4.学年の高嶺の花
いや、駄目だ。
俺はかぶりを振って、頭に浮かんだ考えをかき消す。
もし仮に成長できるのだとしても、神崎だけは無理だ。
小さい頃から一緒にいすぎて、ウェスタ―マーク効果といったかな? 幼少期を共に過ごした男女は恋愛関係になりにくいという。まさにそれだ。
恋とか、そういったことを神崎で想像するなんてできない。いくら神崎が世間一般的に見て可愛くても。
そんなことを考えているうちに、学校についた。自分の教室に行き席についた時点で、ホームルーム開始まであと30分ある。俺は机に教科書とノートを広げ、もくもくと英文を訳していく。
俺の成績は、この高校で大体中の上くらい。予習して授業をちゃんと聞いておけば、赤点を取ることはまずない。赤点をとって補習なんてことになったら、小説を書く時間がなくなってしまうからな。
「はよー。いつも早いな〜。おっ予習してんじゃん。1時間目って、あー英語か」
話しかけてきたのは、中学からの友達、小山直太だ。
「今日当たるんだよ。訳しとかないと……って見んな。自分でやれ」
「えーいいじゃん。あ、てか今日俺まじラッキーだったんだよね! 神崎ちゃんと下駄箱でばったりしてさぁ、可愛いよな」
ポキッ
動揺でシャーペンの芯が折れる。カチカチと新しく芯を出しながら、へぇ、とだけ返事をする。
「お前ほんっと、このての話題に興味ねーのな。神崎冴華と沢渡花純っていったらこの学年ツートップの高嶺の花じゃん?」
「……さわたり、かすみ?」
俺が聞き返すと直太は、知らねーの!?と目を丸くした。