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7.持つべきものは

 朝のホームルーム後そのまま授業に入る。担任の小牧先生の担当科目は英語だ。なんとか英訳し終えたおかげで、予想通り当てられたけどセーフだった。


 その後も、数学、現代文、生物と滞りなく授業は進み、昼休みになった。


「樹! 行くぞ」


 直太の呼びかけに、俺は財布を持って立ち上がる。購買にパンを買いに行くのだ。


 この学校には食堂もあるが、そんなに席が多くない。なんとなく先輩が優先という暗黙の了解があり、俺たち1年生はあまり利用しない。


 別に1年が使って文句を言われた、なんて話はないのだが。


 さて、購買についた。いつもそこそこ混み合うので、授業が終わったら直行するのが吉だ。


 俺は焼きそばパンとチョコクロワッサン、紙パックの緑茶を買う。直太の買ったカレーパンをみて、明日はカレーパンにしようかな、と思う。


 二人とも無事に買い物を終えたので、教室に戻ろうとすると、直太が教室とは反対方向に進んでいくではないか。咄嗟に腕をつかんで動きをとめる。


「おい、どこ行くんだよ?」


 くるりと振り返った直太は、意味ありげな含み笑いをしつつ、ついてからのお楽しみ、と言ってずんずん進んでいく。


 俺は朝の直太の言葉を思い出す。お前は運が良い、持つべきものは俺みたいな親友だ、とかなんとか。


 その言葉を信じて、とりあえずついて行ってみるか。


 そう思い、俺は何か企んでいる親友の後を追った。


 着いた先は中庭だった。レンガの部分に座ることができる花壇やベンチがあって、ここで昼食を取ればちょっとしたピクニック感覚が楽しめるだろう。


 直太は花壇のレンガでできた縁に腰をかけると、俺にも座るよう促した。


「……なぁ、ここで昼飯を食べることが、お前の言ってたお楽しみなのか?」


 そう尋ねると、直太は、


「まぁ見てなって、そろそろだと思うから」


 とカレーパンを袋から取り出し、うまそうにかじった。


 俺も腹が減っていたので焼きそばパンを頬張る。天気が良い。中庭は木陰が多くて過ごしやすく、風も気持ちいい。たまには外で食べるのも悪くないな、と思う。だけど、それだけのために直太が俺をここに連れてきたとは考えにくい。


 その時だった。


 校舎から中庭の俺たちが座っている方に向かって、一人の女子生徒が歩いてきたのが見えた。


 長い黒髪が、風に靡いてキラキラと輝いているのが遠くからでもみえる。背筋良く、颯爽と歩いて行く様に思わず釘付けになる。キチンと着こなされた制服からは、彼女が品行方正な優等生であることがうかがえた。


 ああ、この人が、沢渡花純だ。


 そう直感する。俺は横を向き隣に座る直太の顔を見ると、彼は親指を上げてにかっと笑った。

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