

『水泥くんが出演するのもヤバいけど、天日々が舞台とかめっちゃヤバない!?』

「そ、そうだね。いい出来になるといいんだけど……」


 あまり期待をさせるようなコメントは控えておく。もし、今世でもニーナの地雷になるような舞台だとキレること間違いなしだし。


『しかも私の推しキャラ、水泥くんと同じパークで働いとる人やろ? 確か物産展にも来とったやんな?』

「そうそう。白樺 譲。顔はいいから拓真役としては申し分ないと思うよ」

『わー! めっちゃ楽しみやん! 確かにかっこえぇ顔しとったもんなぁ』

「そう、だね……」


 性格は難ありだけどね……。でも、この様子だとやっぱりニーナは天ステを観劇する気満々なんだろうなぁ。


『絆奈も行くやろ? 水泥くんもおるんやし』

「え、うん。そうだね、水泥くんも出演する舞台だし」

『じゃあ、日程合わせて一緒に行かへんっ? 稔も誘っとくから!』

「芥田くんと一緒に東京に来てくれるの?」

『あったり前やん。天日々の舞台やし、水泥くんが出るんやで? 稔も行ってみたい言うやろ』

「でも、芥田くんって天日々を知ってるのかな?」

『知らんかったら私が漫画貸すから大丈夫やろ』


 さすがニーナ。原作を読ませる気満々である。でも、二人が東京に来てくれるならまた一緒に遊べるし、楽しみになってきた!


 その後、二人で日程を決めて、芥田くんにもこのあと伝えとくと言ったニーナとはそこで電話を終了した。


 ニーナと芥田くんに会えるのは楽しみなんだけど、如何せん大コケする可能性が極めて高い天ステである。不安でしかない。


「……とりあえず水泥くんにおめでとうと頑張ってを伝えとこう」


 一先ず水泥くんにはメッセージを送っておく。ニーナと芥田くんも来るかもしれないよ、ということも報告も忘れずに。

 そのあとすぐに返事が来たんだけど、知っている作品だからか彼も今から稽古が凄く楽しみだと言っていた。うぅ、複雑。

 前世とは違って水泥くんと白樺の参加によって変わったことで少しでもマシな舞台になればいいんだけど……。

 はぁ、と自然に漏れる溜め息。するとSNSはまた新しい投稿がされたと通知が来る。


「! 推しだっ!」


 どうやら推しが呟いたようだ。すぐに確認する。


『夏に新しい舞台に出演することになりました! チケット詳細が出たらまたお知らせします』


 その呟きと共に公式サイトのURLも記載されていた。この舞台は天ステとは違い、評価が良くてシリーズ化していた。推しは主要キャラの一人なので毎回出演していたんだよなぁ。懐かしい。

 そして記念すべき前の私が初めて外部の推しを生で観劇した舞台だ。めちゃくちゃ楽しみだし、あの頃の私も舞台上の推しを見ることが出来て感激したんだよね。

 そうだ。絆ちゃんを誘ってみようかな。きっと彼女なら喜んで観に来るよね。

 早速電話で聞いてみるため、絆ちゃんの番号をかけてみる。


『もしもし?』

「あ、絆ちゃん。今、話しても大丈夫?」

『……。……あ! お姉ちゃん? 大丈夫だよっ』


 ちょっと間があったみたいだけど忙しかったのかな。高校生だし、宿題とかあるのかもしれない。それなら申し訳ないし、手短に話をしよう。


「あのね、さっき寧山さんがSNSで新しい舞台に出演するってお知らせしてたの。絆ちゃん、良かったら一緒に行く?」

『パパのっ!? 行く! 行きたい!』


 明るくはしゃぐような絆ちゃんの声が耳に入る。可愛いなぁと、のほほんとして聞きながら日程などを合わせて、一緒に観劇する日を決めた。

 出来れば早く観に行きたいという絆ちゃんの要望に応えるため、初日の公演に決定。

 ぼっち観劇ばかりだったから誰かと一緒に観劇に行くのは新鮮だ。前世ならしらねや仲間とよく一緒に行ったんだけどなぁ……。主に天月さんとネココさんなんだけど。

 天月さんはリアコになってとんでもない暴走機関車になってしまったし、ネココさんは絆ちゃんの魂が入ったのでネココさんというより絆ちゃんだし。


「チケット取れたらまた連絡するね。一緒に行けるの楽しみにしてるよ」

『うん、ありがとうお姉ちゃん!』

「多分最後は面会とかあると思うから少しは話も出来るよ」

『ほんとっ? 何話すか纏めなきゃ……』

「大丈夫だよ。緊張すると思うけど絆ちゃんなら問題ないから」

『……ねぇ、お姉ちゃん』

「なぁに?」

『その日まであたし……。……ううん、なんでもない』


 声のトーンが少し下がったので何かあったのかと思い、耳を傾けるも、絆ちゃんはすぐに話を途中で止めた。


「え、逆に気になるよっ?」

『ううん、ほんとになんでもないの。ただ、忘れないようにしなきゃって思って』

「スケジュール帳とかカレンダーに書いとかなきゃだね」

『うん、そうする! それまで宿題とかも残さないように頑張る!』


 うんうん。いい心掛けだ。ちょっと何かを言いかけたことが凄く気になるけど、相談ならいつでも乗るから何かあったら頼ってほしいな。

 そう思いながら絆ちゃんとの通話を終えた。


 表垢はざっと見たし、今度は鍵垢の様子でも見ようかなと今度はディープなアカウントのほうにログイン。

 お仲間や水泥くん追い、白樺追いが盛り上がっていた。そうだ、水泥くんと白樺は共演だもんね。

 パークではお目にかかれないし、外部じゃないと共演なんて見ることが出来ないし。

 しらみど派もみどしら派も大いに盛り上がっている。ここの層は二人のちょっとした供給で盛り上がる逞しい人達だからさぞかし嬉しいだろう。

 ただでさえあの二人、仲が悪いからSNSでも絡まないし、写真も一緒に写ることもないからね。

 そんな中、悲痛な叫びを投稿している人がいた。シロザクラさんである。……つまり、シロザクラさん=白樺だ。


『あああああああぁぁっ!! 精霊ディナーショー行きたかった!! 行けると思ったのに行けなかった!!』


 おぉ……今になって精霊ディナーショーのことで暴れてるのかあやつは。行く予定があったのだろうか? それが何かしらあって行けなくなったと。一般販売はもう完売だし、今からどうやってもチケットは手に入らないもんね。

 ……って、白樺。自分もアクターなんだからスニーク公演のチケットは手に入れることが出来たんじゃ……? ダメだったのかな……。


『外のパークとはまた違った寧山ノームをじっくり見たかったのに!! 無理……死ぬ……目に焼き付けたい……』


 よほどショックなんだろうな……。なんだか私がスニーク公演に行けることを知ったらめちゃくちゃ睨まれそうだ。……そういえば、ご招待チケットはペアだったけど、まだ一緒に行く相手は決まってないんだよね。


「白樺……誘ってあげるべきか……」


 色んな葛藤があるけど、私が行けて白樺が行けないというのはちょっと可哀想だし、私がスニーク公演に行ったという話は絶対推し経由から知る可能性もあるから私は睨まれたくない……。

 それに、白樺がゲストとして参加していただけで、しらねやネタになるし、他にも何か創作ネタが発見出来るような気がする! そうと決まれば早速SNSのDMにシロザクラさん宛のメッセージを送ることにした。


『シロザクラさん。私、精霊ディナーショーのスニーク公演ペアご招待券を持ってるんですけど、まだ相手が決まってないのでよろしければどうですか?』


 メッセージを飛ばして数分後、シロザクラさんからの返事が来た。


『本当ですか! 行きます! 絶対に行きます!! お誘いいただけて嬉しいです!!』


 ……いつも思うけどなんで白樺だってわかってるのにDMのやり取りでさえもあの人はシロザクラさんを演じてるのだろうか。別に誰も見ることが出来ないのに。

 それにしてもまさか白樺を誘うことになるとは思ってもみなかった。……せめて当日は何事もなく終わればいいな。


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