12.質問いいですか?
「じゃ、改めまして。織江先輩、また一つ質問いいですか?」
「どうぞ」
「小牧先生が、部員は全員で五人になったって言ってましたけど、残りの二人の部員って、どんな人ですか?」
本題に入る。どんな人なのか、先に知っておきたい。
「ああ、一人は私と同じ二年生、もう一人は君と同じ一年生だ。二人とも他の部活と兼任していてね。顔を出すことは少ないと思うな。でも、顔合わせの機会はつくった方がいいね。小牧先生に相談しておくよ」
簡潔な説明。
二人の名前くらいは聞いとこうかと思ったが、顔合わせの機会を設けてもらえるならその時でいいや、と思った。
「へぇ、ありがとうございます。三年生はいないんですね」
「ああ」
そう返事をし、先輩は読みかけの文庫本を開いた。手作りだろうか、押し花のしおりが挟まっている。
俺は目線をあげて、部室を見渡した。本棚には古そうな本が所狭しと納められており、書庫みたいだな、と思った。
部屋の中央の机にパイプ椅子は五個。窓の横のスペースに一つ折り畳まれたものを合わせると合計六個だ。
この机のサイズだと、六人以上が座るのは狭いだろうな。かといって、机を大きくしたら部屋が狭くなる。ただでさえ、本棚に囲まれているのだ。
俺の不安の種、それは沢渡花純目的で入部希望してくるであろう多くの生徒のことだ。
「すみません。あと一つだけいいですか?」
「嫌だ、と言ったらどうする?」
てっきりまた、どうぞ、と言ってくれものだと思っていたので面食らってしまった。
「そ、そこをなんとか……」
「冗談だ。いいよ。知的探究心が旺盛なことはとても良いことだ。答えられる範囲でなら、いくらでも答えよう」
真面目そうなのに、真顔で冗談を言うのか、とまた少し驚いた。
だけど、その無表情をよく見ると、また少し広角が上がっていて、俺を受け入れてくれていることが伝わってきた。
ホッとする。俺、織江先輩けっこう好きかもしれない。恋愛的な意味ではなく、人としてだ。
一緒にいても苦にならない、知り合ってからまだほんの少ししか経っていないのに会話していると落ち着く。不思議だ。
「あの、さっき俺と一緒に入部した、沢渡さんなんですけど……」
「ああ、彼女は有名だね」
「知ってるんですか?」
「新入生代表挨拶、あれは見事だった。それに、私の学年でも彼女は男子にとても人気があるからね。告白する者が、あとをたたないとか」
織江先輩が沢渡花純がどんな人物か知っているのなら、話が早くて助かる。
「あの、沢渡さんが文芸部に入部したって周りが知ったら、男子がすごい勢いで入部届を持ってきそうじゃないですか?」
「ああ、それなら心配ないよ。もともと文芸部の定員は五人だから。顧問を入れて六人。誰かが抜ければまた募集をする。だから、この部室がギュウギュウ詰めになることはないよ。安心して」
俺はその言葉を聞いて、心底安心した。そして俺が不安に思っていたことは、お見通しだったようだ。織江先輩、侮れない。
「さっき、キョロキョロ部室を見回していたから」
そう、織江先輩は文庫本から目を離さず、付け加えた。観察力もすげえ、と思わず感心してしまった。




