表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/14

2.芽生えた夢

 小学五年生の夏休みの宿題で、必須課題の読書感想文が、今年から創作文でも可となり、どちらか選べるようになった。


 俺は創作文でなら、神崎に勝てると思った。


 神崎は、将来の夢とか一年間の目標といった作文で書くのが苦手みたいだったから。


 いつも何食わぬ顔でスイスイと色んなことをやってのけるくせに、作文だと人一倍時間をかけた割に、文字数が足りていない、なんてことがよくあった。

 テストの文章問題は得意なくせに。


 神崎は夏休み前に、俺にこう尋ねた。


「いっちゃんは、感想文と創作文、どっちにするか決めた?」


「創作文。面白そうだし」


 俺はさらりと、迷いなく答えた。


「そ、そーなんだ。じゃあ……わたしも、それにする」


 そういって神崎はにっこりと微笑んだ。


 やっぱりな。こいつはいつもそうだ。


 まるで刷り込みだ。雛鳥のごとく、俺の後をついてきて、なんでも俺と一緒にしようとする。


 ただ、引越し先で隣の家に住んでいただけの俺に、何で付き纏うんだろう。


 いつもはうんざりだと辟易するところだが、今回は違う。かかった、と思った。思惑通り。目に物見せてやる、と。


 そして、予想は当たった。勝ったのだ。


 俺の創作文が、神崎を差し置いて学年の代表として県の作文コンテストに出されることになった。


 そう、教師に夏休み明けに発表された時、神崎に勝てたことが、ただただ嬉しくて。やっと、自分のことを好きになれたような、昔の自分に戻れたような、言いようのない高揚感と充足感に包まれた。


 コンテストでは、残念ながら大きな賞は貰えなかったけれど、俺は誇らしかった。


 “将来は小説家になる”と、この時心に決めたんだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ